第8話 仲間
「ダメだよ、イリスちゃん」
「どうして?」
「魔物は危険なんだよ」
「覚悟は出来てる。アルクくんのために死ぬって決めたから」
「え? 死ぬっ……。レオンくんからも言ってよ」
「そうだな。俺もアルクに命を捧げるよ」
「え? レオンくんまで物騒なこと言って。あっ、そうだ。僕はS級冒険者になったんだ。等級が違う冒険者とは仲間になれないんだよ。え? あれ?」
イリスちゃんとレオンくんがギルドカードを取り出し、見せてくれたのだが???
「私もS級だよ」
「もちろん、俺もな」
「え? イリスちゃんとレオンくんも?」
「同じ等級だから、いいよね」
「安心していいぞ、アルク。俺もイリスもアルクの秘密は守る。信じられないなら、俺はアルクの奴隷になってもいい」
「え? え? 奴隷? そんなのダメだよ。はぁ~今日は強いスライムと戦いに行くんだけど……攻撃されたら、痛いんだよ?」
「スライム? 金色の魔核のスライムなら私達は倒したことあるよ」
「え? 金色を? ……イリスちゃんは……。イリスちゃんとレオンくんは魔物と戦ったことがあるの?」
「アルクくん? あるのって、私達S級冒険者だよ?」
「……」
S級冒険者って子供でもなれるのか……。
「今日はどこ行くの?」
「え~っと……魔剣を鍛えてから、スライムと戦うつもりだよ」
「本当に?」
「アルク、この森には最弱のスライムしかいないぞ。それも3匹だけ」
「え? レオンくんはそんなことも分かるの?」
「私も分かるよ。私達は索敵が得意なの。特に森の中ではね。で? アルクくんはいつまで遊んでるの?」
最初は興味深そうに見ていたイリスちゃんとレオンくんはすぐに飽きてしまったのか、岩の上に座っている。
「後2時間くらいかな?」
僕がそう言うと、レオンくんがギョッとした表情に。
「辛いなら、街に戻ってもいいよ。イリスちゃんとレオンくんなら2人でも大丈夫だよね」
「私は残るよ」
「俺も残るよ」
「魔物退治は大変なんだよ。本当に僕の仲間になりたいなら、毎日だよ」
「毎日なのかよ」
「アルクくん……」
4時間頑張ったのだが、魔剣が成長することはなかった。
「本当に大丈夫? 本当に痛いんだよ」
「大丈夫。覚悟出来てる」
「スライムだろ? 魔核の色は?」
「色なしだよ」
「え? 色なし?」
「はあ? アルクは俺達を舐め過ぎだぞ」
「う~ん。痛くて泣いても知らないからね」
「泣かない」
「だから、舐め過ぎだって」
「これは……ダンジョンなのか?」
僕が穴を掘り、階段を降りるとレオンくんとイリスちゃんもついてくる。
「え? ボス部屋の扉?」
「確かに似てるな? アルク、ここは?」
「ダンジョンだよ。この中にスライムがいるんだよ」
「アルクくん、スライムって……ダンジョンボス?」
「そうだと思うよ。やめる?」
「行く。私はアルクくんについて行くって決めたから」
「ダンジョンボスか。あのオークは強すぎたがスライムなら」
「本当にいいんだね?」
「うん」
「おお。腕がなるぜ」
イリスちゃんもレオンくんもやる気満々。
心配だけど……僕が戦えば問題ないかな?
《 バタンッ 》
勝手に扉が閉まると部屋の中央に光が。
僕は扉が閉まる前から走っていた。
現れた直後のスライムに横斬り。振り下ろしに振り上げ。
「おいおい、アルク。皆で戦うんじゃなかったのかよ」
「う~私も戦いたかったな~」
僕は気にせずに、剣を振り下ろす。
スライムは萎ばない。ブルブルと震え。
「グハッ。い 痛い~」
僕の防御力はぜんぜん上がってないのか。
「よし、次は俺の番だな。魔法剣、炎纏強撃」
おおっ。レオンくんは魔法剣が使えるのか。凄い。
レオンくんは剣に炎を纏わせてスライムに攻撃を。
強そうで派手な攻撃……だったのだが……???
「なっ。効いてないのか? 炎の耐性が?」
ビクともしなかったスライム。
ブルブルと。
「レオンくん。スライムの攻撃が来るよ」
「分かってるよ、それくらい」
スライムはレオンくんに飛びつくように体当たりを。
え? 死んだ??
スライムに体当たりされたレオンくんは派手に飛ばされ、横壁に激突。
そのまま床に倒れてしまったのだが……。
「レオン、油断しすぎだよ。私が決める。魔法弓、雷神速矢」
レオンくんは倒れたまま手を上げ、僕達に生きているとアピール。そしてすぐに回復魔法を。
よかった。本当に死んじゃったのかと思ったよ。
それにしても、イリスちゃんまで魔法を纏わせれるなんて。
雷を纏い、物凄い速度でスライムに飛んで行った矢は……スライムに当たった瞬間、ぽよんと弾かれてしまう。
2人とも凄そうな技だったけど、やっぱりまだ子供だからね。
僕は前に出る。
「僕が戦うからイリスちゃんとレオンくんは援護して」
「アルク、そのスライムの攻撃力は半端ないぞ。たった一撃で俺の体力が20%になってしまうほどだぞ」
「アルクくん、防御力もよ。私の矢が刺さらないなんて」
HP 439/440
MP 309/309
やっぱりダメージは1だけだね。
「大丈夫」
痛いけど。
「このスライムとは戦い慣れてるから」
痛いのは嫌なんだけど。痛感軽減がちゃんと発揮してくれたら、もっと戦いやすいんだけどな~。
僕とスライムの戦いはいつもと変わらない。
「アルク、本当に大丈夫なのかよ?」
「アルクくん、無理しないで。私達も戦えるよ」
いや、無理だよね。イリスちゃんはレオンくんより防御力低そうだし。
HP 58/440
MP 309/309
体力は減ってきたけど、魔力はまだ使ってないしね。
僕のダメージは1だけど、スライムのダメージはどれくらいなんだろう? もしかして……1? なら力よりも速さ。
『【連撃】を覚えますか』
おおっ。これは連続攻撃だよね。もちろん覚えます。
「横斬り~からの~折り返し斬り~」
連撃を選ぶと身体が勝手に動いた。
更にスライムが震える前に連撃を。
「振り下ろし~からの斬り上げ」
おおっ。攻撃される前に4回も攻撃出来た。って来る
。
「グハッ。い 痛いけど、お前も、お前はもっと痛いんだよな。連続連撃~」
僕とスライムの攻防は続く。
そして、魔鎧が軽くなり、スライムが萎む。
これで魔鎧がB級に。かなり時間がかかったけど、魔力を温存して倒せたのは大きいよね。
HP 9/440
MP 206/309
あれ? 魔力が減ってる? 受け流しと一緒で魔力を1消費してたのかな?
「アルク、やったな。壮絶な戦いだったな」
「さすが勇者様。アルクくんの本気の攻撃凄ったね」
「だからイリスちゃん、僕は勇者じゃないよ。それにただの殴り合いだったでしょ」
「どこがだよ。あんな重い攻撃を連続で」
「あんな攻撃を受け続けられる人なんていない。いるなら勇者様だよ」
「絶対違うからね。それに僕だって痛いんだよ」
「あまり痛そうに見えなかったが?」
「本当だって。硬いボールをぶつけられるくらい痛かったんだから」
「勇者様」
「はぁ~。俺が一撃で殺されかけた攻撃をボールが当たった程度だと?」
「だから違うから。硬いだよ。柔らかいボールじゃないからね」
「勇者アルク様」
「硬くても柔くても、アルクにはボール遊び程度だったんだろ」
「ぜんぜん違うから。凄く凄く痛かったんだからね」
「アルクくんは強い。私も負けないくらい強くなる。アルクくんのおかげで特典が2つも手に入ったし」
「だな。特典2つは大きいよな」
「はぁ~。僕は強くないんだけどな~」
【ダンジョンボス討伐達成】
【ダンジョン突破特典:常備スキル 剣速王】
剣速王 HP15上昇、攻撃力10上昇、速さ20上昇。
「さすがS級冒険者。全部で金貨2000枚だ」
「2000枚? 凄い……。そうだ、ヤマラさんもS級冒険者だったんでしょ。それにギルドマスター」
「ん? 言ってなかったか?」
「ノアさんに聞いて、びっくりしましたよ」
「ふっ。それより、どうなんだ?」
「え? 何がですか?」
「まだ弱くなったと言うのか?」
「それは……」
僕はそんなに強くないんだけどな~。S級冒険者は子供でもなれるみたいだしね。
「アルクお兄ちゃん、美味しい~」
「ほら、そっちにもチーズをたっぷりかけてくれ。これが、美味いんだから」
「美味しい~。私、この白いの初めて~」
「アルクに乾杯~~~」
「じゃんじゃん飲むわよ~。仲間になれなかったけど、アルクちゃんの昇進祝いだからね~」
「お会計は小金貨825枚になります」
「え? え? もう一度」
「お会計は小金貨825枚になります」
ま 間違いじゃないのか……。
アルク
レベル40
HP 9/455
MP 206/309
SP 33
EX 178752
常備スキル 新たな英雄、歴戦の探索者、ぼっちの剣士、伝説の魔剣使い、ドMの魔鎧使い、超ドMの魔鎧使い、剣速王
スキル 剣技【受け流し】、【痛感軽減】、【連撃】
魔法 初級回復魔法
装備:B級の魔剣、F級の盾、B級の魔鎧
アイテム:薬草玉92粒
所持金 金貨3979枚
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