第7話 ギルド試験2







「さあ、狩り場に着いたよ」


「はぁはぁはぁ……。狩り場? って、またオークですか」


「実力を見るのにはオークが最適なんだよね」


え~っと……魔核の色は……銀? 銀色?


「ノアさん、銀色なんですけど」


「ふふっ。アルクくんなら問題ないと思うよ。普通はレベル70以上の冒険者が戦う魔物なんだけどね」


「えっ? 70? む 無理ですよ」


「ふふっ。アルクくんがさっき倒した大魔猿はここのオークよりも強いよ」


「え? あの猿が?」


「そうだよ。あっ、そうそう。今回はこの階までにするからね。アルクくんが倒したオークの魔核は私が拾っておくから遠慮せずに、沢山倒してね」


ここで終わり? あの猿よりも弱いなら。


僕はやる気を取り戻した。


オークに僕から走って近づき、いつも通りに右足で踏み込んでから横斬り。


『グォ~~~~』


オークは叫びながら、僕を睨み、右手を高く上げた。


オークの攻撃が来る。


僕は避けずに追撃にかける。


魔剣に力を込め下から上へと斬り上げ。


オークの胸を斬り裂くことが出来たのだが、オークの目にはまだ力が。僕を睨むように見ているのが分かる。


振り下ろされるオークの腕。


ううっ。痛い。


オークの攻撃は……スライム並?


あれ? スライム並? 銀色の魔核なのに大したことはないのか?


僕は気を取り直し、すぐに反撃を。


横斬り~って……倒した?


たった3回しか攻撃してないのだが……。






オークは弱かった。


3回の攻撃で倒すことが出来る。


攻撃力はスライム並。


これで試験終了なんだよね。


オークの魔核はたしか……大銅貨1枚。20匹倒して小金貨1枚。200匹倒しても……小金10枚? 皆にご馳走するなら……。とにかく頑張らないと。




僕は向かって来るオークを1匹も逃さず倒していく。






レベル35

HP  230/309

MP  182/190



ん? 何これ? レベル35? これって僕のステータスだよね?


「ノアさん。僕のレベルが35もあるんだけど……」


「35ですか? まあ、ここでオークを倒し続ければ、すぐに50を超えれますよ」


「50? え~っと……35もあるんですよ。昨日までレベル1だったのにですよ」


「え? レベル1ですか? ……それは凄いですね。スキルが凄いのだと考えてましたがレベル1では。まあ、アルクくんの詮索は禁止ですからね~。賢者リューナの街の少年。ふふっ。ヤマラが探し求めていた物を……」


え? 今、賢者リューナ様って言ってたよね。小声だったけど……確かに……。賢者リューナ様のことを知ってるのかな? 知りたいけど、その前に今はオークに集中だよね。






僕はオークと戦い続けた。








「え~。先客がいるよ~」


「マジかよ~」


2人の……子供がこんな場所に。


あ~このダンジョンは難易度が低かったのか~。ちょっと自分が強いのかもって思っちゃたよ。


2人の子供は僕より4~5歳くらい年下の10歳くらいかな?


この階層には用はないというように、さっさと下の階層へと進んで行った。


「マズいですね。アルクくん、試験はもういいでしょう。アルクくんは今からA級冒険者です」


「A級? 僕がA級冒険者? どうして?」


「アルクくん、先程の2人を追いかけますよ」


「え? は はい」


ノアさんの表情が少し険しくなっている。


2人の子供に危険が迫っているのだろうか?





僕はノアさんの後に続いて階段を下り、走ってダンジョンを進んで行く。


遭遇した魔物はノアさんが牽制するか、追われないようにバランスだけ崩して、進んでいく。


「アルクくんはスキルを覚えないのですか?」


突然ノアさんが聞いてきた。


「スキルですか? 覚えないのと聞かれても……スキルは自分で選べないですよね」


ダンジョンボス討伐達成でスキルは覚えているけど、僕は選んでいない。


「レベルが上がるごとにスキルポイントが2増えると習いませんでしたか?」


「あっ。習ったかも?」


「ふふっ。かもですか。スキルポイントは残っているのですよね?」


「え~っと!! えっ。またレベルが上がってる。レベル38でスキルポイントは74あります」


「ふふっ。本当にスキルを覚えていないようですね。スキルを覚える方法は知っていますか?」


「え~っと……レベルが上がった時に自然と魔法やスキルを覚えることがあると習ったような……」


「ふふっ。そうですね。レベルが上がった時も覚えれる場合がありますね」


「他の方法も?」


「はい。道場や学校で覚えることが出来ると習いませんでしたか?」


「あっ。魔法は魔法学校で覚えると」


「そうですね。覚えたい魔法やスキルの動作を覚えたり、知識を得ることで覚えれる場合がありますね」


「場合? 覚えれない人も?」


「ふふっ。いますよ」


「高いお金を払っても無駄になっちゃうかも知れないのか……」


「ふふっ。そしてもう1つの方法がこれから向うダンジョンボスの部屋です。ダンジョンボスとの戦闘中はなぜか魔法やスキルを覚えやすいと言われていますよ。まあ、ダンジョンボスとの戦闘で必要なスキルのみだとも言われていますけどね」


「戦闘中にですか」


「ふふっ。そろそろですね」




そして進んだ先には扉が。


「ノアさん。あれが?」


「はい。ダンジョンボスの部屋です」


「ノアさんは倒したことがありますか?」


「はい。しかし10年前ですけどね」


「10年前?」


「ダンジョンボスを倒すと称号スキルや宝が手に入りますが、デメリットとしてダンジョンボスを成長させてしまいます。3年前にもA級パーティが討伐に成功していますが……その後、12のパーティが討伐に失敗しています」


「成長!! あれっ? 失敗っていうと……」


「はい。有望な冒険者達でしたが、ダンジョンボスを倒さない限り出ることは出来ませんからね」


倒したら成長するのか。何度も倒したから、あのスライムは強くなった? 僕が弱くなったんじゃなかったのか。


「あれ? 扉は開かないって?」


「こういう時のために、こういうアイテムを持っています。手助け転移石です」


「手助け? 転移? 中に転移?」


「はい。アルクくんはどうしますか?」


「子供を見捨てるなんて出来ません。お願いします、僕も連れて行ってください」


「子供? あ~そうですか。行きましょう」


僕とノアさんは扉の前で光に包まれた。


「イリスは下がって、援護に徹しろ。俺がやる」


「でも……。え? え?」


「は? どうして?」


「レオンくん、イリスちゃん、助けに来ましたよ」


「あっ。お前はノアか?」


「救世主ノア? グリフォンを倒してくれた、あのノア?」


子供にまで名前が知られてるなんて、さすがS級冒険者。それにグリフォンを倒したなんて。


「私があの中央のオークと戦いましょう。レオンくんは右、アルクくんは左のオークの足止めお願いしますね」


ボス部屋の中には棍棒を持った3匹のオークがいる。


女の子は足を怪我してしまったのか、足を引きずっていた。




アルク

レベル38

HP  68/327

MP 182/202



とりあえず回復魔法を。


僕は女の子に回復魔法を。


「え? あ ありがとう」


「もう大丈夫だよ。僕とレオンくんが足止めしている内にノアさんが倒してくれるから。イリスちゃんはそこから弓でレオンくんの援護だけに集中してね」


「え? あなたは大丈夫なの?」


「僕はアルク。時間稼ぎくらいは出来るよ」


僕はそう言うと回復魔法を使いながらオークに向かって走った。



アルク

レベル38

HP  308/327

MP 92/202



棍棒を持ったオーク。あれで殴られたら……。


僕は剣を振った。いつも通りに右足で踏み込み、横斬り。


あの棍棒の直撃だけは避けないと……死んじゃう?


オークは棍棒を振り上げた。


『【受け流し】を覚えますか』


え? 誰? って来る。お 覚えます~。


「受け流し?」


なぜか身体が勝手に動く。振り下ろされる棍棒に魔剣を当てて……左へとオークの棍棒を押し流す?


オークの棍棒は僕の左の地面へと当たる。


「ブォ~~~」


受け流されて苛ついたのか叫ぶオーク。


僕は叫んでいる隙きだらけのオークに斬り上げ。



アルク

レベル38

HP  308/327

MP 91/202



よし、ダメージはない……? あれ? 魔力が減ってるような?


「ブォ~~~~~」


棍棒で僕の左脇目掛けて攻撃してくるオーク。


「受け流し」


僕はスキルを使う。


横から来る棍棒に下から剣を押しあて、僕は低い体勢になり、上空を通過させた。


そして隙きだらけのオークに横斬り。




アルク

レベル38

HP  308/327

MP 90/202



やはり魔力を消費するようだが1。


このスキル、無敵かも。


唸り声を上げるだけで何も出来ないオーク。


僕はダメージを受けることなく何度も何度もオークを斬りつけていった。





そして……オークは倒れ、動きを止めた。


か 勝てた。このスキルがあれば、もう痛い思いはしなくて済むのか。おおっ。宝箱。


目の前に宝箱が現れた。


すぐに開けたいのだが、周りの状況を確認するとノアさんがまだ戦っていた。そしてレオンくんは苦戦中。イリスちゃんの援護があるので、ギリギリ持ちこたえている感じだ。


S級冒険者のノアさんの心配はいらないだろうから、僕はレオンくんの方へと走り出した。




「レオンくん、下がって。後は僕が足止めする。イリスちゃんはノアさんの援護を。レオンくんは休んでていいからね」


「お前のオークは? た 倒したのか?」


「僕のオークは弱かったみたいだね」


「はあ? なわけねぇだろ。……だが助かる。任せていいんだな?」


「うん。足止めは得意なんだよ」


「アルクくんは……勇者様?」


イリスちゃんがとんでもない間違いを。僕を勇者様と間違えるなんて。


「イリスちゃん、ノアさんがオークをすぐに倒せるように援護してね」


「うん。援護なら任せて」


オークを警戒しながら、ゆっくりと後ろに下がっていくレオンくん。


オークはまだレオンくんを狙っている。


「僕が相手だ。必殺横斬り~」


「ブォ~~~」


僕に横腹を斬りつけられて叫ぶオーク。


狙いをレオンくんから僕に変え、棍棒を振り下ろしてきた。


「受け流し~。からの横斬り~」


「ブォ~~~」


このオークも叫ぶだけで何も出来ない。




アルク

レベル39

HP  308/333

MP 28/206



魔力はまだある。ノアさんが来るまでは耐えられるだろう。



「受け流し~からの~横斬り~」


「ブォ~~~」


「受け流し~からの~横斬り~」


「ブォオオオオオ~~~」



「受け流し~からの~横斬り~」


「ブォオオオオオオオオオオ~~~。ブォ~」


「え? う 受け流し」


僕に攻撃が当たらずに苛ついたオークが手に持っていた棍棒を投げつけてきた。僕は慌てて受け流す。


か 勝った。


棍棒のないオークに脅威はない。


「横斬り~」


オークは右の拳で。


「受け流し??? え? あれ? グハッ」


僕はオークの拳での攻撃を受け流せずに殴られてしまった。



アルク

レベル39

HP  307/333

MP 24/206



痛かったけど……ダメージは1か。でもどうして失敗したんだろ?


オークは再び拳で僕に攻撃を。


「受け流し??? え? 出来ない? グハッ」


なぜか出来ない受け流し。


僕はオークを警戒しながらステータス画面を確認。


剣技 受け流し


受け流し 相手の武器での攻撃を剣を使って受け流す剣技


……相手の武器? 棍棒はいいけど、拳はダメってこと?


融通が効かない剣技にイラッとしながらも、その怒りを剣に込めて横斬り~。


い 痛い~。


やはりオークの拳は受け流せない。


斬って、殴られて、斬って、殴られて、僕とオークの攻防は続く。


う~。本当に痛いんだからな。


僕は痛みを我慢して横斬り。


「グハッ」


まだノアさんは。この痛みを……?


『【痛感軽減】を覚えますか』


お 覚えます。ぜ ぜひ。


突然、僕が一番望んでいたスキルを習得することが出来た。


さあ、これで怖いものはないぞ。


僕は更に前に出た。


「斬り上げ~からの斬り下ろし~」


攻撃だけを考え、連続攻撃を。


オークの拳が僕の肩に。


うっ。い 痛いっ。軽減してる?


ダメージを確認すると1。


威力は同じ。


痛感軽減があるのに……痛いまま。


くそっ。何か条件があるのか?


「横斬り~ グフッ」


僕が攻撃するとオークも攻撃。


横斬り、斬り上げ。斬り下ろし、突き。


拳で、足で、体当たりで、頭突きで。


僕とオークの攻防はまだまだ続く。






あっ。この感覚は魔鎧の進化かな。


軽くなった魔鎧。


しかししかしオークの攻撃は痛いまま。





更に攻防は続き、回復魔法を使おうかと考えていると……オークは倒れ、動かなくなった。


はぁ~疲れた~。


「アルクはドMだな」


「勇者様はヘンタイ」


必死に戦って勝利した僕に、呆れたような声で言うレオンくんとイリスちゃん。


そして、その後ろにノアさんも立っていた。


「あのような方法で進化させるなんて……」


ノアさんは驚いた表情で僕を見ていた。


「え~っと……ノアさんも勝ったんですね」


「はい。アルクくんのおかげで3人で戦うことが出来ましたからね」


「よかったです。これで終わりですよね」


「はい。終わりです。アルクくんはダンジョン突破者。S級冒険者の私でも苦戦したオークを1人で2匹倒した実績を評価すると、アルクくんはS級冒険者に相応しいでしょう」


「え? 僕がS級冒険者? え~っと、倒せたのはリーダーのオークをノアさんが相手してくれたから」


「ふふっ。あの3匹のオークの強さは同じでしたよ」


「え? でも……僕が……S級冒険者だなんて……」


「ふふっ。それにダンジョン突破特典が手に入ったでしょ。更に強くなったアルクくんならS級冒険者を名乗っても誰も文句は言えませんよ」


そういえばまた特典が入ってるんだ。



【ダンジョンボス討伐達成】


【ダンジョン突破特典:常備スキル 超ドMの魔鎧使い】



あれ? 前と同じ?


超ドMの魔鎧使い HP100上昇、MP100上昇。


え? す 凄い。あっ、超がついてるのか。



「どうしましたか?」


「え? え~っと、今回の特典を確認してました」


「ふふっ。#今回の__・__#ですか」












「イリス? どこに行く?」


「決まってるでしょ。私達の使命なんだから」


「……そうだな。俺も行く」


















「やりやがったな、アルク。いったい何しやがったんだよ」


「え? 何も?」


「はぁ~。アルク、弱くなったって言ってたよな?」


「はい」


「はぁ~。ならどうして、いきなりF級冒険者がS級冒険者になれるんだよ」


「それは……ノアさんが勝手に」


「はぁ~もういい。ほら、金貨1350枚だ」


「え? え? どうして、そんなに?」


「はぁ~俺が聞きたいよ。アルクは試験のためにダンジョンに入ったんだよな?」


「はい」


「じゃあ、どうして突破してんだよ」


「あっ。それは2人の子供がダンジョンボス部屋に迷い込んだから」


「なわけねぇだろうが。はぁ~もういいよ」


本当なんだけど……。


















「激ウマ~。アルクお兄ちゃん、いつものお肉より美味しい~」


「美味しい~。美味しい~。美味しい~」


「美味しいですよね。これは私が倒したオークですかね」


「美味いな。こいつに殺されそうだったと思うと複雑だよな」


「美味しい~。こんなに美味しいお肉があるなんて。美味しい~」


あれ? どうして、この街にノアさんとレオンくんとイリスちゃんがいるんだろ?










「お会計は小金貨608枚になります」


「え? お肉を持ち込んだのに?」


「お酒代とお土産代が含まれてますからね」


お土産代? お酒代は分かるけど?


店員さんに確認すると……ノアさんとイリスちゃんが大量の焼肉屋弁当をお土産に。


2人とも空間収納に入れると腐らないから大丈夫だと言うけど……お金を払う僕は大丈夫じゃないんだけど……。













アルク

レベル40

HP  130/440

MP  24/309


SP 53   

EX 178652


常備スキル 新たな英雄、歴戦の探索者、ぼっちの剣士、伝説の魔剣使い、ドMの魔鎧使い、超ドMの魔鎧使い


スキル 剣技【受け流し】、【痛感軽減】


魔法 初級回復魔法


装備:B級の魔剣、F級の盾、C級の魔鎧


アイテム:薬草玉76粒


所持金   金貨1989枚








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