第6話 ギルド試験








僕はギルド試験を受けるために冒険者ギルドの馬車で街バーニャカに移動した。


「私はノア。君がヤマラが推薦してきたアルクくんだね」


「え~と……アルクです。ヤマラさんって、買取の職員さんですか?」


「ん? ヤマラは自分の名前も伝えてないのかい。ああ見えてもヤマラはギルドマスターなんだよ。有望な若者がいるから特別昇級試験を頼むってな」


「え? 偉い人だったんですか? ヤマラさんは……」


「まあ、偉いかどうかは分からないが、実力は確かだな。まあ、アルクくんの装備を見れば誰も反対しないだろう」


「え~っと……僕は強くないですよ?」


「ヤマラから話は聞いてるよ。自分の実力を知りたいのだろ」


「はい」


「だとすると、何も問題はない。私が一緒に同行するからアルクくんは好きに戦ってくれればいい。私はアルクくんの身に危険が生じない限り見ているだけだがね」


「え?」


「そんなに不安にならなくていい。何かあれば絶対に私が助けてやるからな。これでも、この国最強のS級冒険者なんだぞ」


「S級!! 凄い。S級冒険者様に会えるなんて……。皆に自慢出来ます」


「ふふっ。ヤマラもS級冒険者だったよ」


「え? あの人も?」


「ああ、私と一緒のパーティだったんだよ」


「凄い人だったんだ……」







試験は単純で魔物退治。


この街バーニャカの西にあるダンジョンで魔物退治をすればいいだけなのだと。







ダンジョンの入口である階段に着くとノアさんが赤い魔石のような物を取り出した。


「転移」


ノアさんがそう叫ぶと僕達を光が包む。


「ここは?」


土壁で出来た通路に僕は立っていた。


「ダンジョンの中だよ。初めてではないのだろ?」


「……たぶん」


「ふふっ。さあ、魔物が向かってくるから、好きに戦っていいぞ」


何かデカい魔物が……。


「え? あれって、オークですか?」


「アルクくんはオークを見たことがないのか?」


「はい……」


「まあ、いい。戦ってみれば実力が見えてくるだろう」


「え~っと……。危なくなれば……」


「もちろん助ける」


よかった~。なら試してみよう。僕の実力を。


まずは踏み込んでからの横斬り。


そして……? 


「え? え? 倒した?」


「ふふっ。おめでとう。アルクくんの実力はE級冒険者以上だよ」


「え~っと、ありがとうございます」





オークは弱かった。


何度も何度も遭遇したのに、全て一撃。


冒険者ギルドで危険な魔物だと習っていたのに……こんなにも弱かったなんて……。


「僕の実力はレベル10の冒険者くらいですか?」


「ふっ。魔核の色は見たかね?」


「え? 緑?」


「ああ。レベル30くらいの冒険者が戦う魔物だよ」


「30?」


「ふふっ。では移動するよ。転移」





光が消えると……同じような景色。さっきほどの場所と同じ土壁の通路に立っていた。


そして向かって来た魔物も同じくオークで、横斬りの一撃で倒すことが出来たのだが?


何も言わないノアさん。


これは試験なんだよね。沢山倒せってことなのかな?





僕はダメージを受けずに沢山の沢山のオークを全て一撃で倒すことが出来た。


ノアさんがなぜか笑っていた。


「これは期待以上だな。アルクくん、この先に扉があるから、中の魔物と戦ってみてくれ」


「え? 扉? もしかして……ダンジョンボスですか?」


「そんなに緊張しなくても大丈夫さ。さすがに、そんな無謀なことはさせないからね」


よかった~。S級冒険者だから感覚がずれてるのかと思ったよ。




扉の中には2メートルくらいのトカゲの魔物が。


見た目は恐ろしそうなのだが、強そうには感じない。


先手必勝~。


僕はいつものように走った。


踏み込んでからの横斬り。


そしてすぐに斬り上げ~。


そしてそして……?


「え? 倒せたの?」


「ふふっ。50階層のボスも問題ないとはね」


「え? え? 50階層? ですか?」


「ああ。アルクくんの実力はC級冒険者以上確定だよ」


「え? え? 僕がC級ですか?」


「ああ、最低でもね」


え? え? 最低でもって……。


「アルクくん。これより下は転移石では移動出来ないんだ。悪いが走るよ」


「え? 走る?」






僕はノアさんの後ろを走ってついて行く。


魔物が現れてもノアさんは回避するだけなので、僕が戦わなければならない。


まあ、でも弱い魔物ばかりなんだけどね。










ノアさんの走るペースが速いので何階層降りたのかも分からなくなってきた。


「よし、今日はここまでにするよ」


「え? 今日はって?」


「安心しろ。結界石があるから、寝込みを襲われることはない」


「え~っと……」


「ふっ。もちろん食事は出してやる」


よ よかった~。昼も食べてないから、飢え死にしちゃうかと思ったよ。


お腹が空いてた僕はノアさんから貰った白いパンにかぶりつく。


「美味しい~。ノアさん、これ凄く美味しいです」


「ん? アルクはそこそこ稼いでいるんだろ? サンドイッチくらいで大袈裟だな」


「これが噂のサンドイッチですか。この果実汁も美味しい~」


「まあ、喜んでくれるなら、私としても嬉しいよ。食事は大量に用意してあるから、好きな時に好きなだけ食べていいからな」


「え?」


「私としては昼にも食べたいから、付き合ってくれると助かるのだがな」


え? 昼もこんな美味しい物が食べれたの?


「え~っと……。ノアさんは空間収納が?」


「ああ、これでもS級冒険者だからな。A級の空間収納の指輪を持ってるよ」


凄い。空間収納の指輪はF級の物でも、めちゃくちゃ高いって習ったのに。


僕もいつかは……F級の空間収納の指輪でもいいから欲しいな~。美味しい物がいつでも……。


僕はそんなことを考えながら眠りの中へ。










アルク

レベル33

HP  130/297

MP  85/182


SP 64

EX 86873


常備スキル 新たな英雄、歴戦の探索者、ぼっちの剣士、伝説の魔剣使い ドMの魔鎧使い


魔法 初級回復魔法


装備:B級の魔剣、F級の盾、D級の魔鎧


アイテム:薬草玉76粒


所持金   金貨701枚







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