第3話 絶対強くなってるよ







F級の皮の鎧が金貨4枚。


E級の皮の鎧が金貨10枚。


D級の皮の鎧が金貨50枚。



所持金は金貨37枚と小金貨2枚。


さすがにD級は無理だがE級なら買える。


あの痛みを考えると値段が高くても防御力のあるE級の鎧だね。












僕の防御力はアップしたけど……強いスライムが出て来たら……。


そう考えると薬草玉1粒では不安だ。


よし、今日はダンジョンに入る前に蟻を倒そう。

















3時間での成果は薬草玉3粒。


前よりも沢山の蟻を倒したのだが……。


運が悪かったのかな? それとも前の時が運がよかった?


常備スキルで、攻撃力も防御力も素早さも上がった。鎧も買った。薬草玉も4粒ある。


スライムに負けるなんてことはない。


僕は少し不安を感じていたのだが、負けないと、勝てると、心の中で自分に言い聞かせるように何度も繰り返した。






いつものように階段を下り、扉の中へ。


《 バタンッ 》


扉が閉まり、部屋の中央が光る。


現れたのはスライム。


魔核も色なしのいつものスライム。


僕はほっとした。


よし、今日は圧勝してみせる。


僕はすぐに走った。


先手必勝。連続攻撃でダメージを受ける前にスライムを倒すために。


スライムに接近した僕は右足を強く踏み込み、横斬り。そして斬り割くように上から下に斬り下げ。


まだまだ~。


僕の攻撃は終わらない。剣をすぐに下から上へと斬り上げる。


うぐっ。い 痛い~。


剣を斬り上げたタイミングで正面からお腹に体当たりされてしまう。


いつもの痛み。


スキルと鎧の効果はないのか?



アルク

レベル1

HP  39/40

MP 35/35



ダメージもいつも通り1。


痛いが、痛いが、早く倒さないとこの痛みを受け続けることに。


僕は剣を振る。


ううっ。今日もなのか?


何度も何度も剣を振る。


凄く凄く痛いのを我慢して剣を振る。




アルク

レベル1

HP  9/40

MP 35/35



薬草玉を手に入れておいて、よかったよ。


4粒で足りることを信じて剣を振る。


横斬り、斬り上げ、突き。


何度も痛みを我慢して攻撃を。




次にダメージを受けたら、薬草玉を飲もうと考えていたのだが……スライムが萎んでいた。



アルク

レベル1

HP  3/40

MP 35/35


EX 11




経験値が……5も増えた?


僕の攻撃力と防御力に変化がなかったんじゃなくて……スライムが強かったのか?


う~ん。よく分からないよ。



【ダンジョンボス討伐達成】


【ダンジョン突破特典:常備スキル ぼっちの剣士】



え? ぼっち? これが今回のスキル? HP10上昇、攻撃力10上昇、素早さ10上昇。


おおっ。凄い。


これで僕もかなり強くなれたと思うんだけどね~。だけど~絶対にスライムも強くなってるよね。


……ぼっちか。


そろそろ仲間を探さないとダメってことなのかな?


秘密を守ってくれる仲間か。


……冒険者になったお兄ちゃん達やお姉ちゃん達に相談した方がいいのかな?


それとも冒険者ギルドで相談?













「ほお~。今日もまた凄いな。この剣は魔剣だぞ」


「え? え? 魔剣? 魔剣って、勇者達様が装備してる伝説の武器だよね?」


「そうだぞ。魔剣は伝説の武器と呼ばれるくらい貴重なんだ。まあ、この魔剣はG級だけどな」


「え? G級? 魔剣なのに?」


「ははははは。俺もG級の魔剣なんて初めて見たぞ」


「……売値は?」


ギルド職員は首を横に振る。


「残念だが買い取れないな」


「え? どうして?」


「アルク専用装備になってるからな。ダンジョンで手に入れた武具は稀に宝箱を開けたパーティの中の誰かの専用装備になることがあるんだよ」


「え? 装備出来ない人の専用武具にもなったり?」


「ははははは。さすがにそれはない。魔剣は使い手を選ぶと言われてるんだ。アルクもその魔剣に選ばれたのかもな」


「……選ばれた? 売却出来る方が嬉しいんだけど」


「ははははは。まあ、魔剣使いなんて、カッコいいだろ。それに専用装備だから、アルク以外には無価値。盗まれる心配がほとんどない。まあ~G級だけどな」


「……そういえば、G級って? 武具もアイテムもF級からだと習いましたけど?」


「まあ、売り物はな。……ダンジョン産の物もだと思っていたが……アルクはこの魔剣をダンジョンで入手したんだろ」


「はい。一応」


「ははははは。一応か。何か秘密がありそうだが、俺はギルド職員として、詮索はしないから安心しろ」


「はい」


「そんなに落ち込むなよ。まあ~本来は有料なんだが、しょうがねぇな。その魔剣の鑑定結果を教えてやるよ」


「いいんですか?」


「既に鑑定しちまったからな。まずその魔剣は頑丈だということ。まず折れることはないだろう。更に等級の高い武具のように自己修復機能が備わってるから、手入れしなくても問題ない。そして魔剣だということだ」


「頑丈で折れない。手入れの必要はない。そして魔剣?」


「ああ。魔剣だ」


「それは最初に聞きましたけど?」


「魔剣はな、成長するんだ。ダンジョンの深い下層ほど。長い期間宝箱の中に入っているほど等級の高い魔剣になると言われているぞ。今まで発見された魔剣の等級はA級以上なのだが、カノワ王国にある新しいダンジョンの下層でB級の魔剣が出たとの噂を聞いたことがある。実際はA級の装備だったとも言われているが、魔剣は成長するだろ。B級の魔剣を手に入れてA級の魔剣に成長させたのだと噂があるんだ」


「??? 噂ですか? 手に入れた人から話は?」


「盗まれることを恐れて隠していたようだな。しかし魔剣が発見されたと噂は広がった。そして手に入れた冒険者が引退する時に売却したのがA級の魔剣だったんだが、自身の活躍を盛るために強い魔物を倒してA級の魔剣を手に入れたんだという話がな」


「その新しいダンジョンは何階層くらいなんですか?」


「当時は52階層だったみたいだな」


52階層で新しいダンジョン? 僕が見つけたのは……。


「え~と。この魔剣の成長方法は分かりますか?」


「ああ、魔物を倒すだけでいい。経験値が多い強い魔物よりも、弱い魔物でもいいから沢山倒した方が等級は上がりやすいとの情報がある。まあ、魔剣のほとんどがA級以上で発見されるのだがな」


沢山!! いいことを聞いたかも。


「ありがとうございます。等級が上がったら、分かりますか?」


「ああ、すぐに分かるだろうよ。攻撃力がぜんぜん違うからな。それよりも、柄の魔石の色だな。灰色なら、G級。色なしなら、F級。黄、緑、青、赤、銀。そして金ならS級だ。そしてそして虹色になればSSS級だそうだぞ。SSS級は御伽話の中の勇者が装備しているだけで、誰も見たことがないんだがな」


「そうですか。ありがとうございました」


僕がギルド職員さんに頭を下げてお礼をいい、ギルドを出ようとすると、ギルド職員さんから呼び止められる。


「おいおい。宝石の代金がまだだろうが」


あっ。忘れてたよ。宝箱の中には剣と小さな宝石が入ってたんだったよ。


「ありがとうございます?」


「ん? どうしたんだ?」


なぜか袋が膨らんでいるのだが? 袋を開けると金貨?


「え~っと……。小さい宝石の売却代ですよね?」


「ああ、そうだぞ。小さいが人気で希少な宝石だったからな。金貨150枚入ってるだろ」


「150枚!!」


「ははははは。剣が売れなくて落ち込んでたんじゃないのか」


「その……ありがとうございます」


僕は恥ずかしくなり、目をそらした。


「毎回毎回かなり稼いでいるんだから、もっと良い装備を買えよな。魔道具に魔法に回復薬にも金をかけるんだぞ。命を落とせば全てが無駄になるんだからな」


「魔法? 魔法は買えるの? 魔法学校で習うか、レベルが上がった時に自然と覚えると習ったような?」


「ああ、通常はな。孤児に教える時には言ってないのだが、魔法も買えるんだよ」


「どうして教えてくれなかったのですか?」


「まあ~あれだ。高いからだよ。初級の魔法でも金貨50枚以上するからな」


「初級で50枚も」


「以上だよ。以上。初級でも人気の魔法は高いぞ。回復魔法だと金貨100枚以上だったかな」


「回復魔法も買える?」


僕の魔力は高いのに魔法が使えないので、もったいないって思っていた。もし回復魔法が使えたなら、スライムになんか負けないはずだ。


「回復魔法が欲しいのか。1つくらいは残っていたと思ったんだが~。おっ、あったぞ。F級の回復魔法を覚えることが出来る魔法石だ。値段は……高いな。金貨120枚もするぞ」


「本当に高いですね」


「まあ、アルクなら、問題なく買える値段だな。MP10を消費してHP30を回復させることが出来るぞ。まあ、HP30だから下級ポーションと同じだな。ちなみに下級ポーションの値段は小金貨1枚だな」


「え~っと、薬草玉が銀貨1枚ですよね。下級ポーションも凄く高いですけど……金貨120枚は……」


「はぁ~。ダンジョン攻略には何日もかかるだろうが。MPは寝れば回復出来るが、回復薬の補充は容易ではないんだぞ」


う~ん。いつも日帰りなんだけど。それに薬草玉なら無料なんだよね~。


「今回は……」


「買えよ。なあ、アルク。ダンジョンを舐めたら死ぬぞ。アルクならすぐに元をとれるだろ。よし、交渉成立だな」


「え?」


「金貨120枚だ」


「え?」


「120枚」


「……はい。あの……安くて美味しい焼肉屋ありますか?」

















「美味しい~」


「アルクお兄ちゃん、凄く美味しいよ」


「美味いな、アルク」


「あ~生きてて、よかった~」


「アルクちゃん、最高~」


……どうして、冒険者になったミバルお兄ちゃんとカブナお兄ちゃんとレオナお姉ちゃんまでいるの?









「小金貨126枚になります」


126枚? 安い店だって言ってたのに……。


「ミバルお兄ちゃん達は冒険者になったんだよね?」


ミバルお兄ちゃんはなぜか苦笑い。


「冒険者は冒険者なんだがな……」


カブナお兄ちゃんがため息をつきながら言う。


「はぁ~。お金持ちになれると思ってたのにな~」


なんだか……暗い表情の3人。

 

レオナお姉ちゃんが僕だけに聞こえるように小声で話してくれた。


私達は奴隷冒険者になってしまったのだと。


奴隷に? あれ? 奴隷冒険者って?








アルク

レベル1

HP  50/50

MP 35/35


EX 11


常備スキル 新たな英雄、歴戦の探索者、ぼっちの剣士


装備:F級の剣、F級の盾、E級の鎧


アイテム:薬草玉4粒、F級回復魔法の魔法石


所持金   金貨43枚

    








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