22話 綺麗な2人の女性
「どうやら、俺様の勘違いだったようだな」
いきなり僕の前に現れて偉そうに言う男。
「リース? この人は……あれだよね?」
偉そうだけでなく、強そうな男。
リースは無表情のまま、コクリと頷いた。
そうか、ようやく終わりの時が来たんだね。
「さあ、始めようではないか、ゼバスよ」
偉そうな男は笑みを浮かべ、そう言った。
「リース。今まで、ありがとう。楽しかったよ。長い長い辛い旅でもあったけど、リースと一緒だったから、僕は幸せだったよ」
僕は偉そうな男を無視して、リースに最後の別れを。
「私も幸せでしたよ。2人には悪いけど、アルスさんとの2人旅は本当に楽しかったです。ありがとうございました」
2人? 誰のことだろう? まあ、いいか。僕は満足だよ。だから、後はお願いしますね。
お願い? 私にお願いされても困りますよ。私には何も出来ないのですから。
ふっ。分かってますから、もういいですよ。あなたの力が戻っていることは僕が一番分かってますから。
戻ってる? ははは。それはオルスさんの勘違いですよ。
勘違い? そんなはずないでしょ。特殊スキルを持たない子達が増える度に、あなたの力が増してたことくらい、気づいてましたよ。現在、人族で特殊スキルを持っているのは僕だけ。後はあなたが僕を取り込んで復活するだけですよね、ゼバス様。
ははは。だから、それはオルスさんの勘違いですよ。そんな勘違いしていると、オルスさんを、いや、アルスさんと一緒に戦うために頑張って来た2人に悪いですよ。
2人? 勘違い? ゼバス様、意味が分かりません。
ははは。お別れの時間です。そろそろ時が動き始めます。アルスさん、私を取り込み、アペプを倒してください。
え? 僕が?
方法は分かる。特殊スキルとは別に存在する神力を僕の身体に馴染ませれば、きっと。でも……それはゼバス様が消えてしまうということ。
どうすれば。
……
……
「アルスさん、来ますよ。しっかりしてください」
リースが僕の前で結界魔法を放ち、アペプの動きを止めてくれていた。
アルス
年齢15
レベル357
職業→剣士
僕はこれ以上成長しない。300年前に上がったままの状態。次のレベルまでの経験値が半端なく必要なのだろう。
僕は前に出て、アペプに向かって剣を振る。
アペプはつまらなそうに剣を振り、僕の剣に当ててきた。
くっ。何て力だよ。
僕は剣に伝わった衝撃で後ろへと吹き飛ばされてしまう。
全然本気ではなかったアペプの攻撃。レベルを55上げても勝てないだろう。
「アルスさん、逃げてください。私が足止めを。仲間になってくれた神々と合流して、アペプを。アルスさん、愛してます」
リースは微笑み僕の前に出た。
僕では勝てないと分かったのだろう。
「つまらぬ。俺様は貴様のような雑魚を恐れていたというのか」
アペプが再び攻撃態勢に。
前に出なければ。リースではアペプの攻撃は防げない。前に出なければ、リースが。勝てなくても、前に。
僕が前に出ようとすると後ろから女性の声が。
「目覚めよ、我が力。全ての敵を打ち倒す力を。特殊スキル、【一騎当千】」
綺麗な女性は僕の手から僕の剣を。
「ダメよ、レイラ。一旦、逃げるんでしょ」
また、後ろから、女性の声が。
「強くなった私を少しだけでも、アルスさんに見てほしいんですけど」
「抜け駆けはダメ。リース、私に力を貸して」
綺麗な女性。
2人を見ていると涙が出てくる。なぜだろう?
「お久しぶりですね。2千年ぶりでしょうか」
2千年? ってことは神様なんだ。でも……どこかで?
「仲間を救うために力を貸してください、ゼバス様。【危機脱出】」
ん? 光?
僕を、僕とリースと綺麗な2人の女性を包む光。
「俺様から逃げれると思うなよ。はぁ?」
驚いているアペプの顔。その次の瞬間、景色が変わる。なぜか僕は、僕達は木の上にいた。
「ふふふっ。懐かしい場所ね」
僕を見つめながら、微笑む女性。
リースが横にいるというのに……僕の胸はときめいていた。
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