【エピローグ ラナリス】 意思










「レイラは天才だな。無能のフラリスとは大違いだな」


「お父様。お兄様は天才ですよ」


「ははは。フラリスがか」


「はい。お兄様です。天才だから特殊スキルを手に入れることが出来なかったって、ペプクスが言ってます」


ペプクスだと。神や天使と呼ばれていたあのペプクス様。レイラはペプクス様と話せるというのか?







私はフラリスに冷たく当たってしまっていた。無能だというだけで、愛する息子に。


「フラリスは天才なのか……」


「はい。お兄様は天才です」


「そうか……。ありがとう、レイラ。ところで、レイラはフラリスよりも強いというのは本当なのか」


私は半信半疑で娘のレイラに聞いた。フラリスは10歳でレイラはまだ3歳なのだ。


「はい。私はお兄様よりも、お父様よりも強いです。最強の剣士ですから」


「ははは。そうか、レイラは私よりも強いのか。よし、私が剣の腕を見てやろう」


ふっ。フラリスに勝ったというのも遊びか何かだろう。


私は娘との時間を楽しむために剣で遊んでやることにした。


レイラに持たせた剣は練習用のF級の剣。私の剣は愛剣のS級の剣。


なのに、なのに、レイラの剣からは凄まじい力を感じる。


私は愛剣に魔力を纏わせた。


3歳の娘を前にしているのに、危険な予感がビンビンと。油断すると命を落とすと魂が訴えてくる。


娘は小さな身体で剣を上段に構え、私の方へと振り下ろして来た。


私は油断することなく魔力を纏わせた剣で受け止めた?


まずい。


私は慌てて後ろへと下がる。


そして口を開く。


「参った。私の負けだ」


レイラの剣を受け止めようとした私の愛剣が斬り落とされてしまったのだ。


「えへへ。私、強いでしょ」


無邪気に微笑む娘のレイラ。


「レイラ。今のは……魔力を剣に纏わせたのか?」


「神力と魔力」


「神力? 神様の……神ペプクス様の力を操れるのか?」


「? お父様、特殊スキルが神力ですよ?」


「特殊スキルが?」


神力=特殊スキル。そんな話は聞いたことがない。過去の英雄の生まれ変わりだとすると……剣神レイラ? 娘レイラが剣神レイラ? 剣神レイラの生まれ変わりなのか。





私はこの日から息子のフラリスを鍛えることにした。私の娘として生まれて来てくれた本当の英雄、剣神レイラをサポート出来るように。





























「お父様。遅くなってすみません」


「お父様」


「フラリス、レイラ。来てくれたのか。2人の活躍は聞いてるよ」


「俺はお父様のような英雄になるために努力していますが、お父様の偉業は凄すぎて追いつくことが出来ませんよ」


「フラリスが英雄か。私はフラリスが無能だったから、何も出来ない人生を送るのだと決めつけていた。本当にすまなかったな」


「俺もそう思ってましたよ。でもレイラと旅をしてすぐに理解しました。レイラのようなチートな人でも努力して上を目指しているのだと。誰でも上を目指すためには努力しているのだと。お父様も努力して来たのだと」


「そうか。フラリスは誰よりも努力しているのだな。フラリスなら、きっとオルス様のような英雄になれるな。フラリス、レイラ、ありがとう」


「「お父様~~~」」











私の中の力と私は1つになる。


きっと、この力がレイラが言っていた神力なのだろう。


私の力と融合された神力は……レイラの中に?


……


……


……



私はレイラと共に? もしかして……ペプクス様がレイラの中に? そうだ!! ペプクス様、お願いがあります。私を、この力を息子フラリスの中に。ペプクス様、お願いします。ペプクス様、息子フラリスの中に。




























「レイラ。ありがとう。レイラのおかげで、レイラが天才だと言ってくれたおかげで、俺はお父様のように英雄と呼ばれるように。レイラには全く敵わないんだけどな」


「お兄様は天才よ。お父様の意思をついで、幾つもの偉業を。英雄に相応しいのは私ではなくお兄様。私は誰よりもお兄様を尊敬してましたよ」


「ありがとう、レイラ。俺は先に逝くよ」


頑張ったなフラリス。


お父様? お父様!! もしかして、お父様が俺に力を。だから俺に特殊スキルが。


さあ、どうだろうな。まあ、特殊スキルがなくてもフラリスは私を越えていたよ。


そんなはずはありません。何度、この特殊スキルに助けられたことか。俺はお父様にずっと助けられていたのですね。俺は……お父様に愛されていたのですね。


当たり前だろ。最愛の息子フラリスよ。


お父様、なら次は。


ああ、そのつもりだ。


なら、俺も。


そうだな。フラリスも一緒にレイラの力となってくれ。


分かりました。俺もお父様と一緒にレイラを支えていきます。


ありがとう、フラリス。さあ、いこう。










私とフラリスはレイラの中へ。




















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