【エピローグ(ネルダ)】 剣神
何が盗賊王ダドンだよ。浮かれやがって。全ては俺のアイデアだろうが。
俺の部下達がたった1人の女に殺られていく。
魔力を完全に操ってる女。
S級冒険者の実力があるのは間違いない。
俺の経験がそうではないと言っている。
これまでに見たことがないほどの速さと力。
ただの冒険者ではない。
ならば国の?
あの鎧はA級以上。
いや、S級以上なのか?
剣は地道だが鎧に、あの沢山の指輪。
一瞬だけ空間収納から取出したさっきの盾も。
全てがS級……以上?
以上……。
以上なのか。
S級は国宝と呼ばれる最上級。
だが、俺は何度も手にしたことがある。
……S級ではない。
全てがS級よりも上。
やはり国の兵士。
王直属の騎士団の中でもトップクラス。
俺が見たことがなく、武具に太陽の紋章もないということは、王の指示のみで動く表に出て来ない兵士なのか。
俺の盗賊団がたった1人の女に壊滅されるなど、あってはならぬ。
俺は叫ぶ。
温存していた精兵を出す時が来た。
女は戦い続けて体力が減っているはずだ。
「野郎共。敵は1人だ。囲んで瞬殺しろ」
敵は体力が減っている女が1人。こちらは体力を温存していた精兵が20人。
勝てる。どんな相手であっても。
俺が勝利を確信した時に、女が叫んだ。
「目覚めよ、我が力。全ての敵を打ち倒す力を。特殊スキル、【一騎当千】」
なっ。まだ特殊スキルを温存していただと。は、ハッタリだ。
俺の精兵の剣が空を斬る。
俺の精兵の首が飛ぶ。
俺の精兵の剣が空を斬る。
俺の精兵の腕が飛ぶ。
俺の精兵が全く女の速さについていけてない。
化け物め。本当に特殊スキルを温存してやがったか。
ならば。
「野郎共。時間を稼ぎやがれ。特殊スキルの効果が切れるまで粘れば、俺達の勝ちだ」
粘れれば……。
俺の精兵は既に3人。いや、2人。……1人。……。
逃げるしかねぇ。クソが。
俺は走った。
全力で。
俺がこんな所で死ぬなんてありえねぇ。
ダドンと合流すれば。なっ。森が燃えている? ダドンに何かあったのか? ダドンにも刺客が? うっ。何だよ、これは。なぜ俺の腹から血が出ているんだよ。クソが。魔力刃を放ちやがったな。
「クソが。クソが。死んでたまるか。俺は死なねぇ~~~」
俺の足が止まり、目の前に地面が迫る。
視界が、脳が揺れる程の衝撃が。
地面に受け身も取れずに激突したのに、痛みがない。
俺は死ぬのか?
この俺様が死ぬ?
クソっ。身体の中から、力が抜けて行きやがる。
これが死なのか? 聞いてた話しとは違うようだが、死とは宝石になることなのか?
俺の身体の中から現れた青い宝石。
俺の意思はその青い宝石の中へと吸い込まれた?
「人の身体の中から宝石? この盗賊は魔物だったの?」
俺を殺した化け物が俺を、青い宝石を手に取ると、俺は、青い宝石は砕け散り、その中の力だけが、化け物の中へ。
……
……
……
俺は化け物の中へ。
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