18話 エルフの王バルス













「腕が鳴るわね。爆炎のイリスの名を広めるチャンスよ」


「エルフの盗賊と人族の盗賊が組んでいる可能性が高いので注意しましょう」


「安心してください。ギブスの拠点は森の中です。森の中でエルフの私に勝てる者はそうはいませんよ」


「も~、リース。相手もエルフなんでしょ」


「そうですよね。むしろ、人族の私達がいるから不利になるんじゃないですか」


「大丈夫です。私に任せてください」


「も~、大丈夫じゃないでしょ。アルスからも言ってよ」


「まあ~、リースに任せておけば、問題ないと思うよ」


「確かにリースさんは強いですけど、森の中のエルフは手強いですよ」


「僕は森の中だとイリスの方が有利だと思うけど」


「私?」


「イリスちゃんはダメでしょ。確かに森を炎で包めば、イリスちゃんの独壇場になるでしょうけどね」


「森を焼き払われるのは、ちょっと。やはり、エルフの私に任せてください」


「え~。私も戦いたいよ」


「イリスちゃんは炎なしじゃ厳しいでしょ」


リース中心で戦うことが、決まったようだが、イリスはどうしても大盗賊団殲滅の肩書きが欲しいみたいで、諦めていないようだ。


「イリス。大丈夫だと思うよ。盗賊はエルフだけじゃないから。人族の盗賊団と繋がっているなら、きっと戦いになるよ」


「ふふふっ。イリスちゃんの大盗賊団殲滅の偉業を広めるなら、人族の盗賊の方が認知されやすいと思うわよ」


「そうか。そうよね。アルス、リース。人族の盗賊団の方は私に任せて」


活躍出来ると分かるとイリスの機嫌がいきなりよくなった。















「魔木ちゃん達、敵はこの先ですよ」


リースが魔那から生み出した巨大魔木10匹が僕達を先導するように進んで行く。


「魔物が味方だなんて、変よね」


「かなり上位の魔物ですよね。明らかに私よりも強そうです」


「だね。僕よりも強いだろうね。リースは魔物を大量に生み出せるってこと?」


「ダンジョンで手に入れた魔那が大量にありますからね。魔木ちゃんなら、1万くらいは余裕ですよ」


「「「 1万匹!! 」」」


僕だけじゃなく、イリスもレイラも驚きの声を。


1匹でも、かなり強い魔物なのに、1万匹も生み出されたら…………人族は滅ぼされてしまいそうだよ。さすが、神様ってことなのだろうか。











まだ盗賊の姿が全く見えていないのだが、リースは巨大魔木に指示を。


「この先にギブスの拠点があります。魔木ちゃん達、お願いね」






巨大魔木達に指示を出したリースは弓を手に構え、矢を放つ。


適当に矢を放ったかのように見えたのだが。


「よし。ギブスを倒したわよ」


「「「 え? もう? 」」」


いきなり倒したと言われても、盗賊の姿も拠点も見えていない僕達は困惑する。


「残党は魔木ちゃん達で大丈夫なようです。私もここから援護しますけどね」


そう言うとリースは弓で矢を次々と放っていく。







せっかく森の奥深くまで来たのに僕とイリスとレイラは何もすることがない。盗賊の姿も声も聞こえないので、戦闘が本当に行われているのかすら分からない。


「暇ね。私達が来た意味あった?」


「ですね。リースさん、盗賊の拠点はどれくらい先にありますか?」


リースは矢を放ちながら、答える。


「2km先にありますよ。捕らえられていたエルフ78人は既に開放して、武具を渡しましたよ」


「ん? 開放して武具を? 魔木が?」


「いえ。私が魔法で」


「魔法で? リースの魔法はそんなことも出来るの?」


「大量の魔那がありますから、武具を生み出し、宝箱を出現させるくらいは簡単に出来ますよ」


「リースさんには千里眼に、遠話に、武具生成の特殊スキルがあるのですね。弓の腕も凄いし、防御も凄いし、何でも出来て、チート過ぎますね」


「そうよね。チート過ぎよ」


「ふふふっ。私はこれ以上強くはなれませんよ。むしろ弱くなっていきます。レイラさんとイリスさんは成長期ですよね」


弱く? 神力が失われていくってことなのかな?








30分くらいすると、リースが弓を空間収納の中へと収納した。


「他の盗賊団が来る前に終わってしまいましたね。通信の魔道具で2つの盗賊団に救援を求めていたので、ここで待って迎え撃つのか、それとも先に街を開放するのか、どうしますか?」


「リース。開放って、街に攻め込むってことだよね?」


「はい。この一帯はエルフが住んでもいいと、ペプクス様から許可を頂いていますからね」


「リースさんはペプクス様を知っているのですね」


「あれ? ペプクス様は人族の天使だよね?」


「ペプクス様は天使であり、ゼバス様の代行者ですから、神様でもありますね」


「神様から許可を……」


本当なら、街を開放するのを止められないよね。


「アルスさん、どうしますか?」


「人族の街に僕達が攻め込むのは無理だね。だから、イリスとレイラには盗賊の対応をお願いするよ」


「いいけど、アルスは?」


「アルスくん。街がエルフ達に襲撃されれば、エルフと一緒に鑑定されて犯罪者になってしまうわよ」


「僕は何もしないから、大丈夫だよ」


「アルス。何もしなくても、一緒にいるだけで、共犯になるんだからね」


「大丈夫だよ。リースは守るけど、僕が街に近づくことはないから」


「分かったわ。でも何があっても私はアルスと一緒だからね」


「私もです。アルスくんが、犯罪者になれば私とイリスちゃんも犯罪者になると思って行動してくださいね」


「ありがとう、イリス、レイラ。でも本当に大丈夫だよ」






僕はイリスとレイラと別れて、リース達と行動を共にすることに。









アルス

年齢15

レベル120

職業→剣士





バルス

年齢50

レベル155

職業→剣士

称号→エルフの王













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