3話 魔力溜まり
「ヒュドラだってよ」
「それでこの騒ぎかよ。A級冒険者が討伐に向かったのか?」
「ああ。クラルテが向かったよ」
「あ~、それなら解決だな」
ヒュドラか。頭はいくつだろ? 3つまでならA級のパーティでも大丈夫だと思うが……。
何か面白そうな依頼がないかと冒険者ギルドに来たのだが、それどころではないのか、カウンターに職員が誰もいない。
魔森なら、レベル上げのついでに行ってみようかな。
アルス
年齢5
レベル23
職業→剣士
僕は魔黒狼を倒しながら魔森の奥へと入って行く。
2時間程進むと魔黒狼がピタリと出なくなった。
ヒュドラとA級冒険者達の戦いの影響だと思うけど……何か様子がヘンだ。
僕はレベル上げを中断し、警戒しながら進むことにした。
アルス
年齢5
レベル24
職業→剣士
オルス
年齢70
レベル89
職業→剣士
このデカい衝撃音はヒュドラだな。まだ戦っているようだね。
木々を薙ぎ倒すようなズドンと激しい音が聞こえたので僕は駆け足で、音のする方へと走った。
ん? スライムにオークにゴブリン? 魔黒狼も?
20分程、魔物には一切遭遇していなかったのに、なぜかここには沢山の魔物がいる。まあ、今の僕にとっては弱すぎる魔物なので、サクサクと倒しながら音のした方へと進んで行く。
おっ。いた。って……頭が……6。かなり上位のヒュドラじゃないか。
「カウス、前に出過ぎよ」
「俺のことはいいから、逃げ道を確保してくれ」
冒険者達の声が聞こえた。僕は生きていることに安心しつつも、魔物の群れがこの一帯を包囲している状況を考える。
考えられる現象は……ダンジョン?
ダンジョンが誕生? 魔那溜まりの影響か?
ダンジョンが誕生する時には、その場所に魔物が大量に集まっていると聞いたことがある。
冒険者達とヒュドラの戦いに参戦することなく、集まっているだけの魔物の群れ。
冒険者の人数は6人。
ヒュドラと戦っているというより、ヒュドラから逃げ回っているような感じだ。
魔物の群れに包囲されているので、逃げ出せないといったところだろうか。
僕は冒険者達に合流せずに、周囲の魔物を倒すことにした。
狙いは魔大猿。
魔黒狼と一緒で、群れで襲ってくる魔物。
戦うにはレベルは70以上ないと厳しいだろう。
まあ、今の僕の敵ではないんだけどね。
これで最後かな?
飛びかかって来た魔大猿を剣を振り上げ、一撃で倒す。魔大猿の群れを倒すのに1時間以上かかってしまったのだが、ついでに他の魔物も倒したので、全力で走ればヒュドラからも逃げることが出来るだろう。
6人の冒険者達は防戦一方のようだが、全員無事なようだ。
僕は冒険者達に向かって叫ぶ。
「撤退しろ。逃げ道は確保した」
「え? 誰? 冒険者ギルドからの援軍?」
リーダーらしき女性が僕に驚きながら言った。
「偶然、近くを通りかかっただけだ。仲間はいない。僕が加わっても、あのヒュドラには勝てないだろう」
「1人? あの……私達は魔物に包囲されてるの。この状況じゃ、ヒュドラからは逃げられない」
確かに魔大猿の群れと戦いながらでは逃げ出すことは出来ないだろう。
「魔大猿なら既に僕が倒した。今なら全力で逃げれば追いつかれることはない」
「倒した? でも……私達は魔物に包囲されていて……」
ああ。そういうことか。
「魔物は君達を包囲している訳ではない。この場所に集まっているだけだ。だから、この場所から離れれば何も問題ないと思うよ」
「この場所に? そうなの……。意味は分からないけど、追って来ないなら、街の方へ逃げられる。皆、撤退するわよ。全力でね」
リーダーらしき女性が叫ぶと、後方でヒュドラ以外の魔物と戦っていた男性が不安そうな顔で言う。
「本当にいいのか? もしこの数の魔物が俺達を追ってくれば、大災害になるぞ」
「私はその人を信じるわ。ただし、逃げる方向は真東じゃなくて、少し南よりにね」
僕を信じると言いながらも、誤りだった時のために、少しでも街から離れた場所に魔物を誘導するつもりなのだろう。
「それなら……。死にたくないし、信じるしかねぇか」
他の仲間達も納得したのか、リーダーらしき女性が叫ぶ。
「撤退~」
6人の冒険者達は一斉に走り出す。
僕は一緒には逃げずに南へと移動しながら、魔物の動きを観察。
ヒュドラの移動速度は物凄く速いのだが、森の木々が邪魔して本来の速さが出し切れていない。他の魔物の群れで冒険者達を追ったのは一部だけ。やはり、魔物が集まっているのは、この場所が関係しているのだろう。
僕はヒュドラが冒険者達を追って、この場所から遠く離れたことを確認してから、魔物の群れが集まっている中心の方へと移動する。
おっ。本当にあったのか。
魔物の群れが集まっている中心にたどり着くと、そこにはダンジョンの入口だと思われる地下へと続く階段があった。
集まっている魔物の群れが、その中に入ることはないようなのだが、目視で確認出来るくらいの濃い魔那が地下へと続く階段の中へと流れている。
ヒュドラが戻ってくる前に、この場所から離れた方がいいのだろうが
……
……
……
僕は好奇心に負けて地下へと続く階段を降りて行った。
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