第18話 勉強会当日

 勉強会当日。

 勉強会をしようと決まった翌日に、供給室を訪れたイーゴンくんにそのことを話したら「回復魔法のおかげで試験免除されてるけど、ぼくも参加したい!」と言ってくれたので、あの3人だけでなく、イーゴンくんも参加することになった。カナタくんのこともレオくんが誘ってくれたが用事があるらしくて、「めっちゃ行きたいんやけど、すんません……」って残念がっていたらしい。

 さらに賑やかになって楽しいだろうな。そう思って気持ちが高ぶってしまい、昨日の夜少ししか眠れなかったのは彼らにバレないようにしなければ……。


「先生、こんにちは!」

「レオくん! 一番乗りですね!」


 勉強会の場所は供給室。どこか学園外に集まってもよかったけど、実技の練習もするなら学園の方が便利ではないか、とヒューゴくんが提案してくれた。休日に利用する生徒も少なくないのか、事務部に利用申請を出したらあっさり承諾された。

 ケイレブくん以外はそれほど試験に心配がないだろうから、彼の勉強にあらかた方が付いたら実技の練習に移るつもりだ。ちょうど利用申請を書いているところをルカ先生に見られていたので、もしよかったらとダメ元で誘ってみたら渋々ではあったが実技の練習時限定で参加してくれることになった。わたしは魔力はあるものの魔法は何も使えないので、もし実技の練習中になにかあったらと懸念していたが、ルカ先生が来てくれるなら安心して見届けられるし試験へ向けての練習もしっかりできるだろう。


「……」

「あ、ケイレブくん! こんにちは!」

「……んで、こんな……」

「ケイレブ、ドアの前で立ち止まらないでくれないか」

「ヒューゴくんも来てたんですね!」

「先生、こんにちは」


 続々と参加者が集まってきて残りはイーゴンくんだけ。そろそろかな、とソワソワして待っていたが、予定時刻から5分、10分と過ぎても来なかった。


「イーゴンくん、大丈夫ですかね……」


 他の3人――主にケイレブくんの時間を無駄にするわけにはいかない。先に始めていよう、と思ったちょうどその時、供給室のドアが開くと同時明るい声が聞こえた。


「せーんせ! やっほ!」

「遅いぞ、イーゴン・ワルデン」

「げ、セルヴァン先輩じゃん……。そういえばいるって言ってたっけ……」

「僕がいたら何か不都合が?」

「べつにぃ?」


 小走りでわたしの元へとやってくるイーゴンくんに小声で話しかける。


「ヒューゴくんと何かありましたか……?」

「……先輩、ぼくのこと研究対象として見てくるからにがて」

「そう、ですか……」

「嫌いじゃないけど、いーっぱい喋りながら近付いてくるのはウザい」

「はは……、」


 ヒューゴくんにベーっと舌を出しながら言うイーゴンくんの言葉に心当たりがありすぎて思わず苦笑いしてしまう。


「さて、揃ったことですし始めましょうか。ケイレブくんは分からないところがあったら、ヒューゴくんに聞く、でいいですか?」

「あ? オレは自分で勉強するからいらねえ」

「君のあの成績で、勉強した程度で全部分かるわけがない」

「ってめぇ……」

「喧嘩はやめてくださいね?」

「うるせぇ」

「……早く勉強が終われば、それだけ早く実技の練習ができますよ?」

「…………やればいいんだろ! やれば!」

「ふふ、頑張ってください!」


 各々供給室の好きなところに座って教本などを開き始めた。わたしも試験はないが、ヒューゴくんおすすめの魔力・魔法関連の書物を読み始めた。


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 約2時間後。


「……まあ、これなら問題はないだろう」

「やっと終わったぜ……」


 勉強を始める前に険悪な雰囲気があったためまた言い争うんじゃないかと心配していたが、ケイレブくんは素直に分からないところをヒューゴくんに聞いているようだった。その度にヒューゴくんは聞かれたこと以上のことを答えては、途中で気付いて止めて、を繰り返していた。


「本当は満点取れるまでやりたいところだが、君の場合一週間くらいかかりそうだ。記憶力も不安だからそれ以上かもしれないけど」

「てめぇはいちいち一言多いんだよ!」

「……ふわぁ、終わったぁ?」


 喧噪をよそにベッドから欠伸をしながら起きてきたのはイーゴンくんだった。


「イーゴンくん、ずっと寝ていたんですか?」

「ぼくも本読もうとしてたんだけど、このベッド気持ちよかったから寝ちゃった!」

「ふふ、寝癖ついていますよ」


 ぴょんと横に跳ねた髪を手で撫でつける。あまり長い時間寝転がっていなかったからか簡単に元に戻る。


「……いいな、」

「? レオくんは、勉強捗りましたか?」

「え、あ、はい。軽く見返して次の授業のあたりも予習しました」

「それならよかったです! ……では、休憩したのち、実技棟に移動していてください。わたしはルカ先生を呼んできますね」


 供給室を後にして職員室へと急ぐ。

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