Mission 008 ミッション、その素顔。


 ――初のミッション! 駆ける大地と、逃げる男子との追跡劇。



 それも学園内。学園内こそが僕らの新たな舞台。新たなだけに新校舎で、その男子は階段を駆け上がる。僕は追う、息が切れることなく余裕綽々な具合。僕だけではなく……


千歳ちとせ、屋上の方へ追い込むよ」


「うん、菜花なのか


 と、僕らは足並みを揃える。息もピッタリに横並びで駆け上がる階段。


 廊下は走っちゃいけないと、先生方は言うけれど、その男子が手掛かりを持っているというのならば、ミッションのためだ。僅かな間だけでも許してほしいの。屋上に出るならデンジャラスと考えられたのだけど、例えば僕らが追い込んで、その男子が飛び降りたのなら……と、そんなイメージが過ったけど、その点は大丈夫と、りんは言っていたから。


 なぜなら、今時の学園では、

 屋上は封鎖されて入ることができないから……


 切なる願いとも聞いた。とある先生の願い……凛の担任の先生が、まだ生徒だった頃に実現したことだったから。いじめを苦で、屋上から飛び降りる生徒がいないようにと。


 僕らは、救う立場の人。


 今はそのことに夢中になりたいから。


「いい顔してるよ、千歳」


「菜花、ありがと。僕は生きてるって感じがする」


 情報屋のミッションは、そうなの。そこで何かを見出せそうな感じ。僕が殺人マシーンでなくなる場所。……込み上げるものは、涙? ちょっと泣きそうになったけど……


 今はミッションの最中。でも冷たい感覚ではなく、このまま温かくホットでいたい。幸いにして今は放課後。他の生徒を巻き込む心配はあまりなく、そのまま追いかけっこは続く。持っているのはマカロフという銃。だけど、もう弾はなくなった。ここに来るまでに使い果たした、組織から逃亡する最中にすべて。ここでの弾は、殺傷能力はない……



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