第三話 【千歳サイド】……九月の空。

Mission 007 青く広がる、その世界。


 ――息苦しさを感じる密室。それは、お外の世界を見て知ったから。



 今日もまた、地下から地上へ上がる。二人一緒、これからずっと……安心感を覚える鏡で見るような、僕の分身。僕の双子の姉、菜花なのか。学園内にある芸術棟の地下が、これより正式に僕らの住処となる。これまでは僕の療養のためにあった空間が、生活の場へ……


「安全を考えての処置だよ、千歳ちとせ。……もう一人にしたりしないから」


「ホントに? 見捨てたりしない?」

 と、覗き込む。或いは食い入るように、菜花の顔を見る。


「見捨てるわけないじゃない。ずっと一緒、ミッションの時もスタディも……そして死ぬ時も一緒と決めてるじゃない。僕らを追跡してくる組織も、いずれ僕らを見付けて始末するけど……一緒だから。千歳だけじゃないから。来世もまた、姉妹だから」


 精一杯の言葉と悟る。菜花の言葉の裏も。


「地獄でも? 僕らは殺人マシーンだから」


 一時の慰めでも救われると思うも、それが現実。僕らは……


「殺してないよ、誰も。そしてこれからも。明るくなるよ、情報屋の人たちは皆いい人だから。僕らも明るい組織に身を置くのだから。もう忘れよ、過去は……」


 ギュッと抱きしめる菜花。温かさを覚えた。鼓動を感じないはずの心臓の鼓動を感じたから……左側にはない心臓。僕らは右側に心臓がある。人とは真逆の臓器の位置。


 ある人は、ロボットとも言っていたけど、

 僕らは人間と、胸を張って言える日を迎えられそうな気がしたから。


 そして地上には、りんの姿があった。


「グッドモーニングかな? それとも、おはよう? 昨夜は眠れたかな?」


 と、声をかけてくれた。爽やかな朝を感じさせてくれる凛。――そして案内してくれたのだ。校内と、職員室と。今日から僕らも、この学園の生徒となった。中等部の一年三組というクラス。僕と菜花は同じクラスだから、きっと大丈夫。この初ミッション。



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