第二話 ……菜花。

Mission 004 一人称は、やはり僕。君もまた。


 ――僕と同じボクッ娘。君は今から、一人称は『僕』だから。そう告げた。



 エンジェルリング輝くストレートな長い黒髪。和風な印象を思わせる顔も今日限りの今この時まで。君……千歳ちとせと会えたのだから、もう、変装の必要がなくなった。


 素顔を晒しても、もう大丈夫。


 栗色のボブ。青い瞳に色白で……僕らは、身を明かせば危険な立場にある。現に千歳は命を落としている一度。凶器のサバイバルナイフによって。……僕は捜している、その犯人。そして、その組織に辿り着き壊滅するまで。僕らが未来に向かうために、盗まれた過去を取り戻すそのために。千歳はこの地下室で生き返った。


 それは時として僕もまた同様。特別な体だから成せた業。実は、この間までは僕も知り得なかったことだった。通常の人間と真逆の位置に、心の臓を始めとしたその他の臓器がある。だから左に鼓動はなし……ということだった。そして命を分け合うことができた。


 一卵性双生児であるが故、同じだったから。


 血液のタイプ。手術は、傷一つ残さない程、精密な精度で成し遂げられたから。


 そして今、この僕、菜花なのかと……

 僕と瓜二つの精度を持つ千歳が、再び手を取り合ったから、またここから再開。


 二人揃うなら、地上最強のエージェントとなるのだから。


 地下室を出て、地上へと二人揃って出でるその様は、地より湧きたる使命の人。そこは学園内。芸術棟と呼ばれる三階建ての、僕らの構える拠点。


 なら、何を求める?


 復讐の道か、それとも救護の道か。……僕はもう決めていたから。きっと千歳とは真逆の思想かもしれないけど、僕は何があっても殺さない。殺人は犯さない。もしも殺したのなら、その人の未来を奪うことになるから。そんな権利は、何があってもないの。


 だから賛同した。この学園で極秘裏に暗躍する組織。


 千歳とはパートナーとなる。まずは、この子の殺意を消すためにも……



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る