Mission 003 生への執着には、やはり地上へ。


 ――軋む音。確実に、こちらに近づく気配。その息遣いは美路みちとは違っていた。



 自分のいる地下室への侵入。誰? 誰だ? 息を殺して、構える銃のマカロフ。そして思考が走る。――殺らなきゃ、こっちが殺られる。物陰に身を潜めながら、チャンスを窺う。飛び掛かるチャンス。そして逃げる。ここから、できるだけ遠くへと。


 さっきまで自分が眠っていたベッドを中心に、何やら最新型の機器が並べられているような趣。どこぞの秘密結社のアジトみたいな……もしかしたら、自分はここで……


「ねえ、いるんでしょ?」


 と、声も聞こえ、その姿も確認できた。


 益々怪しい。見ない顔だ。エンジェルリング輝くストレートな長い黒髪。和風な印象を思わせる顔に、そのフォルムまでも。制服らしき恰好は、この場所と関係するのか?


 自分が十二、十三歳なら、この少女も同い年くらいだけど、……じゃあ、どうして殺気を感じる? 明らかに自分を狙っていると、働く自分の研ぎ澄まされた勘。


 ――踏み出す。そして宙を舞う。


 宙返りしながら体制を整え、その少女の背後を取る。頭部に銃を突き付け「動くな」との一声を加えて。でも、その少女……「いきなり物騒だね、千歳ちとせ」と、笑みを浮かべなら言うから、「何者だ貴様? 妙なことしてみろ、ぶっ殺してやる」と、震える声で。


「フフフ……君には、僕を殺せないよ」


 何だ? この少女、自分のことを僕と言っている。女の子なのに? すると予期せぬことが、その直後に驚くべきことが……見せた、素顔。長く黒い髪も、和風な印象を思わせていた顔も、偽りだった。変装だった。なぜ変装する必要がある? それどころか、それ以上に同じだった。「そうだよ。君もまた僕だから。同じ特別な体を持ってる……」


 まるで鏡を見ているような感じだ。瓜二つと言っても過言ではないほど。


「僕は菜花なのか。もう一人の千歳。そして千歳は、もう一人の僕だ」


 と、……菜花と名乗る自分と瓜二つの少女が、自分を……僕を地上に招いたのだ。



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