Mission 002 夜の静寂に宿は、やはり地下室。


 ――ここが今の住処。眠りの場、寝室ともいう。無駄な動きはなしにしたい。



 何時ぞやか、また銃を取らなければならない時が訪れる。形見離さず持っている唯一のもの。それが獲物という名の武器。マカロフ……それだけが保身となる切り札。


 そして、この身を証明する唯一の手懸りかも?


 そして繰り返される夢……


 あの時の、記憶の糸が再び。痛みを伴う記憶。焼けるお腹の中……


 サバイバルナイフが深々と、お腹に刺さる場面。断末魔と共に……自分は、きっとあの時、死んだ。抉られるお腹と、流れる血の中で。でも何故? 今は無傷のお腹。どの様にして今この場所にいるのか? 地より湧きたる時を待っていると、美路みちは言っていた。


 そこにはいったい何があるのか?


 グルグル回る脳内、痛みを伴いながらも起き上がる上半身。血は流れないけど、嫌な汗は流れる。乾く心は、地獄を見た証拠というのか? 涙も、迂闊に流れていた。


 戦場には無縁の涙……

 枯れ果てた筈の涙……


 ミッションを遂行する、それだけの道具のはずだったのに。


 身が震える程、居た堪れない感情とでもいうのか、……怖い。死にたくない。その単語たちが脳を支配している。それでも鼓動しない心臓。自分の体がどうなったかさえも。


 ――千歳ちとせ


 その名前も自分のものなのか? 自分のことなのに何もわからない。


 そしてまた、落ちる……


 意識の向こう側。喩えるなら暴走の果てに、シャットダウンするPCのように。もう何回目だろう? ここに来てから……それでもまるで時が止まったかのような場所。であるなら、地より湧きたる時、自分は、自分を殺した奴を必ず捜し出して、そしてこの銃で殺してやる。その意味が何か? この時から自分の中で動き出した目標。或いは執念だ。



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