地より湧きたるエージェント。

大創 淳

第一話 ……千歳。

Mission 001 雷轟く雨の日に、蠢く都市伝説。


 ――例えば、ここ。とある学園の知られざる地下室。白い光に包まれていた。



 その中で目覚めた。その眠りは三万年に匹敵するほど?


 いや、もっと刹那的なもの。


 痛みは、……存在する。腹部に。激しく刺されたような感覚は残るけど、何の痕跡もなく血の匂いも消えていた。……何があったの? 記憶の片隅へと辿る辿る。


 そこで起きる頭痛。


 記憶の糸は、そこで消える。幾度も。それは繰り返されている今この時さえも。気付けばここにいた。自分は何者なのか? まずは、それを知ることから始まると思う。


  見る容姿。今が一番ナチュラルと思われる時だから……


 髪は栗色でボブと呼ばれる形式。瞳の色は、青い。それに伴って色白……なら、この国の人種ではなく異国とも思われる。その前に身長は、多分小柄。百四十未満で体重は謎のまま。ここには……あった。これに乗れば、もっと詳しく……その結論は内緒だ。


 決して太ってはいないの。軽やかな身のこなしに必要な体型。それは確かなの。


 身に着けているものは……


 迷彩色。緑のやや薄型……黄色と黒に近いように思われる。それに血の跡。返り血ではないような? 記憶の断片から分析するなら、サバイバルナイフで刺されたような、そんな穴が腹部に開いている。でもそれが、脳内を掠めただけで起きる頭痛……


 すると聞こえる、軋む音。地上から、ここまで。


「よお、元気そうだな、良かった良かった」


 と、迷彩服を着た女性が様子を見に来た。どうもこの建物の管理者のようだ。中村なかむら美路みちと、その女性は名乗っていた。激しい雨音が外から聞こえる? 外は雨なのか?


「大雨だよ、急に降り出してな。ほれ食料と着るもの買ってきた。シャワーしてから着替えな。千歳ちとせ、そうだな、まだそれしかわからないな、お前が女の子という以外は」


 自分の一人称が解らずに名前は千歳。自分が十二、三歳の女の子という以外は。



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