3・彼女との繋がり
感想は主観で書かれるもの。
だから受け取り方は様々で、感じ方や解釈も様々。
その上で自分が感じたことが作者へ向けて放たれるのだ。
だから解釈が違えば、”そんな意味ではないのにな”と思ったとしても、なかなか反論出来るものでもない。
彼女はそれを受け止め傷ついていた。
悪いのは自分だと思い込んでしまうのが作者。自分がちゃんと伝えられなかった、表現できなかったせいだと。
───
あれは、感想なんかじゃない。
webにはたくさん、感想企画を行っている者がおり、彼女はそこへ参加をしていた。有名な大型SNS、
SNSとは、ソーシャルネットワーキングサービス(Social Networking Service)の略で、登録された利用者同士が交流できるWebサイトの会員制サービスのことである。
企画へは気軽に参加できる。そのため当然ながら良い点ばかりではない。顔が見えないことにより、言葉が辛らつになることもある。
見えない相手だからと言って、何でも言っていいわけじゃない。中には批判と暴言の区別がつかない者もいる。勝手に書かれるレビューや感想と違って、企画というのはまだ相手が分かるし、評判を知ることもできるだろう。
しかし評判が良い=自分に合うとは限らない。
もちろんそれはリアルでも同じだが。
「
じっと入口の方を見ていると、それに気づいた男子学生に問われる。
和宏は、チラと彼に視線を移しただけで、
「いや」
と短く返答した。
再び入口に視線を戻すと、彼女と目が合う。
『なあ、もしかしてこの人?』
相談を受けたあの日、
『え?』
彼女の作品に、作品否定とも受け取れる酷評した人物は容易に予想がついた。その人物は、以前からそこそこ有名だったのだ。
──── 基本的に人は主観でものを語るものだ。
もし自分の好みでないものだったなら、評価が厳しいものになることもあるだろう。SNSで活動している人の大半は素人。
客観的かつ公平に評価できるのは、そうなるように意識している者に限ると言っても過言ではないのではないだろうか?
『作品、見せてくれる?』
傍でじっとしていた彼女にそう声をかけると、少ししてURLがDM(ダイレクトメール)に届く。
『ありがとう』
不安そうにこちらを伺っている彼女に笑顔を向けると、とても驚いた顔をされた。和宏はそんな彼女に肩を竦める。
一度でも感想やレビューで誹謗中傷されてしまうと、相手の反応が怖くなってしまうものだ。中には、アドバイスと受け止めて対応しようとする人もいるだろう。
しかし誹謗中傷や作品否定は、感想ではない。
和宏はため息をつきながら、作品のあらすじに目を通したのだった。
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