レベル24

「なんだ、この巨大な戦艦は・・・

 私の愚策がテロリストどもにこんなものを作らせたというのか!?

 だが、むざむざ特攻などしてなるものか。

 勝負はまたもやお預けだな。

 ローズキャッスルで待っているぞ、かわいい坊やたち」


薇雪は先頭空域を緊急離脱して居城へと帰ってゆく。

燐たちもあとを追おうとするものの、もはやそんな余力は残っていなかった。

意識が朦朧としてゆく中で、燐たちを救出に来た仲間たちの声が

かすかに聞こえるのだった。


・・・燐が目を開けるとそこは薄暗い部屋のベッドの中だった。


「そうか、俺は気を失っていたのか・・・」


燐の頭に戦闘の記憶が蘇る。

初めての戦闘、人殺し、死の恐怖。

あらゆる記憶が苦しみとなって燐に襲いかかる。


「ぐあああああああああっ」


燐は頭を抱えてうめき声をあげる。

すぐさま電気が付き、司令官と副官がやってくる。


「だいじょうぶかね、燐くん。」


「あ、頭が・・・」


「だいじょうぶよ燐、戦闘を経験した人はみんなそうなるの。

 しばらく横になってれば落ち着くわ。

 睡眠薬でも飲む?」


「く、薬はいらない。

 甘いものを飲ませてくれ」


「そうね、すぐ取ってくるから待ってて」


そういうと副官は足早に部屋を出てゆく。

副官を見届けると司令官がこほんと咳をして喋り出す。


「燐くん、同志である照くんの処刑は中止が決まったと密偵からの報せが入った。

 どうやら我々をおびき出すためのデモンストレーションだったようだ。

 しかし我々の秘密兵器がバレてしまった以上はのんびりしてもいられない。

 我々はこのまま夜間戦闘へと突入する。

 我々が勝利するためにもきみの協力が必要だ。

 つらいとは思うが、わかってもらいたい。」


「もちろんです。

 ヨロイダンを与えてくれたんだ。

 絶対に戦い抜いて照を救い出し、解放軍に勝利をもたらしてみせます。」


「ありがとう。きみは我々の、いや人類の英雄だ。」


「はい、甘いココアよ。

 これを飲んで体をやすめてね。」


ココアを持って入ってきた副官が燐に手渡す。

そして、二人は部屋を出て行った。


「副官、燐の容態をどう思うかね?」


「おそらく過密なVR訓練の影響でしょうね。

 かわいそうな、燐」


「ああ、だが我々の勝利には彼の力がどうしても必要なのだ。」


「ええ・・・」


そして、空中要塞戦艦龍王号はゆっくりと進み続けて

ついに薇雪の待ち受けるローズキャッスルへと到達した。

艦内は戦闘警戒アラームが鳴り響き、戦闘員たちが持ち場へと着いてゆく。

燐と滝も体を引きずりながらもハンガーへとたどり着き、

ヨロイダンに乗り込み準備を終える。

薇雪と燐の因縁めいた戦いの最終決戦が、そして

ボーズシティと解放軍の全面戦争が今始まろうとしていたのだった。


レベル25につづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る