レベル21

 「あああああっ」


手足を縛られた照が薇雪に鞭で打たれて悲鳴を上げる。

薄い衣服はボロボロに裂かれ、柔肌はまっ赤に腫れていた。


「ハアッハアッハアッ・・・

 ちっ、気絶してしまったか」


薇雪はイライラしながら毒づく。

牢のドアが開く。


「薇雪様、閣下からの通信が入っております」


薇雪が玉座に着くと巨大モニターに閣下と呼ばれる男の顔が映る。


「薇雪君、市民区画を爆撃したそうだがやりすぎではないかね?」


「閣下が甘い顔をしてるからテロリストの奴らは図に乗っているのですわ。

 IDもハッキングされてエコポイントが形骸化しているとも聞いていますのよ。

 でもテロリストの一味と思われる女を捕まえたので

 アジトが判明するのも時間の問題ですわ。」


「まあ、お手柔らかに頼むよ。

 下層市民にも下層市民なりの役割があるのだからね。

 誰が君にその地位を与えたのか忘れないことだな。」


「もちろんですわ、閣下。

 どんなネズミでも秩序を乱すなら捕まえるまでですわ。

 どんなネズミであろうともね」


薇雪は冷酷な瞳の奥に炎を燃やすのだった。


「オーロラビジョンの用意をしろっ」


薇雪が部下に指示を出すと放送の用意をする。

竜京駅周辺の上空に薇雪の顔が大きく映し出される。


「聞け、ボーズシティーの治安を乱すテロリストどもよっ。

 私の元に投降しないなら、この女を公開処刑してやろう。」


薇雪が隣にいる照を引き寄せる。


「どうだ、見覚えがあるだろう。

 この女がお前たちの仲間だということはわかってるぞ。

 猶予は3日だ。

 3日後、おまえたちが来なければこの女の命は儚く散ることになるのだ。

 おまえたちが見殺したことによってな。

 はーはっはっはっはっはっ。」


テロリスト基地内では全モニターにこの光景が映し出されていた。

司令官の豹竜がアナウンスをする。


「敵は本気のようだ。

 ダイヤモンドアタック作戦は3日後に決行する。

 我ら同志を助け出し、自由の旗を上げようではないか。

 各自、最後の調整を行ってもらいたい。

 皆の力で暁の地平線を我らのてに取り戻そう!!」


「おーーー!!」


と基地内で歓声が轟く。

放送を終えた豹竜が副官に質問する。


「燐と滝の訓練はどうなってる?」


「順調に進んでますがやはり時間が足りないようですね」


「仕方がない。

 何としてでも急がせるんだ。多少手荒な真似をしてもかまわん。

 VR密度を上げて頭に可能な限り叩き込むんだ。」


「しかし、それでは彼らの安全が・・・。」


「この作戦の成否は彼らの、いや燐の覚醒にかかってると言ってもいいだろう。

 悔しいが、彼らの未知なる力に頼るしかないのだ。わかってくれ。」


豹竜は深々とイスにもたれると目を閉じるのだった。


レベル22につづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る