レベル17

<佐藤さん、佐藤さん、女子高生の娘さんが迷子になっているので

 放送の塔までお越しください>


駅内に設置された吹き抜け大ホールの放送タワー。

お金さえ払えば誰でも自由に利用できる。

しばらく待つと、

現れたのは自称佐藤さん5人。

この中に本物はいるのだろうか?

相手も警戒してるはずなので、けっして自分からは名乗らないだろう。

燐と滝で当てるしかないのだ。


5人が横一列に並ぶ。

左から

一人目はジャージ姿のスポーツマンタイプの男。

二人目は霊媒師風の年増女。

三人目は競馬新聞を持った中年男。

四人目は高校の制服を着た男子。

五人目は和服を着た女。


これだけではわからない。

とりあえず話を聞いてみる。

ジャージ佐藤は


「ハアハアッ、女子高生はどこだ、女子高生を出せっ」


と息巻いている。

よく見たら股間も心なしか膨らんでいるように見えた。


霊媒師佐藤は


「あなたたちの後ろに女子高生がいます

 女子高生が泣いています

 今なら特別料金でお祓いしてさしあげますわよ」


と商談を持ちかけてきた。


競馬佐藤は


「万馬券当てたら娘と嫁が帰ってきてくれる約束なんや

 次こそは必ず当てるから合わせてくれ」


と泣きついてきた。


学生佐藤は


「僕には娘はいませんが姉がいます

 きっと姉のことでしょう」


と礼儀正しく述べた。


和服佐藤は


「私には悪い男と逃げた弟子の娘がおります

 その子のことじゃないでしょうか?」


と、儚げな瞳を潤ませた。


「おい燐、わかったか?」


「ぜんっぜん見当もつかねー

 滝はわかったのかよ?」


しばらく考え込んで滝が口を開く。


「ああ、おそらくな」


「なんだって!?」


「難しく考える必要はないんだ

 相手にはこっちを騙す意図はない

 必ず本物とわかるメッセージを込めてるはずだ」


「なるほど

 それで誰なんだ?」


「本物はこちらを案内するのが目的だ

 女子高生に合いたいわけじゃない

 この中で一人だけ提案を持ちかけてきた

 あなたが本人だ!!」


ズババババーン!!


と本物を指さす滝。

その人物とは、

なんと、


二人目の霊媒師の女佐藤だった!!


「ふふっ、お見事ね

 なかなか見どころのある坊やたちだこと」


燐たちはついに案内人と接触を果たすことが出来たのだった。


レベル18につづく

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