レベル6

 燐が拳を握りしめる。


「おもしれえじゃねーか

 警察にたてつく奴なんか初めて見たぜ

 どうせこのままここにいたって何も変わらねえんだ

 俺はあのかわいこちゃんに賭けるぜ」


「動機はともかく

 あの少女が実に興味深い存在であることは確かだ

 俺もその賭けに乗るとしよう」


 その少女に薇雪が近づき警察用IDビューワーで額のデータを読み取る。


「・・・河原崎かわらざき てる17才

 平凡な家庭に生まれて、現在は星見学院に在籍中

 成績も平凡な一般女子生徒ねえ

 確かにデータ上には問題が見当たらないようだが

 銃の購入履歴が記録されていないな

 おそらくここに登録されている内容も全てが嘘

 当然エコポイントも嘘」


 ピシイィィィィィ

 鞭を握った手に力がこもると思いきり床にたたきつける。


「くっくっく

 ボーズポリスの監視網をくぐってデータの改ざんが行われているという噂は

 聞いていたがまさか事実だったとはな

 だがおまえのようなガキに何が出来る?

 おまえたちを操っている黒幕がいるはずだ

 念のため質問するとしよう

 すべて白状すればおまえだけは助けてやろうじゃないか?」


 薇雪の瞳が怪しく光るが照は黙ったまま口を開かない。


「いいねえ、この理想的なシチュエーション

 まさに私の人生はこの一瞬のためにあると言ってしまおう

 くっくっく

 女の真の喜びをその体に刻み込んでやるわっ」


 薇雪の無機質に光る鞭が照のおっぱいめがけて唸りをあげる。


(いやっ・・・)


 どんなに強がろうとか細く震える女の子である。

照の顔が恐怖に引きつり強く目をつぶる。


ビシイィィィィィィ!!


空を裂く音に照の体がこわばる。

一瞬痛いと思ったもののいつまでたっても鞭の感触がない。

恐る恐る開ける目に飛び込んできたのは

薇雪の元へと駆けつけてくる警官二人組の姿。


「どけどけどけどけどけーーーーー

 大変だ大変だ大変だーーーーーー」


「ショーの邪魔をして何事かっ」


 狙いが外れて床を打った鞭を手に戻しながら薇雪が怒鳴る。


「隊長、爆弾を発見しましたっ

 まだたくさん設置されています」


「なんだと!?」


警官の一人が何やら電子基盤のような物を見せる。

そのとき煙が立ち込めてきて、周囲の警官たちと客たちに動揺が起こり騒ぎ始める。


「みんな逃げろーーー」


そこに2人組の警官が誘導するように大声で危機感を煽る。

その作戦は見事にはまり客たちが出口めがけて走り出し、

それを体で防ごうとしていた警官たちも一人二人と逃げ始めた。


「バカ者共!うろたえるな!持ち場を守れ!」


薇雪は鞭で床を打ちながら部下たちを止めようとするも

一度動き始めた人の流れは簡単に制御できるものではなかった。


(・・・よし、今だ)


集団の混乱と立ち込める煙に乗じて、

2人組の警官が照の元へと駆け寄ると抱え上げようとする。

とうぜん照は警戒するが、

ヘルメットを脱いでウインクして見せると思わず安心してしまう。


そこに現れた顔は燐。

そしてもう一人は滝だった。


「ま、待て、勝手なことをするなっ」


突然起こった異常事態に戸惑う薇雪だったが威厳を保つため

指示を出し続けようとする。

そのときあるものを発見した。

それは服をはぎ取られてだらしなく寝転がっている2人の警官だった。


「おい、そこを動くなっ」


咄嗟に状況を悟った薇雪が照を抱える2人に怒鳴るがもう遅い。


「この子は俺たちが救出するので安心して始末書を書いてな!!」


「逃がすわけないだろっ」


薔薇雪が二人を追いかける。

それを見た燐が


「これでもくらいな、とりゃっ」


ジュースを薇雪の足元の床めがけて投げつけると

ステテコテーンと転び


「きゃあっ」


と悲鳴をあげて倒れてしまった。


「あら、かわいい悲鳴」

「よし、あそこの緊急脱出口から逃げるぞ」

「おうよ、しっかり掴まってろよ、お姫さま」


走りながら燐が照を背中におぶると柔らかい感触が

伝わってくる。


「お、なかなかあるじゃん」


燐は思わずにやけるのだった。


レベル7につづく

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