レベル4

「おいどーすんだ、こっち来っぞ」


「完全にこっちを怪しんでるな

 信念のこもった力強い足取り、警棒を握る荒々しい手つき、

 そして何よりあの一片の曇りのない職務に忠実な目つき・・・」

 

「つまりなにが言いてーんだ?」


「つまり、あの警官を方向転換させる方法は皆無に等しいというこだ」


「ったく役に立たねー分析だぜ

 ようするに丁重におもてなしすりゃいいんだろ?」


「まあ、そういうことだ」


警官がヒタヒタと近寄ってくる間に燐と滝の意見がまとまり

「いらっしゃーい」

と笑顔で手もみをしようとした丁度のことである


「いやー、やめてー」


IDチェックを受けていた離れのグループから女の子の悲鳴があがり

場の空気が騒然となるのがわかった

見ると、華奢な女の子の白いヒラヒラのスカートがのぼせあがった武装警官に

めくられそうになっていたのである


「ヘッヘッヘ、あの野郎もう警棒を伸ばしてやる気まんまんじゃねーか」


燐と滝に迫っていた警官はすっかり2人への興味をなくしてしまい

襲われている女の子のほうへとすっ飛んでいってしまった


「ふー、ひとまず助かったぜ」


「おい、あの女の子を放っておくつもりか?」


「んなこと言ったってどーしよーもねーだろ

 まあいいじゃねーか、パンティくらい見せてやってもよ」


「あの警官の小刻みに震える足取り、スカートを握る執念深い手つき、

 そして本能に忠実な血走った目、

 どうやらスカートめくりだけじゃ済みそうもないぞ」


「な、なんだって!?」


 燐が驚くのも虚しく滝の分析通り、息を荒げた警官が女の子の服を

力任せに引きちぎり始めた。

それまで見ていた女の子の仲間の男たちも、さすがに止めに入る。


「あ、あ、あんたらそれでもホンマに警察か!?

 いい加減にしとけちゅーんやでっ」


「いやーお願い助けてっ」


「や、や、や、やめろー」


それでもやめる気配のない警官に男が飛びかかるがその瞬間、

バリバリバリと感電する音と共に

男が倒れてしまう。


「公務執行妨害の罰だぜ

 ぐえーへっへっへ」


隊長はなにをやっている?

この部隊には規律というものがないのであろうか?

その女隊長


「わたしたちはボーズシティというこの閉鎖空間で日々激務に追われて

 ストレスをためているのだ

 おまえたち下層市民が社会の役に立てることに感謝するんだな」


などと、のたまう始末である

その場にいた客たちの間に言い知れぬ無力感が襲う

このサイバースペースには一時的ではあるが法も秩序もきれいさっぱり

消えてしまったのだ


 そのときである

燐の視界にある人影が目に入る

何やら警官たちの目を盗むようにしながら、客たちの合間をコソコソと動くその人影

一体何者か?

興味深げに、しかし警官たちには気取られぬよう目で追いかけていると

照明のきらめきが顔を照らし出す


「か、か、か、かわいいじゃねーか」


燐は思わず鼻息を荒げるのだった


レベル5につづく

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