■05: 分かたれし者たち(仮)

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エピソード「分かたれし者たち」の断片・プロット

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9月前半~11月

とある私立大学に潜入することになる渋谷チームの面々。


オカルト系の終末思想サークルによるテロ計画疑惑。

帝都大学の要監視サークルとの関係があるらしく、また理工学キャンパスから核物質やウイルスが盗まれたという情報も。

情報部は要監視サークルで手一杯。先日の裏切りもあり、情報部側の動きは敵に察知されやすくなっており、積極的に動けない状況。

むしろ、意図的に情報をリークすることで誘いだされている、という見方もできる。そのため、荒事が得意で独立して動ける渋谷チームが作戦に選ばれた。



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大学の後期開始に合わせ、彩乃たちは学生に扮し、潜入することになる。


彩乃は、サークル外の学内で情報を収集。サークル部員の友人・知人に近づき、部員と学外で接触することに。

ピンクのボブヘアーウィッグ、ストレートパンツ、レースのブラウス、ヒールサンダル、合皮のトートバッグ。


パトリシアは直接オカルトサークルに入部し、探ることに。

普段とは異なる装い。リストカットの跡だらけの義手に付け替え、チョーカーをロザリオ付きのものに。オーバーサイズの黒のシャツにショートパンツ、ピンクと黒のボーダー柄ニーハイソックス。ピッケルホルダー付きの量産型リュック、ハイカットのキャンバススニーカー、黒のキャスケット。

心の闇を抱え救いを求めている雰囲気を出して、相手の同情や共感を得ようという作戦。


猫澄は、写真趣味の学生を装い、調査に。

チュールスカート、オーバーサイズ気味のTシャツ、スポーツブランドのスニーカー、ラウンドフレームの眼鏡、ティアドロップ型のデイパック。ミラーレスカメラ。



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潜入捜査を続けるうちに、オカルトサークルによるテロ計画の内容が明らかになっていく。

11月に爆弾・ウイルスを使った破壊工作を行い、メンバーは自決する。終末思想に基づいたテロ。自分たちは終末に現れるという救世主のための露払い、その後の礎になるといった内容の論。救世主の助けとなることで、自らの罪と苦しみが消え、地獄から掬い上げられる権利が得られるという。

儀式やセミナーでオピオイドや大麻を少量使うといったことも行われていた。


さらには、帝都大学の要監視サークル経由で武器商人の紹介を受け、武器の調達を行ったことが判明。サークルメンバーの自宅でその大部分を保管していることもわかる。



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パトリシアは、とある女子学生と親しくなっていた。その学生「石見依瑠」は、大学3年の先輩で、心に傷を抱えていた。

あまりに急接近されたために、パトリシアは正体がバレたかと不安になるが、思い違いだった。

石見依瑠はパトリシアのことを“同類”と考え、近づいた。



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別件で、サークルメンバーの一人が逮捕されてしまう。

急遽、実行が前倒しされ、場所も大学のみになる。

準備はほとんどできず、部室のある建物と構内の数ヶ所に爆発物を仕掛けるだけに留まった。部室に武器を持って立て籠もる。

まだ、対外的には犯行は露呈していないが、間もなく仕掛けた爆発物が発見され、事態が発覚。

通報され警察が到着するのを待ち構えるが、警察は来ない。犯行をネット配信しようとしたが、すべての回線が繋がらなくなっていた。爆弾も起爆装置に携帯電話を使っているために、起爆できない状況。

トランシーバーだけはかろうじて使える。


不可視の対テロ特殊部隊の噂を聞かされていた学生たちは不安に駆られ動き出す。見るものすべて、聞こえる音すべてが敵に思えてくる。武器をバッグに詰め、遊撃に出る。

パトリシアを含めた何人かは部室に留まっている。女子学生が多い。



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キャンパス内で高い棟の上階に登るサークルメンバーと協力者たち。

機関銃を分解せずに収めた大きなバッグに訝し気な視線を送る学生もいるが、そこまで怪しいものとは思っていない。

キャンパスを見渡せる位置から銃を乱射する考え。

突然、狙撃を受ける。機関銃を持とうしたメンバーが倒れる。続いて機関銃本体にも弾丸が命中。


猫澄が別の棟から撃った。サークルメンバーたちが陣取った建物よりも高いが、キャンパス内で人通りの多い場所を撃つには、向いていない場所。

サークルメンバーたちのいる場所は、キャンパス内で高所からの銃乱射をするにあたって最も効率よく人を撃てるスポット。そこを猫澄はマークしていた。そのスポットを狙うのに都合のいい場所もリストアップしていた。

三十発弾倉を挿したMiniFixで、メンバーたちをその場に釘付けにする。



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爆発物を仕掛けたカフェスペースで人質をとる別の班。

拳銃と自動小銃を見せつけるように掲げ、威圧している。

サークルメンバーと協力者は、興奮・焦燥している。人質の女子学生を物陰で暴行しはじめる者もおり、他のメンバーはそれを止める余裕すらなかった。遠くない未来に訪れる死神への恐怖と、それを撃退してみせようという緊張。

すでに当初の目的を忘れ、テロリストどころかただの暴力集団と成り下がっている。


他の場所での爆弾解除を終え、忍び込む彩乃。

陰で暴行を受けている学生をまずは助けようと考えた。

暴行を加えるサークルメンバーの背後から近づき、小型の.22口径拳銃を突きつける彩乃。後頚部に二発撃ち込み、横に寝かせ胸に二発。

襲われていた女子学生を半ば脅す形で落ち着かせる。


ゆったりとサークルメンバーたちの前に姿を現す彩乃。あまりの自然さと堂々さに、殺気立っていたサークルメンバーたちも呆気に取られている。

彩乃の手に握られた拳銃を見て、一斉に銃を向ける。

警察だろうが自衛隊だろうが学生を殺せるものか、と言うリーダーらしきサークルメンバー。彩乃は、警察でも自衛隊でもないから殺せる、と告げ、容赦なく撃つ。

それを合図のように、サークルメンバーたちは撃ちはじめる。

彩乃は、人質や人通りのある建物外へ射線が向かないように位置取りながら、サークルメンバーたちを倒していく。

生き残った一人が、武器を捨てて逃げ出す。彩乃はそれを追わずに、武器を使用不可能にしてから、現場を後にした。



――

部室。

トランシーバーから聞こえる襲撃の様子。

ストレスに晒され、泣き出すメンバーもいる。


遊撃に出ていた男子学生が一人戻ってくる。腕から血を流している。


その姿を見て、糸が切れたのか、メンバーの一人が錯乱し、即席爆薬を抱える。その女子学生は、白リン迫撃砲弾にプラスチック爆弾を張り付けた粗雑な爆弾で自爆しようと試みた。しかし、パトリシアに雷管とコードを引き抜かれ、不発。

自爆しようとしたメンバーはパトリシアに拘束され、パトリシアは彼女を人質に室内のサークルメンバーたちに降伏を迫る。パトリシアは、もう自身を偽る必要はないと考え、制圧に動くことにした。しかし、人質は別の学生に撃たれてしまう。

撃ったのはパトリシアと親しくしていた先輩「石見依瑠」。彼女は部屋の隅で泣くメンバーや負傷したメンバーを撃ち、止めようとしたメンバーにも銃を向け、撃った。

「意外と中るものね。練習したかいがあったかしら。こんなに簡単なら、もっと早くやっておけばよかった」

そのあとで「みんなで一緒に死のうね」とパトリシアに笑いかける。こんなつまらないことに巻き込まれたのは残念だけれど、と付け加える。


パトリシアは隠し持っていたカランビットで依瑠を刺す。鳩尾へ、突き上げる一撃。

依瑠は「やっぱり……あなたはわたしの天使さまだったんだ――」と言い、息絶える。

ほんの少し運命の歯車の噛み合わせが違っていたら、パトリシアと依瑠は共に戦う仲間か、あるいは今とは真逆の立場だったかもしれない。



――

事態は鎮圧。

過激なカルト集団が、集団自殺に一般学生たちを巻き添えにしようとした、というシナリオとして対外的には処理された。


しかし、盗まれたとされるウイルスの行方は掴めずにいる。盗難の実行犯の学生も逃亡を許し、その後遺体となって発見される。追跡していたエージェントも行方不明となり、数日後に遺体が見つかっている。

ただの終末カルトかぶれのサークルに過ぎなかった彼らを、テロ計画へ加担させた黒幕へとつながる有力な情報は得られずに終わってしまう。


テロ自体は防げたが、解決していない問題や新たな問題が出てきた。ある意味では何も解決していない。

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