■09~14

EP9「ガンスリンガーガールズ」

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4月

パトリシアが配属されて一年。チームに新しいメンバーが加入する。

「石森莉瀬」という名の20歳。

関西の支部の人質救出部隊に所属していたが、問題を起こしたために渋谷チームへ転属される。

石森本人は、渋谷チームには女性しかいないため「そういう任務」専門のチームと勘違いしている。そうした理由から、物憂げな様子。

実動が彩乃や猫澄の任務が続いたこともあって、石森は勝手に勘違いを深めていく。


そんななか、強襲任務の依頼が入る。

パトリシアは傷が癒えきっておらず離れた位置からの支援につくことになり、蜂須賀がパトリシアを補助する。彩乃と猫澄、そして石森が突入要員。

そこで彩乃たちの実力を見て、考えを改める石森。ここでならやっていきたい、やっていけるかもと思い始める。





EP10「Lighter as a Feather」

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護衛任務の途中で、重武装の強盗事件に巻き込まれる彩乃とパトリシア。まったく関係ないと思われたが、実は強盗に見せかけた暗殺計画だった。

さらには別の武装集団も現れ、大混乱。彼らの目的も暗殺で強盗犯たちと同じ目標を狙っていた。

猫澄と石森も合流しようとするが、その途中で、護衛対象が強盗たちの依頼主であることが判明する。

猫澄と石森は2つの勢力から命を狙われる謎の人物を成り行きで保護することになる。

混迷を極める現場に、警察の部隊まで介入する。

ターゲットの男性は、猫澄と石森にノートPCを託し、警察に保護される。

強盗と武装集団の生存者も逮捕される。


ノートPCは解析に回される。PCには先日のテロ事件の際、行方知れずだった最後の特殊弾頭の所在と、生物化学兵器のシミュレーションデータが記録されていた。





EP11「雲と水着と湯けむりと」

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8月

渋谷チームは、群馬県のゴルフ場跡地の施設に合宿と休暇を兼ねて訪れる。

合宿所の近くには温泉地や観光牧場もあり、ささやかながら観光も楽しもうと計画を立てる。


合宿所内でもプールに入ったり、狙撃で的当てをして奢りの賭け事をしたりと、どちらかというと遊んでいる。真面目なパトリシアと石森は、これでいいのか、と言いながらもまんざらでもない。

その渋谷チームの様子が気に食わない同じ時期に合宿所に来ていた別のチームといざこざが起こる。模擬戦をすることに。


模擬戦で他のチームを圧倒する渋谷チーム。結果に不満のある相手チームは彩乃を除いて再戦することを希望する。

彩乃抜きでも勝つ渋谷チーム。



近場の温泉地で疲れを癒す渋谷チームの面々。貸し切りにして、傷痕だらけのパトリシアが一般客に気を遣わないようにする。


最終日は観光牧場で一日を過ごす渋谷チームの面々。

都会の喧騒と、仕事のことを忘れられるよい機会になり、チームでの思い出もできる。





EP12「アウトロウ」

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銃撃事件が発生。その事件に巻き込まれ、渋谷チームが狙っていた暗殺対象が死亡してしまう。

使用された銃器は、最新の軍用銃だった。

そして、銃撃事件の被害者の一人はデイパックいっぱいの現金を所持しており、数週間前に発生した強盗事件の実行犯だと判明する。





EP13「全境封鎖」

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12月

未知のウイルスによる疫病の流行。爆発的に感染が拡大。

きっかけは強盗事件で奪われた金がそのまま戻ってくるという、国内で多発した奇妙な事件だった。紙幣に病原体が付着させられていた。


混乱する社会情勢の中、武装勢力が各地で行動を開始する。

渋谷チームも対応に駆り出される。

市民を人質にとる武装集団を倒すが、間もなく近くの建物から煙が上がる。

次から次へと問題がやってくる。



――

同日

KGロジスティクス社も作戦に駆り出されている。「組織」のフィールドエージェントと、居合わせた制服警官と協力することに。

光莉たちは、火炎放射器を装備した奇妙な武装集団と対峙する。

壊滅するKGロジスティクス部隊。光莉は廃ビルに逃げる。そして、敵を誘い込み、自爆する。



――

消耗する渋谷チームに、鞠乃配下の部隊が攻撃をしかける。

20人超の部隊。半数以上が全身を防弾装備で固めている。数基のドローンが上空から観測している。

彩乃はチームを離脱し、鞠乃を一人で追うことにする。彩乃には妹の行き先に思い当たりがあった。





EP14:最終話「スノー」

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12月

蜂須賀の助けもあり、敵の精鋭部隊の襲撃から辛くも脱出することのできた渋谷チーム。

しかし、猫澄は被弾してしまっていた。逃走に使った車両も弾丸を受け、機能を失いつつある。そして、逃げ切るには道路の状況もよくなかった。事件の発生で、多くの車両が乗り捨てられ、道を塞いでいる。


猫澄は腹部の銃創に止血剤と生理用品を挿入して、応急処置代わりにする。本人は内心助からないと思っているが、パトリシアと石森の手前なんともないように振る舞う。

一息つくが、すぐに敵の追跡班が現れる。ITISデバイスを追跡されているだけでなく、ドローンや対人レーダーで探知されている。

渋滞したまま人の去った渋谷の交差点で、交戦することになる石森と猫澄、パトリシア、蜂須賀。

敵の追跡班を殲滅したタイミングで、猫澄はパトリシアに彩乃を追うように指示する。

離脱したパトリシアは、セーフハウスで足を確保し、バイクで彩乃のもとへ向かうことにする。


パトリシアが現場を離れてまもなく、16人ほどの敵部隊が到着する。

数名のレベル4防弾で身を固めた重装兵や、駅舎の低層階の屋上に狙撃手の姿も見える。


蜂須賀は、車両から回収したGM6 Lynxで重装兵を撃破するも、重点的に攻撃され、抑え込まれてしまう。

立ち往生した自動車群に身を隠し、後退しながら戦う猫澄と石森。

しかし、猫澄は限界を迎え、動けなくなる。石森は、猫澄のそばで抗戦する。

歩くことはままならなくなったが腕はまだ動くと、言葉多めに銃を撃つ猫澄。それもいつしか消え、猫澄は死亡する。

蜂須賀のバイタルサインもいつの間にか消失している。

1人きりになった石森。恐怖に目の前が真っ暗になり、無意識に銃口が己を向く。その希死を振り払い、敵に立ち向かう。

が、敵は半数近くが健在で、ほどなくして石森は倒れる。



――

東京市部。

彩乃と鞠乃のかつての住まいがあった地域。家の近くの公園を彩乃は訪れる。雪が舞う中、鞠乃が一人でぽつんとベンチに座っている。傍らにはビニール袋や紙袋。


シャンメリーを姉に勧める妹。

取り留めのない会話。短い間だが、姉妹の時間がある。

鞠乃は市販の花火を袋から取り出し、遊ぶ。

それが終わると、鞠乃は彩乃に拳銃を向け、自分を殺すよう頼む。殺さないのならあなたを殺すと告げ。


「断る」と言いつつも、彩乃は鞠乃を拳銃で撃つ。弾倉の弾すべてを“妹”へ撃った。絶対に生き残らないように。


ベンチに座る彩乃。その腹からは血が滲んでいる。鞠乃の撃った弾が中っていた。

煙草を咥え、火を点ける。火と煙が、舞う雪に溶ける。


そこへパトリシアが辿り着く。全身ボロボロ、返り血が金色の髪を染めている。

やっと見つけたと、彩乃へ駆け寄るが、彩乃の様子を見て動揺する。

彩乃は「やっぱりわたしはツイてるな。最期にパトちゃんと会えるなんて」と笑う。

冗談はやめてくれ、と傷を見せるよう促すパトリシア。強引に服を捲ろうとするが、制される。

わかるでしょ、と苦笑いする彩乃。

顔を歪めるパトリシア。泣こうにも涙も声も出てこない。

彩乃は、パトリシアにキスして抱き締めてくれないかと頼む。

パトリシアはそれに応えるしかなかった。

パトリシアの腕の中で、熱を失っていく彩乃。

雪はいつの間にか止み、陽が落ちていく。

パトリシアは、彩乃のジャケットのポケットから煙草を取り出し、咥える。火を点け、吸い込む。煙が目と喉を刺激する。咳き込み、涙が滲む。

こうでもしないと泣けなかった。



――

エピローグ


5年後

髪を黒く染め、逆プリン状態のパトリシア。

いまどき珍しい喫煙可のオープンカフェ。パトリシアの他に客は一人しかおらず、閑散としている。パトリシアは、空の飛行機雲を眺め、煙草を燻らす。

携帯端末に着信がある。受話するパトリシア。

「はい、もしもし、どうしたんですか? え、本当? うれしい」明るい声音。煙草をもみ消す。「――うん、いますぐ行きます。ありがとうございます」

席を立つパトリシア。もう一人の客がパトリシアへ視線を向ける。横を通り過ぎたところでパトリシアは.22口径の拳銃をバッグから取り出し、客の後頭部を撃った。そのあと、後頚部から頭頂へ向かって弾丸が通るように数発、肩から肺や心臓方向へ弾が抜けるように数発撃ち込んだ。


5年経ってもなお、パトリシアは生き続けていた。いまでは渋谷支部のリーダー的存在となっている。

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