第6話

 真面目な、真面目な理系女子の私。

 アパートと研究室を往復する寂しい日々。

 顕微鏡で探す、私の幸せは行方不明。

 

 目の前には、

 琥珀に閉ざされた小さな世界。

 お腹いっぱいに血を吸った蚊のお姿。

 吸われた、恐竜の血。

 の遺伝子。

 私の研究の対象。

 私の恋を閉ざすものも、

 琥珀かしら?


 しかし…、


 理系女子の私の同僚。

 皆さん同じ様なものです。

 古生物学の知識、深く掘り下げる、

 私と彼女たち。

 幸せの知識、掘り下げるスコップ見つからない。


 理系女子の予想。

 スコップは、女子力か?

 女子力って何?

 どの文献にも載らない謎の力。

 幸せへの静止摩擦力。

 超える事出来ない私たちの女子力。

 私たちだけ、係数違うの?

 それとも私たちの女子力の分母、

 無限大へと駆けていく乙女かしら?


 私の研究室に、集まる仲の良い同僚、先輩。


「そんな時には、やけ酒よ」


 先輩のお言葉。

 私たち、今夜は酒盛り。

 ところで、お酒ってどんなものがあるの?

 私たち、知りませんでした。

 お酒の研究、専門外の私たち。

 とにかく、いくつか買い込んで、

 美味しく飲める様に、

 混合してみる事にしました。


 先入観を排除するため、お酒を移したフラスコにa、b、cと表記。

 ビーカーに、買ってきたお酒のさまざまな混合比A、B、C、D…。

 作って見ました。

 どこまでも理系の悲しい女子会。

 

「美味しいよね」


 私たち3人の意見が、一致したのは、Dの組み合わせ。

 美味しいと言いながら飲むやけ酒。

 忘れていました。

 私たち、お酒を飲んだ経験も、ありません。

 たちまち、3人共、酩酊。


 目の据わっている先輩は、言います。


「恋する時間。失った時間を巻き戻そう」


 次の研究テーマは、タイムマシン?

 先輩、それはたいへんかと。


 服装の乱れたポッチャリの同僚は、話します。


「私をたくさん作れば、中には、素敵な恋をする私が、現れるかも」


 次のテーマは、クローンですか?

 私の同僚、オリジナルのあなたが、恋を出来ないなら、クローンにだって、恋は、出来ないのでは?

 哀しい私たち増えるだけかと…。


 顔の真っ赤になった私は、言いました。


「私たちは、研究者。いっその事、恋する対象のイケメンを作ってしまいましょう」


 私の持つ資料。

 ジュラ紀の琥珀。

 封じ込められている血液は、恐竜さん。

 人ではなく…。


 おまけに、

 私たちの周囲は、理系男子。

 イケメンは、いません。


 理系男子の皆さん、申し訳ありません。

    (作者より)


 そもそも遺伝子の調達が、無理です。


 私たち3人の恋の方程式。

 私たちが、係数の方程式。

 判別式は、マイナス。

 私たちの恋。

 虚数解。


 カクテルDの、

 甘い、甘い、夢の味。

 ひと夜の夢だけでもと願う恋は、負の値。

 夢のなかでさえ破れる私たちの恋。

 幸せまでの長い距離、克服出来ない理系女子。


 ふらつく足、怪しい手元。

 机までの短い距離もふらつく私。

 間違える方向。

 やはり、私は、スーパー方向音痴。


 幻覚ですか?

 何か門が見えます。

 あれは、恋する女子へ至る門。

 手を伸ばすと、すぐに消える門。

 シャボン玉。

 膨らむ途中で消える私の幸せ。


 カクテル入りのビーカー落とす私。

 こぼれたお酒とビーカーの破片で切れた私の指から溢れる血のカクテルが、資料を汚染。

 でもこの琥珀の蚊のお腹。

 血液の赤い色、見つからず、廃棄決定の資料。

 だから、

 問題ありません。

 そのまま、眠ってしまう私たち。


 朝日が、窓から滑り込み、

 鳥たちが、始まる一日の喜びを歌う時。

 私、二日酔いを生まれて初めて経験中。


「おはようございます。ご主人様」


 ご主人様?


            (?_?)オロ?

 

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