7-9 フラフラ出歩くなとお伝えください
「そんなに規模の大きな話なんですか?」
「あぁ、まったくとんでもない話だよ」
そんな大きな計画の話を聞いて、気になることが頭に湧いてきた。
これだけ大きな話しになると、領主であるウィリアム叔父さんが、このリアルデイルの街で指揮を取る事になるのでは?
それと開拓団の規模だ。
今の西町はリアルデイルの三分の1の人口を抱えている。
ざっと見積もっても3000人を越えるだろう。
その西町を東町と同じ様に、倍の大きさに拡大するとなれば、単純に考えても3000人以上は人口が増えることになる。
「ギルマス。もしかして開拓団は3000人規模ですか?」
「第1陣は私の想定した規模らしいが、その後も次々と開拓団がやってくるそうだ。最終的にリアルデイルはその規模で人が増える計画らしい」
「次々と開拓団がやってくる?」
「最終的に、このリアルデイルの街に3000人が住み着き、街道整備が済んだところで、さらに王都から次の開拓団が西方のジェイク様のところへ向かうそうだよ」
なるほど!
開拓団が最終的に目指すのは、さらに西方のジェイク叔父さんの所か。
「そして王都から来た人々は、リアルデイルに住むか、ジェイク様のところを目指すか、さらに南方のストークス領に向かうか⋯」
「それって⋯ 移民⋯」
これはもう街道整備とか開拓団とか、そうした話では無い感じがした俺は、思わず呟いてしまった。
「まさにイチノス殿が言うとおりだよ。これは、もう移民だよ」
「そんなに王都から人が入って来るのですか?」
「あぁ、どうも国王陛下は、そうした考えらしいんだ」
人が移動すれば、それに伴って経済も動く。
ますます、このリアルデイルは賑やかしくなり、発展して行くだろう。
「どうだろう? イチノス殿は、王国の壮大な計画に参加する気になっただろうか?」
「⋯ ギルマス。そこで私を巻き込むんですか?(笑」
「ククク」「ハハハ」
再び笑いが出たところで、俺は次の懸念を問い掛ける。
「ギルマス。ウィリアム様は、リアルデイルに住まわれるのでしょうか?」
「ククク やはりイチノス殿はそこを考えるか?(笑」
「えぇ、領主であるウィリアム様の命令であれば会合に応じると言いましたが⋯」
「ククク すまないがコンラッド殿にその話を伝えてしまったよ(笑」
まて! いや、もう遅いか⋯
ギルマスがそこまでコンラッドに伝えたとは考えてもいなかった。
軽く会合に参加して、そのまま消えようと思ったのに、先に逃げ道が消えてるじゃないか。
思わず目を細めた顔でギルマスを見てしまった。
一瞬、ギルマスは俺の顔を見たが、自身の表情を隠すように俯いた。
「次の月曜日にウィリアム様との会合があるんだ。それに参加してくれるよね?」
ギルマスが俺の顔を見ないように俯いたままで告げてくる。
俺は意思を貫いて、返事をせずに目を細めたままでギルマスを見つめる。
あっ! ギルマス!
今、俺の顔を見たけど、無視して横を向いただろ。
「いずれにせよ、ここで私の手伝いに付くか、会合でウィリアム様から指名を受けるか⋯ プププ」
ギルマスが怖い言葉を口にしながらも笑いを堪えている。
それでも俺は目を細めた顔を続けた。
「わかった。わかったから、その顔は勘弁してくれ⋯ プププ」
相変わらずギルマスが笑うのを堪えている。
「ギルマス、私はあくまでも魔導師です。魔導師としての仕事ならば、可能な範囲であれば喜んで引き受けますが、貴族としての職務には興味がありません。ご理解ください」
「プププ⋯ わかった。わかったから⋯ プププ」
どうやら目を細めた顔は、ギルマスの笑いを誘うだけで効果が無いようだ。
俺が顔を元に戻すと、笑いを堪えていた状態からギルマスが復帰してくれた。
「では、イチノス殿からの協力は『魔導師としての仕事』であること、それに『可能な範囲であれば』と言うことですね?」
「えぇ、その範囲でお願いします。この事は、私からウィリアム様へ月曜の会合で伝えましょう」
「そうですね。やはり本人から直接伝えるのが良いでしょう」
そこまでギルマスと会話をして、ふと、俺は東国(あずまこく)からの使節団、ダンジョウの言葉を思い出した。
〉ウィリアム伯爵様と
〉ストークス子爵からの使者
〉私共を交えての会談を執り行う
「ギルマス、月曜のウィリアム様との会合には誰が出席するのですか?」
「おや、ようやくイチノス殿が興味を示してくれましたね?(笑」
「いえ、私の店に東国(あずまこく)からの使節団の方がいらしたのです。その方が、ウィリアム様やギルマスのご実家の方々と、近日に会談があるような事を述べていたのを思い出したのです」
「東国(あずまこく)からの使節団⋯ その方のお名前をお聞きしても良いですか?」
急にギルマスが真剣な顔付きになって聞いてくる。
「ダンジョウ・メガネヤ殿です」
「それならば安心しました。昨日も伝えましたが、ウィリアム様の動向には細心の注意が必要なのです」
なるほど。
納得はできるが、そこまで注意をする必要があるのだろうかとも思う。
「イチノス殿ならばウィリアム様の敵になるとは考えられませんので、お知らせしても問題ないと思うのですが⋯」
「ギルマス、そこまで気を配るのですか?」
「イル師匠がです。それでこそ、ギルド内ですら会合が持たれることは、誰も知らされておりません。先ほどのキャンディスですら知り得ておりません」
そこまで気を使ってるのかと、俺は驚きを隠せなかった。
「ですので、イチノス殿にも気をつけていただきたいのです。つい先ほど月曜と知らせましたが、現段階では誰にも伝えないよう注意していただきたい」
「そこまで厳格にされるのですか?」
「はい。これはイル師匠の案です。ウィリアム様の動向が知れなければ、より危険を減らせるでしょう」
「では、参加者をギルマスの口から私に知らせることは?」
「申し訳ありません。この場で私は答えられません。月曜の時刻も会場もお話しできないのです」
「ギルマス。ちょっ、ちょっと待ってください。当日、私は何時にどこへ向かえば良いかすら、事前に知ることが出来ないのですか?」
「はい。当日、街兵士が護衛につくため、迎えに伺います」
俺はギルマスの話をそこまで聞いて諦めた。
これ以上、ギルマスと会話を重ねても月曜以外の情報は得られそうもない。
あのイルデパンが、ウィリアム叔父さんの身の安全を考えての情報統制なのだ。
もしやすれば、目の前のギルマスすら、参加者も会合の場所も時間も知らされていない可能性がある。
「では、月曜まで⋯ いや、月曜も含めて普段通りに過ごすのが良さそうですね」
「そうですね。何なら南町に遊びに行っても良いですよ(笑」
「それなら、フラフラと出歩くなとウィリアム様にもお伝えください(笑」
「ククク」「ハハハ」
思わずギルマスと共に声を出して笑ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます