第16話 エピローグ

 翌日。


「完・全・回・復っ!」


 病院のベッドに立ち上がり、お見舞いに来てくれたハルカと佐那に謎ポーズをして見せた私である。いやぁ昨日は有無を言わさず入院させられちゃったからねぇ。


「いやおかしいやろ」


「指完全に折れてましたよね? なんで一晩で治るんですか?」


「ふふん、瑞子(みずこ)への深い愛が奇跡を呼んだのよ!」


「いや魔法やろ? 回復魔法やろ?」


「そんな超回復しておいて一般人面するの恥ずかしくないんですか?」


 とても冷たい目で見られてしまった。ちょっとくらい心配してくれても――あ、はい。自業自得ですねすみません。


 私がベッドの上に正座して『しゅん……』としていると、右腕に柔らかい感触が。


「お母さん、悲しいの?」


 私の腕に抱きついて見上げてくるのは、おかっぱ頭の美少女――いえ、美幼女。和服も相まってどことなく座敷童っぽい雰囲気のする子だ。


 昨日の水子。改め、瑞子ちゃん。

 水子という呼び方はあんまりなので改めて名付けちゃったのだ。


 そんな瑞子ちゃんの頭を私は優しく撫でてあげた。


「あら~心配してくれるの? 瑞子ちゃんは優しい子ね~」


「……えへへ、お母さん」


 幸せそうに笑いながらさらに抱きついてくる瑞子だった。ふふふなんて優しく可愛い子なのかしら! ……なにやら抱きしめられた右腕からボキボキと音が鳴っているけど気のせいだと信じたい。なぜなら回復魔法なら骨折だって気のせいにできるのだから!


 あ、あとで力加減を教えなきゃね。可愛い顔して怨霊だからものすっごいパワーなのだ。可愛いから許すけど。


「アホやなぁ」


「幼女まで守備範囲なんですねぇ」


 微笑ましい親子のやり取りなのになんで冷たい目を向けられているのかしらね私?


「あ、せや。リナも心配しとったけど、朝から収録やっちゅうからそっちに向かわせたで」


「仕事休んでお見舞いするってワガママ言っていたのでちょっとお尻叩いちゃいましたけど」


 佐那の『尻を叩く』って激励するとか催促するって意味じゃなくて、文字通りの尻叩きよねきっと……。むしろリナの方がお見舞い必要なのでは?


 まぁ、佐那がそういうことをするのはよっぽど親しい相手限定なので、二人とリナは順調に仲良くなっているみたい。姉として喜ぶべきことよね。


 まぁ仲良くなりすぎていつものダブルツッコミがトリプルツッコミになったらさすがの私も精神に大ダメージを受けそうだけれども。その際は瑞子に慰めてもらいましょうかね。


 そんな未来というか『来たるべき日常』を想像してほんの少し頬を緩めてしまう私だった。




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