第15話 戦う侍女の淡い恋心

旅立ってから数日、ネリカの事が世界各国で噂になっている。

侍女冒険者がいるという噂で持ち切り状態。それも剣がうまく使えていないのに魔物を倒せているという不思議な現象も相まって人気が高まっている。今やアイドル状態だ。


「ネリカ、人気者になった感想は?」

「サーニさま!気分が良いわけありません!!」

「私は好きで戦っているわけでは・・・」

「魔物と戦うのが嫌だったら無理に戦わなくていいよ」

「サーニさまはズルいです。そんな事を言われたら嫌とは言えないじゃないですか。」

「僕はネリカが嫌がる事をしたくないんだ」

「サーニさま・・でも、たまに私で遊びますよね」

「そうかな~」

「そ・う・で・す!」

言い争っているように見えるが、二人は楽しそうだ。


ネリカは人見知りで自分の気持ちを伝えられない。だが、サーニにだけは伝えられる”王子様に対する気持ちは別だけど”。

サーニは誰にも気軽に話しかけて誰とでも平気で話す事はできるが、本当の気持ちを言っているのかは誰にも分からない。

サーニが何を考えてるのかはネリカにも分からないが心の内と外では考えていることが違う時があるとは思っている。


サーニへは侍女と王子という立場で振舞っているが、恋心は裏に隠してある。”好き”という気持ちを抑えながら姉弟のように、友達のように接している。

ネリカはサーニだけのアイドルになりたいと思っているのに侍女冒険者のようになってからは世界各国で注目が集まってきた。人見知りで人と接するのが苦手なネリカだから注目されるのは好きではない。それなのにサーニは嬉しそうだ。


「サーニさま、少し浮かれすぎです!」

ネリカはサーニが嬉しそうにしているのに腹を立てている。

「私は注目されすぎて嫌な思いをしているのだけど!」

「ネリカは嫌なの?」

「とてもイヤです!」

「僕は嬉しいよ」

「え?」

「ネリカがみんなから認められて僕は嬉しいけどね」

「でも、わたしは・・・」

「わかってるよ。ネリカは戦いが嫌いという事をね」

「僕が旅立つときも心配そうな顔で見ていたから。」

「知っていたのですか?」

「何年、一緒に居ると思ってるの?」

ネリカはサーニの言葉に目が潤んだ。そして・・・


「サーニさま、私は魔物と戦うのは怖いです。

「うん、わかってるよ」

「でも、大事な人のためなら戦います。」

ネリカは初めてサーニに自分の気持ちを言った。だが、”好き”という気持ちはまだ伝えられない。


「どうしたの?」

「え、なにがです?」

「ネリカは魔物が怖いというのは前から知っているけど急にどうしてかな~と思って」

「サーニさまにはハッキリ言っとこうと思いまして。」

ネリカは笑顔で返答した。

サーニは不思議に思ったが、ネリカが嬉しそうにしているから何も言わない。


淡い恋心をいだきながらネリカは変わろうとしている。

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