第14話 三つの自分探し

サーニは嬉しくしている。

「サーニさま、何故そんなに楽しそうなのですか?」

ネリカは素朴な疑問を言った。

「僕はいつも楽しそうにしてるよ」

「それは分かっていますけど、お城にいる時とちょっと違うかなと思って」

「ネリカと二人旅だからかな」

「サーニさま・・・」

ネリカはサーニの言った言葉にドキッとした。そして、一言「おだてても優しくしてあげませんからね」

ネリカはツンデレだった。


国を出てからかなりの距離を歩いたからネリカの疲れはピークに達していた。それもそのはず、ネリカは今までニヒル国を出た事がないし冒険家でもない女での長旅はものすごく辛いだろう。そのうえ、魔物と戦っているから疲れも限界まできていた。


戦闘力がないネリカもサーニの力で戦闘力は付いたがそれでも普通の冒険者や兵士と比べると明らかに戦闘力は落ちる。弱い小魔物なら良いが少し強い魔物に出会うとかなわない。だから中以上の魔物に出会った時はサーニがネリカの事をあやつっている。あやつられてはいるが剣を振るっているのはネリカ自身なのだから自分の力で戦っているといっても過言ではない。


いつでもネリカをあやつる事が出来るサーニだが、そこまではしない。サーニの覚醒した力を濃く表しているのが攻撃力。ネリカがめちゃくちゃに剣を振っても当たれば一瞬のうちに魔物が倒れるのだ。

サーニが手を貸しているのは攻撃力だけだが、たまにネリカをあやつって遊ぶ時がある。その時は酷く怒られる。


「ネリカ、大丈夫?」

「だい・・じょうぶ・・です・・」

一目ひとめで疲れていることが分かる。

「このあたりに魔物がいないから少し休む?」

「サーニさま・・・」

ネリカだけに戦わせているサーニだが、本気で心配している。

「ごめんね」

「サーニさま?」

サーニはネリカに謝った。

ゾーゼス討伐の時、戦わせてばかりいる兵士たちには謝らなかったサーニがネリカには謝った。


兵士たちはサーニのため、自分の事だけを考えて行動してばかりいると前の旅の時に思った。だが、ネリカは違う。厳しい事を言ったり泣いたり怒ったりでせわしないけど、サーニの事、国の事をちゃんと思っている。


誰とでも気軽に振舞っているから誰にでも心を開いていると思っていたら、心を開いている人は数人しかいない。ネリカはサーニの事を理解している数少ない人なのだ。

ネリカは”他人と話すのが苦手な私だけど、サーニさまには国のみんなと心から笑いあって欲しい。”といつも心の中で思ってる。


この旅は行方知れずな王子の身体探しが最大の目的だが、消極的なネリカが変わる事とサーニが王子として心から笑えるようになることも目的としている。

サーニは自分の身体探しだけと思っているが、ネリカはこの三つを目的としている。自分が変わる事も大事だが、王子にはいつも笑っていてもらいたいとネリカは願っている。


ネリカはいつも自分の事より王子様優先なのだ。

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