第16話 負担

サーニは魔物と直接、戦っているわけではないし霊体だから疲れないが、ネリカには疲れが見える。ネリカは咄嗟とっさの判断で旅に出たが、王子を思っての事だから後悔はしていない。


「・・・」

サーニは何かを考えている。

「ネリカは今までよくやったよ」

「サーニさま、まさか・・・」

ネリカはサーニに見捨てられたと思って悲しくなった。

「サーニさま、私は大丈夫です」

「まだ戦えます!だからお城に戻れなんて言わないでください」

「わたしは・・わたしは・・・」

ネリカの眼には涙がたまっている。


「僕がいつ城へ帰れと言った?」

「え?」

「僕は今までよくやってくれたと言っただけだよ」

「だから・・」

”よくやった”という言葉が”もう帰っていい”というふうにネリカには聞こえていた。

「ネリカは戦えない僕のために戦いには向いてないのに一人でよくやってるよ。でも、この後も一人で魔物と戦い続けるのは無理だと僕は思うんだ」

「サーニさま・・・」

「そこでネリカを助けてくれる人を仲間にしようと思うんだ」

「え?」

「私は大丈夫です」

「これ以上、一人で魔物と戦うとネリカの身体がもたないよ」

「ネリカに苦しい思いをしてもらいたくないんだ」

”サーニさまと二人旅が良いのに”とつぶやいてネリカはため息をついた。

きつい事はきついのだが、苦しい戦いもサーニとの旅が楽しくて辛さを忘れるぐらいだから他の人がパーティに加わるのが嫌なネリカ。


ネリカのためにどこの国にも属してなくて魔物と十分に戦える実力の戦士を仲間にする事にサーニは勝手に決めてしまった。

自分の事を考えてくれているという事は理解しているのだけど、サーニとの楽しい二人旅が終わってしまう寂しさを考えると複雑なネリカ。


「ネリカ、安心していいからね」

「ネリカが安心できるような人を探すから。」

サーニの嬉しそうな顔を見ると何も言えなくなる。それだけネリカにとって王子の笑顔は疲れが吹き飛ぶぐらい癒しの効果があるのだ。


「・・・分かりました。強くて優しい人を探してくださいね」

強くて優しいという難しい注文をつけられたがサーニは「”強くて優しい”人を探すんだね。分かったよ、安心して僕に任せて(笑)」と言った。

少し不安になりながらも自信満々に言う王子の笑顔を見てネリカは「頼みますよ、私の王子様」とつぶやいた。

「なにか言った?」

「頼みますね!!と言ったのです!」


こうして強くて優しい剣士を探す事にした。

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お気楽霊体王子が無双侍女と旅する自分探し 未知 @mi-ci

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