第5話 ソーゼスと戦うのは・・・

ソーゼスがサマスらを見た。

「久しぶりに人間が来たな」

「貴様らも俺を退治に来たのか」

「そうだ!」

兵士たちが一斉いっせいに言った。

「ならば貴様らも生きて帰る事はできないな」

静かな物言いだが威圧感はすごい。


「ソーゼス、お前はここで俺たちに倒されるのだ!」

兵士たちが戦おうとしたところへサマスが止めた。

「ちょっと待って」

「王子!なんですか!?」

「ソーゼスと少し話をさせて」

「何を言っているのですか!!」

「今がどんな時か分かっているのですか!!」

兵士たちはすごい剣幕でサマスを怒鳴り飛ばした。

ニヒルの良い所は王様にも応じ井様であっても誰もが好き勝手に言えるのだ。

よほどのことがない限り。サルシ王も王子のサマスも怒る事はない。

それでよく国が成り立っているのか不思議でならない。


「きさまは誰だ?」

最初にソーゼスが口を開いた。

「僕はニヒルの王子のサマスだよ」

「ニヒルは今まで来なかったな」

「そうだよ。だってニヒルは攻められたら応戦するけど、自分たちからは攻めないからね」

「そのニヒルがどうして俺を討伐しに来た」

「それはね。魔物が僕たちの国に近づいてきているから」

「それで俺をか」

「そうだよ。それに僕の事を鍛えるためだと思うよ」

「父上は僕の事で頭を痛めているから」

「分かった。いいだろう、掛かって来い!」

「俺は誰であろうと容赦しないからな」


ニヒルの兵士とソーゼスとの戦いかと思いきやサマスとソーゼスの戦いになろうとしていた。

「王子!下がっていてくださいと言ったはずです!」

「あなたがどうなろうとニヒルの強さには変わりないでしょうが、あなたは王子なのです!」

「王子に万が一のことがあったらどうしますか!!」

酷い言われ方をしているのにサマスは怒ろうともしない。

それを聞いていたソーゼスは呆れたようにサマスに言った。

「サマスと言ったか。お前、とんでもない家来どもを持ったな」

「そう?」

ソーゼスが慰めの言葉を言ったからサマスは不思議に思った。

「僕たちは敵だよね」

「ああ」

「どうして、敵の僕に優しい事を言うの?」

「それは俺にも分からない」

「だが、家来がいるというのは同じだからな」

「あんなことを言ったら俺だったらぶん殴るだろうがな」

「いつもの事だから僕は気にしていないよ」

「そうか、手加減なしで行くからな」

「うん・・・って僕が戦うの?」

「そういう事だな」

「どうして?」

「だってお前しかいないだろ」

「え?」


兵士たちはサマスを置いて逃げだしていたのだ。

一人ぽっちになったサマスはソーゼスの脅威に打ち勝てるのか?

無事に国へ戻る事が出来るのか?


同じ時刻、ニヒルでは

「ガシャンッ」

ネリカがお皿を割った。

「ネリカ、何をしているの?」

「あ、すみません」

「ここはいいからテーブルを拭きなさい」

「はい」

サマスがソーゼス討伐に行ってから仕事がおろそかになるネリカ。

サマスの事を心配し過ぎて注意されてばかりいるネリカ。

普段から心配性なネリカだがサマスが旅に出てからというもの心配しないことがない。

サマスが無事に帰ってきて欲しいと願うネリカだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る