第2話 緊張感の道中

魔物を討伐しながらソーゼスのもとへ一歩ずつ近づいて行ってるサマス一行。

立ちはだかる魔物を倒してはいるが、戦ってるのは兵士ばかりでサマスは見ているだけ。

サマスも兵士ばかり戦わせて悪いと思ってはいるが、「みんなの邪魔になるからおとなしくしていよう」と自分でも兵士たちの足をひっばっているとは思っている。


「王子、大丈夫ですか?」

一人の兵士がサマスに聞いた。

「僕は平気だよ。でも、ごめんね」

サマスの良いところは誰にも分けへだてなく普通に接することなのだ。

普通に接してくれるから嫌いな人はいないが、国を任せるとなると事情は違ってくる。

一人の人間としてサマスの事が好きな国民でも王子としての資質に問題を持っているのだ。

それは兵士も同じだが口には出さない。


サマスが戦わないのはいろいろな事情はあるが、一番大きいのは優しすぎるからだ。

優しすぎるうえ、魔物でも傷つけたくないと思っている。


「ねえ、もう少し優しく倒してあげようよ」

「・・・・」

兵士たちは首をかしげた。

「王子、優しくといっていますが、魔物たちは優しくしてくれるのですか!」

一人の兵士が怒気どきを強くしてサマスを問い詰めた。

そこでサマスは「向こうがやさしくないからこっちも同じというのは良くないよ」

そして、続けて「でも、国に被害がおよぶと思ったら仕方なく倒さないといけないと思うよ」

「どういう倒し方がよいのかわからないけど」

兵士たちは魔物にも優しいサマスに若干の嫌悪感を持っているが、その優しさを嫌いになることはない。

「王子、あなたという人は(笑)」

緊張感でいっぱいだった兵士たちも旅に出て初めて笑った。


みんなを明るくして緊張感をほぐすのはサマスの長所の一つ。

サマスのこの優しさは弱点にはなるが、大きな武器にもなる。

父サルシの狙い通りサマスは王子としての自覚を持ち始めた。

この旅でサマスが成長することは本人や国に良い影響を与えるだろう。


ソーゼス討伐の旅は終わりに近づいているが、成長の旅はまだ始まったばかり。

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