サクサクジューシー!ペリュトンの唐揚げ!?②(解体)




「先ずは何から手をつければ良いんだ?」


 上着を脱いだリアムは、黒いシャツを腕まくりしながらアリスに尋ねた。


「先ずはペリュトンの解体からだけど⋯⋯」


 そう言いながら、アリスはジッとリアムを見つめる。視線に気づいたリアムは不思議そうな顔をしつつも見つめ返して来た。


「⋯⋯⋯⋯なんだ?」


 痺れを切らしたリアムが口を開く。アリスは僅かに言い淀みながらも、疑問を口にした。


「⋯⋯本当にリュカを置いてきて良かったの?」

「置いてきた訳ではない。リュカ様のような尊い身分の方が料理などされるはずが無いだろう。オレたちだけで完璧な唐揚げを作ってあの方に召し上がっていただくのだ!」

「そういうものなのかしら? でもまぁ、リアムがそう言うならいいのだけど⋯⋯」


(私がこの世界に転移してきた日に、リュカに色々と手伝って貰ったことはリアムには黙っておこう⋯⋯)


 アリスはその件に関して、リアムに知られたら面倒なことになりそうだと口をつぐむことにした。





✳︎✳︎✳︎




 アリスとリアムの目の前には血抜きを終えた大小様々なペリュトンが置かれている。


 アリスは手術中の医師よろしく手袋をキュッとはめた。それを見たリアムも、その動作が必須であると勘違いしたのだろうか、同じように手袋をつける。


「それでは、解体を始めます。先ずはこの巨大な羽を切り落とします。次に、内臓を取り出す為に胸から股までナイフを入れてください。⋯⋯出来るだけ内臓を傷つけないように、胸骨に当たるくらいの深さでお願いね!」

「分かった」


 リアムは至って冷静にそう言って、ナイフを手に取り淡々と作業をこなしていく。


(流石だわ⋯⋯。全く狼狽えるようすもなく手際も良い。私なんて、初めて1人で解体した時には吐き気と貧血が酷くて散々だったのに⋯⋯)


 アリスが感心しながら見ていると、早々に第一行程を終えたリアムが声をかける。


「終わったぞ。次はどうするんだ?」

「えーっと⋯⋯次は、骨盤を切断して⋯⋯————」



 こうして、アリスが指示を出してリアムが実際に作業を担当することで、順調にペリュトンの解体が進んでいく。

 皮を剥いで頭を落とし、肋骨と脚を切断すれば、ペリュトンだった頃の面影は無くなり立派な肉へと変貌を遂げた。



「リアム、ありがとう。貴方のお陰で予定よりも早く終わったわ! 次はお肉を一口大に切って下味をつけてしまいましょうか!」

「ふん、これくらい当然だろう。ペリュトンの解体は初めてだったが、普段は動き回るモンスターを相手取っているんだ、これくらい出来なくてどうする。それに何よりも、リュカ様に美味い料理を召し上がっていただく為だ!」


 リアムは得意げな顔をしてフフンと笑う。


(どんな時でもリアムはリュカ様、リュカ様⋯⋯。本当、ブレないわね)


 そんな忠犬ともいえるリアムの姿を目の当たりにしたアリスは、呆れ半分感心半分で息を吐くのだった。




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