反撃開始!!
覆っていた霧が晴れて視界が良好になった森で、アリスは改めて今回の討伐対象であるペリュトンの姿をじっくりと観察する。
深緑色の身体と真っ黒な大きな枝分かれした角に、存在感のある翼は青緑色で、さらには血のように紅い瞳がこちらをジロリと睨みつけていた。
(シカに似ているけど、それよりもずっと大きくて色合いも全く違う。⋯⋯それに何より、立派な翼が生えているわ。まさに異世界のモンスターね⋯⋯)
幻想的なペリュトンの姿に目を奪われたアリスだったが、ハッと正気を取り戻し銃を構える。
そして、少しでも炎で照らされていない場所へと身を隠しているペリュトンたちの姿を確認し、声を上げた。
「私がペリュトンを灯りの方まで誘導するわ!!」
「アリス、任せたぞ!」
「ええ!」
————パァンッ、パァン⋯⋯パァン!!
アリスはすぐさま足元に向けて威嚇射撃を放ち、ペリュトンたちをより光の強い方へと追い立てる。
キャンキャンと犬のような鳴き声を上げるペリュトンを、目論見通りに炎で照らされたところまで誘導することに成功した。
「そっちに行ったわ! お願い!」
「⋯⋯オラァ!!」
アリスの言葉を聴いたリアムが即座に走り出し、追い立てたペリュトンのうち一頭の脳天を槍で突き刺した。
「っ!! 攻撃が通ったぞ⋯⋯!」
「ああ、こちらもだ!」
リュカもすらりと剣を抜き、ペリュトンの心臓をひと突きして仕留める。
しんと静まり返った夜の森に、2頭のペリュトンの断末魔が響き渡った。
昼間は全く歯が立たなかったペリュトンをあっさりと倒せたことにリュカとリアムは目を丸くする。
これで、残るは4頭のペリュトンのみだ。自然と、部隊の士気も上がる。
「やっぱり、思った通りだったわ! 弱点が無い生き物なんていないもの。ペリュトンは、人間の影を取り込むモンスター。そして、影を取り込んだペリュトンは光に照らされると影が出来、曖昧だった身体が実体をもってしまう。だから、ペリュトンが現れるのは霧深く薄暗い森の中だけで、あの時フレイアさんの攻撃のみを避けたのはそのためだったのね!」
アリスが興奮気味に力説していると、一頭のペリュトンがアリス目掛けて突進してくるのが目に入った。
(私だって、2人に負けてられないわ!!)
先ほどはペリュトンを追い立てる目的で身体に当てないように発砲していたが、今度は確実に息の根を止めるために心臓に狙いを定める。
アリスは手早くシェルポーチから実包を取り出し装填した後、スコープを覗き込み、走るペリュトンの左足の付け根に照準を合わせた。
(よし、心臓はこの辺りね!)
アリスは短く息を吐いてから、安全装置を外したチェシャ丸の引き金を引いた。
————パァンッ!!
1発の銃声が夜の森に鳴り響き、心臓を貫いた。その音に、残る3頭のペリュトンもビクリと脅えるようすを見せる。
3頭のペリュトンはそれぞれ1頭ずつリュカ、リアム、モハメドが相手取っており、追い込まれて最後の足掻きを見せるペリュトンたちに中々苦戦しているようだった。
そして、その時だった。剣を片手に戦っていたモハメドが、向かってくるペリュトンに驚いて尻もちをついてしまう。
「う、うわあぁぁあ!!!!」
パニックになり絶叫するモハメドに、その間にも距離を詰めているペリュトン。
「っ! モハメドさんっ!!」
咄嗟に駆け出したが、アリスがモハメドの元にたどり着く頃には、彼が既に串刺しになっているであろうことが容易に想像出来た。
(この距離じゃ、間に合わない⋯⋯!! でも、ここから撃てば戦闘中のリュカとフレイアさんに当たってしまう可能性があるし、どうすれば⋯⋯⋯⋯)
アリスが諦めかけた瞬間、そこにはモハメドを庇うようにして前へ出るリアムの姿があった。
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