怪鳥ペリュトン現る!①




 アリスたちを出迎えてくれたのは、痩身で素朴な雰囲気の1人の若い男性だった。

 彼はリュカの姿を見るなり駆け寄ってくる。


「侯爵様⋯⋯! この度はシャルム村まで御足労いただきありがとうございます。急なお呼び立てとなり申し訳ございませんでした。僕は、シャルム村の長を務めているジョセフと申します」


 ジョセフと名乗った彼は、ペコペコと忙しなく頭を下げた。

 リュカはというと、相変わらず淡々としたようすで彼に問いかける。


「構わない。領民を守るのが我々の務めだ。して、この村を襲っているモンスターについて、詳しく教えてくれ」

「かっ、かしこまりました。実は、僕が父——先代の長と3日前、森に薬草を採取しに行った時なのですが、その際に例のモンスターに襲われました。不思議なことに急に霧が濃くなったので、僕と父は帰ろうと採取も程々に森の入り口に向かって歩き始めました。しかし、その時に奴は現れたのです。僕は命からがら逃げたのですが、父はそのまま⋯⋯⋯⋯」


 その時の光景を思い出したのだろうか、若くして村の長となった男性ジョセフは、涙ながらに語った。


「信じられないのですが、ここ数日、村人を襲っているのはあのペリュトンかと⋯⋯。書簡でもお伝えしましたが、村を害するモンスターはペガサスのような羽と身体を持ち、枝分かれした2本の大きな角を持っていました。襲われた際にこの目で見たモンスターは、僕が昔、本で見たペリュトンの姿に酷似していたのです」

「ペリュトンか⋯⋯。伝承上の存在だと思っていたが、まさか、本当に存在するというのか⋯⋯⋯⋯」


 ジョセフの話を聴いたリュカが、驚いたようすで呟く。


「ペリュトン⋯⋯⋯⋯?」


 アリスが隣りでともに話を聴くリアムに尋ねると、彼は「そんなことも知らないのか」と言いたげな顔でため息を吐きながらも説明をしてくれる。


「ペリュトンとは、自身の影を取り戻すために人を襲うとされている凶悪なモンスターだ。常に群れで行動し、知能も非常に高い。しかし、リュカ様の言うようにペリュトンは伝承上の生き物のはずだが⋯⋯」

「なぜ、ペリュトンは影が欲しいんでしょうか⋯⋯?」

「詳しいことは知らん。倒して仕舞えばそんな些末なことは気にならないだろう」


(そういうことになるのかしら⋯⋯?)


 リアムの言葉に、アリスは首を傾げつつも納得する。

 すると、ジョセフと話を終えたリュカが後ろに控える2人に声をかけた。



「アリス、リアム。まずは、彼らが襲われたという場所に行ってみよう」

「かしこまりました!」

「了解!」
















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