任命!モンスターをハントするだけの簡単なお仕事!
リュカは透き通った碧の瞳をキラキラと輝かせ、アリスの手を力強く握った。
クールな彼らしからぬ行動にアリスは戸惑いを隠せず、思わず目を逸らす。
(リュカってば、一体どうしちゃったの!?)
未だ状況を飲み込めていないアリスを置いてけぼりにするかのように、リュカは握った両の手をブンブンと上下に振りながら揚々と口を開いた。
「アリス⋯⋯! お前は天才だ! もしかしたら、ラルジュの窮地を救うため、神が遣わした天からの使いなのかもしれない!!」
「は⋯⋯⋯⋯?」
リュカの唐突で荒唐無稽な物言いに、アリスはポカンと大口を開けて唖然とする。
すると、リュカは先ほどまでの爛々とした表情から、幾分か陰りを帯びた面持ちになり少々躊躇った後、口を開いた。
「⋯⋯実は、このラルジュ地方では貧困に喘ぐものが多くてな。元々経済的余裕の無いものたちが多く集まる土地ではあったんだが、いかんせんこの地方は冬が長く、土地が枯れてしまって農作物が育たない。さらには、食糧が不足しているところに凶悪なモンスターによる獣害ときた。俺たちが今いるこの地域は、ラルジュ地方の中でも特にモンスターによる被害が多発していて、民は皆、困窮しているんだ。⋯⋯⋯俺は、そんな現状を打破し民を救うために首都であるダリアから来たんだ」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
悲しげな表情で淡々と語るリュカの姿に、アリスは胸がキュウッと締め付けられる心地がした。
「そこで、だ! 今回のように無数に溢れかえっているモンスターを討伐後、調理して民に振る舞えれば一石二鳥だとは思わないか?⋯⋯⋯いや、一石二鳥どころではない、お釣りがくるくらいだ! そして、さらにモンスターを使ったラルジュの名物料理を作れば話題作りにもなり、町も活性化されるだろう。それによって、働き口も増えて貧困も解消され、地域復興に繋がるかもしれない!!」
ほとんど一息で言い切ったリュカは、はぁはぁと肩で息をしている。
息が整ったころ、ハッと我に返ったリュカは、僅かに頬を赤らめてゴホンとひとつ咳払いをした。
「⋯⋯⋯⋯す、すまない。少々はしゃぎすぎたようだ。しかし、先ほど俺が口にしたことは、紛れもない本心だ。⋯⋯アリス、これはお前にしか出来ないことだ。もちろん、お前の働きに応じた給金は出そう。⋯⋯⋯だからどうか、俺に力を貸してはくれないだろうか?」
リュカは真っ直ぐな瞳でアリスを見やる。リュカの豹変ぶりに驚いたアリスだったが、既に答えは決まっていた。
「もちろんよ。居候させてもらう代わりに、私に出来ることならなんだって協力するわ!!」
こうして、突如として異世界に転移してしまった乙狩アリスは、ハンター兼、討伐したモンスターを調理するシェフへと任命されたのだった。
しかし、アリスの脳裏にはひとつの疑問符が浮かんでいた。
(あれ⋯⋯⋯? この地域の困ってる人のために首都からわざわざラビナスボアの討伐に来て、さらには地域復興まで任されてるって⋯⋯⋯リュカって一体、何者なのかしら?)
しかし、アリスの疑問はすぐに解決されることとなる。
アリスがうんうんと頭を捻っていると、どこからか男性の声が聞こえてきた。その声は徐々にこちらに近づき、ガサガサと枯れ枝をかき分けて1人の男性が現れる。
そして、その男性はアリスの姿を目にするやいなや、途端に厳しい顔つきになって声を上げた。
「お前たち! 侯爵を見つけたぞ!!」
「⋯⋯!?」
声を上げた男性は、炎のような真っ赤な髪に金色の瞳を持つ、華やかな出立ちの男性であった。
彼は未だ状況の飲み込めていないアリスを指差し、後から駆けつけた武装した男たちへと指示する。
「今すぐ不審な女を捕らえろ!!」
赤髪の男性の指示で一斉に数人の男たちに囲まれたアリス。
(え⋯⋯!? 侯爵!? それに、不審な女って私のこと!? 一体、どういうことなの!!)
混乱するアリスのことをジロリと鋭い眼差しで見たかと思えば、男性は大股でズカズカとアリスの元へと歩いてくる。
アリスの身には、異世界転移後最大のピンチが訪れようとしていた。
※ 最新話更新に伴い、初めて近況ボードを書いてみました。そちらもお読みいただけると嬉しいです。
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