第8話 夢乃さんの不思議な力について
「私が分からないの?」
そういうと彼女の姿が急にゆがみ始めた。
そして、見たことのある姿が現れた。
「私ですよー。白羽 蝶ですよ?」
私には何が起こったのか分からなかった。視界がぼんやりとして、上手く見ることが出来ない。
「もしかして、驚いてます?。私、催眠術を使うことが出来るんです。その影響で、姿が変わって見えたんです。」
「......ん?」
聞き覚えのある声と共にようやく目が慣れてきた。
私はゆっくりと目を開けた。
「夢乃さん」 そう言いながら、私は彼女をそっと抱きしめた。
すると彼女は急に顔を真っ赤にしはじめたかと思うと――
「......ん~!!」 と言って私を抱きしめ返したのだ(笑)
そのあまりの強さに私は思わず笑ってしまった。
そしたら彼女が頬を膨らませて怒ってしまったので、私はすぐに謝った。
でもなぜか彼女の顔は笑っていた。
なんでだろうと思っていたら――
「私ね。こうやって抱きしめてもらうの大好きなんだぁ!」
そう語る彼女の瞳は宝石のようにきらきらしていた。
私はそんな彼女にこう聞いた。
「もしかしてハグとかされると痛い?」
しかし彼女は首を横に振りながら答えた。
『ううん!すっごく心がポカポカするんだよ!』
その答えを聞き安心するとともに私も心がポカポカしていくような感じがした。
その後私達は色々なことを話した。 好きな音楽のこと。
おかしい。おかしい。さっきから変なことが続いている。
絶対におかしい。これが現実なのかどうか分からなくなっている。
私が教室で襲ってきた蝶を急に抱きしめるはずがない。
なのに、この感情はなんなんだ。
これも催眠術の一つなのか。
分からない。分からない。分からない。
「私が何で、あなたを襲ったか分かる?」
蝶が笑いながら、聞いてきた。
いつもの彼女からは考えることの出来ない冷淡な口調だ。
「え、それは涼平を奪うためなんじゃ....」
「ちがう」
彼女ははっきりと否定した。
「私があなたを襲った理由、それは”夢乃 あなたのことが好きでだから”よ。」
「え、蝶が私のことを好きなの?」
彼女の言ったことが信じられない。
私が好き?何を言っているんだ。
すると、深く考える間もなく、
「そう。好き。大好き」 そう言うと突然顔を近づけてきた。
「――っ!?」
突然のことで驚いたのもあったけれど、何よりも彼女が凄く怖かった。
逃げなければと思ったが手足が全く動かなかった。
私は恐怖を感じ目を閉じようとしたその瞬間―― ――唇に柔らかい感触が当たった
目を開けるとそこには目を閉じた可愛い顔をした彼女がいた。
唇に当たる暖かい感覚と共に何かが流れ込んできてそれが私の中に入っていったのが分かった。
そして私は気づいた。
気づいてしまった。
どうやら自分は今キスをされているらしいということに。
だがなぜキスをしたのかが分からない。
私はこんなことをされるようなことをしていないからだ。
私は混乱している頭を整理しようと必死で考えた。
だが結論が出ないまま長いような短い時間が過ぎていった。
「いや、離して。」
彼女の体を押しのけると、距離を取った。
「えー。ひどいなー。」
蝶が残念そうに言う。
いつもののんびりとした口調だ。
「あなたには、質問がたくさんあるわ。」
そう、私が今までに体験したことは何だったのか。
そして、涼平がどこに連れ去ってしまったのか。
「涼平は何処にいるの?」
彼女はこう言った。
「教えない」 私にそう言った。
「教えてなるものですか。彼はもう自分のものなんですから。」
私はそう言って彼女に背を向けた。
次の瞬間。
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