第3話 子供っぽい恋愛

校門に向かうと見慣れた背中が見えた。

「ごめん待った?」

そう言うと涼平は振り向いて微笑んだ。

「全然待ってないよ、行こっか!」

涼平のその言葉で帰り道を歩き出す。

2人で帰る時は必ず手を繋いで歩くことにしていた。

こうすると心がぽかぽかとしてきて幸せな気持ちになるから好きだった。

いつものように歩いていると突然涼平の手が離された。

どうしたんだろうと思って振り向くと、そこには涙を流す涼平の顔があった。

私は驚いて何も言えなくなってしまった。

「りょうへい......?」

「ごめんね、僕、どうしても君に言わないといけないことがあるんだ......」

いつもの涼平らしくない真剣な表情を見て緊張してしまう。 私は唾を飲み込み返事をした。

「なにかな......? 改まって言われると怖いよ......」

「僕ね、ずっと君のことが好きだったんだよ!!」

「............えっ......」

突然の告白に驚き過ぎて変な声が出てしまう。

でもすぐに気持ちを落ち着かせることができた。

なぜなら涼平のことは幼稚園の頃から知っているからだ。

涼平は少し天然だが誰にでも優しく出来る良い子だってことを知っていたし、小さい頃はよく一緒に遊んだ記憶がある。

そんな涼平が私を好きって言ったのは嬉しい反面凄く驚いたのだ。

「そうだったんだね......」

私がそう返事をすると涼平は嬉しそうに笑っていた。

「ねぇ、君は僕のこと好きじゃないかな......?」

不安そうな表情をしてそう言ってきた涼平に対して私はこう言った。

「好きだよ......」

それを聞いた途端涼平の顔がぱっと明るくなった。

私はその表情がとても可愛くて愛おしく感じた。

私は涼平が好きだ。

幼い頃のことなのにずっと好きでいる自分がとても気持ち悪かった。

今でもなんで好きなのか分からないくらいだけど、とにかく好きだからそれでいいよねって思っているんだ。

これから私たちは大人になっていくにつれてどんどん離れ離れになっていくだろうということは分かるけど、今はこうして大好きな涼平と一緒にいられるだけで幸せだなと思っていた。

これから何があっても二人で笑っていけるような未来にしたいなって思っていたんだけど......。

それは一瞬で砕け散ってしまった。

そこに白羽さんが急に現れた。

「涼平くんっ!」

彼女はいきなり涼平に向かって抱きついてキスをして来たのである。

私はその光景を見ていたはずなのに頭が真っ白になってしまって動けなかった。

目の前で起きたことが信じられないくらいだった。

キスを終えた白羽さんは呆然とする涼平の手を引いて走り出す。

そして曲がった角に消えていったのであった──

私が呆然と立っていると、涼平は苦しそうな表情をしながら走って行ってしまった。

その瞬間、ようやく我を取り戻して涼平を追いかけたけれどもうどこにもいなかった。

家に帰り着いたあともショックが大きくご飯も喉を通らないままベッドに入って横になっていた。

どうしてなのか理解できなかった私は泣き叫んでいた。

朝になって学校に行くと教室に涼平の姿がなかったので先生に聞いてみると昨夜事故にあって病院に運ばれたらしいという返答が来た。

私はそのことを聞いて目の前が真っ暗になったような感覚に陥った。

涼平がいない世界で生きていかなくちゃいけなくなったんだから当然だと思うんだけど、やっぱり悲しかった。

学校にいても気分は晴れないままだったので早めに家に帰ることにした。

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