第2話 一目見た時から好きでした

『どうしたの?』

そう聞くと、涼平は少し得意げに答えた。

『んー、なんとなく?』

「なにそれ~」

私たちは顔を見合わせて笑った。 二人でいるのは楽しいけれど、やっぱりこうして二人っきりのときはできるだけ一緒にいたいと思う。

「ねぇ涼平」

今日は雨が降っているからいつもよりもっと涼しいだろうと思っていたけど、意外にそうでもなかったみたい。

むしろ生暖かい風のせいで蒸し暑さを感じるくらいだった。

それでも私たちの周りにだけ咲いている綺麗な桜を見ているとそんなことどうでもよくなってしまうのだから不思議なものだった。

「どうしたの?」

「ううん、なんでもない」

私が見ていることに気づいたのか、涼平はこちらに微笑んで言った。 それを見てまた嬉しくなると同時にちょっと悔しくも思ってしまう。 この幼馴染みはいつもそうだ。本人は無意識なのかもしれないけど、彼はこうやって微笑むだけで女の子を勘違いさせてしまうんだから困った人だと思ってしまう。

私は涼平のことが好きだ。それは間違いない事実なのだが、だからといって告白したりだとかそういうことをする勇気はない。

私は昔から人前に立つことが苦手だっていうのもあるんだけど、それ以上に自分に自信が無いせいだと思う。

自分になんて興味ないし誰かを助けられるわけでもない。

だから私は自分のことを諦めてしまっているんだ。

それに......多分彼もそうなのだと思う。

だからきっと私たちは似たもの同士なんだと思う。 それでもやっぱりいつか勇気を出して言ってみたいなとは思うんだけどね。

涼平は優しい。 いつも優しくて温かくてそんな彼に影響されて私も少しずつ変わることができたんだと思う。

昼ご飯を食べ終わり、教室へ向かうとクラスメイトたちに囲まれた。 なんでも今度学校で行われる球技大会に出るメンバーが足りないらしくみんなに協力してほしいという内容だった。

野球かバレーなら私はできると思うけどソフトボールは無理だし......どうしようと考えてふと涼平を見ると何故か目が合った。

涼平は私の考えていることが分かったみたいに微笑みながら言った。

「夢乃はバレーボールやればいいよ」

その一言でクラスの男子たちが盛り上がり始めた。

まぁ確かに涼平は運動神経がいいし上手いもんねーなんて言う声が聞こえてくる。

本当にずるいやつだって思う。私が断れないのを知ってわざと言っているんじゃないだろうかって勘繰ってしまいそうになる。

「......仕方ないなぁ......」

そう言った瞬間みんなが私を取り囲むように押し寄せてくる。

私は思わず目を伏せてしまった。

涼平はそんな私に苦笑いしながらも背中を押してくれるのであった。 今日の授業が終わり帰ろうと思ったとき涼平に呼び止められた。

涼平は先に校門前で待っていると言っていたので急いで向かう。

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