あの花のような笑顔のために、私は。「君さえいれば」をあなたに捧ぐ
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第1話 主人公の心情《あなたは今幸せですか?》
私はどこにでもいる高校1年生だ。勉強はちょっと苦手だけど運動神経はそこそこあってよく体育祭や球技大会なんかで活躍していたと思う。まあその分おバカなのでテストはいつもぎりぎり赤点回避ってくらいなんだけどね(笑)でもそんな私にも最近楽しみができたんだ。
それは――「...あ、いた!」
私が大好きなあの子がそこにいるのだ。彼女はベンチに座って文庫本を読んでいるようだけど、その目は文字ではなくどこか虚ろに見える。
「......ん。こんにちは」 私の声に気づいてくれたのかこちらに視線を向けてくれた彼女に向かって私は大きく手を振りながら近づいていく。「ねぇ、なに読んでるの?」
「......」
「もしかしてラノベとか?」
「......そう」
「そっかぁ。私も実は好きなんだよそれ」
彼女が手に持っている文庫本をみるとそこには可愛らしい女の子が表紙になっているイラストが見えたので思わず話しかけてしまった。「ねえ、名前はなんていうの?」
「......白井夢乃よ」
「じゃあ夢ちゃんだねっ♪」
「え、ちょっとっ......」
お構いなしに名前で呼んであげると彼女は困った顔をしたがすぐに諦めたように小さく息を吐いてから、「いいよ」とだけ呟いた。
「やったぁ。これで私も友達一号だっ♪」
「......よかったわね」
こうして私たちは出会い、そしてこの日をきっかけに少しずつ惹かれ合っていったんだと思う。これが私たちの関係の始まりでした......。
◇◆◇
「――......乃、夢乃ってば。起きてくださいよー、遅刻しますよー!!」
妹の声が部屋中に響き渡る。どうやら今日もまた寝坊してしまったようだ。時計を見ると針はもう10時を指している。
「うぅ~~~もう少し寝かせてぇ~」
布団をぎゅっと掴んで抵抗する。
昨日はゲームをして夜更かしをしてしまったからだ。
仕方ないじゃん、面白かったんだからさぁ......。
「......はぁ、仕方ありませんねー起きるまで待ってあげますから早く準備してくださいねー」 そういうと妹は部屋を出て行った。
無理やり、目をこすって眼鏡を探す。
意識が朦朧なまま立ち上がり、リビングに行くとテーブルの上に朝ごはんと一緒に置き手紙があった。
お母さんからのお小言だろうと思って開いて見ると......。
「もう知りません。今日からお弁当作ってあげませんし、朝起こしても起こしませんからね!! 今日は入学式なのですからしっかりしてくださいよねっ。それと今日のお弁当は抜きです!
お姉ちゃんなんてだいっきらいだ―――っっ!」
眠気覚ましのシャワーを浴びてから着替えた。
朝食を食べてから身支度を整える。
鏡の前に立って制服姿を確認してみる......うん、ばっちり可愛い。
むしろ可愛い過ぎて天使かと思うくらいだ。
こんな私を誰が嫌いなのだろうか......まぁとにかく可愛いのだから仕方がないのだ。
「行ってきます」
私は家を出る前に仏壇に手を合わせた。お父さん、私行ってくるね♪ いつも仕事で忙しいけど私は元気だから安心してね。
だから天国で見守っていてあげて欲しい――......。
家を出ると、ちょうど隣の家から幼馴染が出てくるところだった。
彼とは同じ小学校に通う事になりクラスも同じになったのだが一年生の時から同じクラスなのだ。
腐れ縁ってやつなのかは分からないけれど。
高校では別々になると思っていただけになんだか嬉しくなる自分がいた。
「おはよう涼平くんっ」
「ああ、おはよ......ってお前また髪の毛ぼさぼさだぞ。」
彼は笑いながらそう言った。
昔からこうやって笑ってるところを見る度に胸が高鳴るのは何故なのだろう。
「えへへへ、しょうがないじゃない~今日は式だけだからっていつもより遅く起きたんだもん......」
「はぁ。」
涼平が軽くため息をつく。
そして少し背伸びをすると突然、両頬に冷たい感触が伝わってきた。驚いて彼の顔を見つめる。すると、涼平はいつも悪戯っ子のように笑っているのだ
「これでよし。」
「ちょ、急に何するの」
私がほっぺたを膨らませて言うと、涼平は私の頭を撫でながら言った。
「お前の髪質はサラサラしてるから、ちゃんと梳かすだけでいいんだよ。」
それはきっと親友同士だから出来ることなんだろうなって思う。
「ありがとー涼平くーん♪」
嬉しくて彼に思いっきり抱き着くと彼も抱きしめ返してくれた。
「ほら、学校行くぞ」
「あ、待ってよー。」
小走りになる私に涼平が少し笑う
と横に並んで歩き始めた。
☆☆★
桜ヶ原高校の校門を通ると、私たちに気づいた生徒がたくさん集まってくる。
みんな笑顔で挨拶をしてくれるのだが、私と涼平はそれに笑顔で手を振り返すことはあっても返事をすることはほとんどない。
桜の花が舞う散り木の下で、私は胸を高鳴らせて校舎へと入っていった。
教室に入ると、涼平とは少しだけ違う女の子が近づいてきて挨拶をする。
「おっはよ、夢乃!」
「......おはよ、白羽さん」
白羽さんは、いわゆる不思議ちゃんだ。
その証拠に今も浮いているように見える白い蝶々に向かって話しかけている。
しかもその姿を見ているクラスメイト達はそれを気にしている様子がない。
彼女の目に映っている蝶は一体どういうものなんだろうか。でも誰もそのことを聞こうとは思わないし、もし聞けたとしても教えてくれないだろう。何故なら彼女はいつもこう答えるからだ。
「うふふ♪ 今日もいい天気ね~」
っとこんな風に何もいないところに答えるのだ。
クラスの中にはそれで怖がっている子もいるらしい。
私も最初に声をかけられたときはとても驚いた。
だって今まさにそこに蝶がいるんだよ!?なのになんでそんな平然としていられるわけ??
そう思っていた私だったが、それが彼女にとって当たり前なのだと知り、今ではすっかり慣れたものだ。
まぁそのせいでクラスの子たちからは変な目で見られているみたいだけど......そんなことを考えているうちにホームルームが始まり担任から連絡事項が伝えられる。
どうやら今日は月に一度の大掃除があるらしい。
男子たちは張り切っていて、女子は面倒だなーなんて話しながら盛り上がっていた。そして案の定、涼平も面倒そうな顔をしていた
※※※
昼休みになると、
涼平はいつも屋上に行く。彼はお気に入りの場所を見つけたようで、季節の花や動物に囲まれてゆっくりするのが好きだと言っていた。
だけど私はこの時間が好きだ
涼平と一緒にお弁当を食べるためというのもあるんだけど、何よりも大好きな青空を見上げることができるこの場所が好きだった。
今朝の天気予報によると午後から雨マークがついているみたいだから、今日こそ一緒に食べようと思って彼を探していたのだけど、どこを探しても見つからない
(涼平は屋上に行ったのかな?)そう思い屋上へ向かう階段へのドアを開けると、そこには探していた姿があった。
『あ、やっと来た』 そう言って振り返った幼馴染みの顔はとても嬉しそうだった。
私は思わず笑ってしまう。
別に待ち合わせをしていたわけでもないのに、まるでずっと前から彼がここにいることを知っていたかのように自然に出てきた言葉
だった。
「......どうして分かったの?」
そう聞くと、涼平は少し得意げに答えた。
『んー、なんとなく?』
「なにそれ~」
私たちは顔を見合わせて笑った。 二人でいるのは楽しいけれど、やっぱりこうして二人っきりのときはできるだけ一緒にいたいと思う。
「ねぇ涼平」
今日は雨が降っているからいつもよりもっと涼しいだろうと思っていたけど、意外にそうでもなかったみたい。
むしろ生暖かい風のせいで蒸し暑さを感じるくらいだった。
それでも私たちの周りにだけ咲いている綺麗な桜を見ているとそんなことどうでもよくなってしまうのだから不思議なものだった。
『どうしたの?』
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