第6話 若旦那さま

ということであるから、こうして、私は今、事件のあらましを書いたのであったが......。しかし、この事件というのは実に奇怪なものであって、私が、今でも、本当に起こった事だったのか?と疑いたくなるほどの、大変奇異なものなのである。

その物語では、その犯人が捕まった後、警察の方では、真犯人の行方が分からないままに捜査が進んだけど、やがて、その男が、偽名で強盗致傷事件を起こしていたことが発覚する。 男はその年老いた母親と息子二人の家族三人の生活を、たった一人で支えていたのであるが、その息子の一人が、その日、男に現金を渡す筈だったのだが、男が逮捕された時に、偶々彼の父親と一緒に出掛けていて、その父親が帰宅したのは夜半だった。その後しばらくして帰宅すると、母親が血塗れになって倒れているのを見て、父親はその強盗殺人犯として警察に捕らえられたのだそうなのだ。 男は、犯行現場に残されていた手紙や指紋など、自供による物証によって有罪となり、間もなくして出頭してきたのであるが、その時既に、男の家族は皆死んでしまっていたので、その男を引き取る人もいなかった為に、結局、身寄りのない、行く当てもなく、仕方なく拘置所で暮らしていたところを、窃盗団の仲間に入れてもらい、盗みをしていたというのである。 さて、

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