「もう終わりにしよう」

「...え？」

それはあまりにも突然のことだった。突然のことに戸惑うしかない私。でも目の前の女性は私のことなど気に留める暇はないようで、さらに言葉を続けていった。

「私たちは争い続けなければならない。その呪縛に囚われてしまった今こそがチャンスなのだよ」

その言葉を聞いて私は確信した。この女性が言ってるのは“嘘だ”。本当はそんな理由で私を騙そうとしているんだ......と。「――違う！」だが彼女は否定しないどころか、私が否定することすら許さないようだった。「......君は賢い子だね。そうさ、これはただの建前だよ。本心ではもっと別のことを考えていたんだが......」彼女はそう言って悲しそうな顔になる。きっと今まで誰にも打ち明けてこなかったんだろう。けれど今の彼女には誰かに相談することなど許されなかったに違いない。だからたった一人で抱え込んだまま、ずっと苦しんできたのだろうか......？「...でもね。だからこそ君にお願いしなければならないことがあったんだよ――」そう言うと彼女の表情が急に真剣なものに変わった。まるで自分の使命を思い出したかのように。その顔を見て私も思わず息を呑んでしまう。「...どうかこの手で世界を救ってほしい。そして君の力を貸してほしい」私は驚いて何も言えなかった。でもこんな自分を頼ってくれる人がいるなら応えない訳にはいかないと思う自分が確かに存在することに気付いていた。だから答えようと思った。「...分かった。どこまでできるかは分からないけど、やってみるよ......！」彼女が少し微笑む。きっとこれが最後の笑顔なのだろう。それでも私はこの女性の頼みを聞きたかった。だってこの人には今まで会ったことのない不思議な力があるような気がしたからだ。「ありがとう」私は彼女に向かってにっこりと笑って見せた。