第39話 タネあかし
刀麻はシアーズが来訪した時から彼の存在に気が付いていた。タァヘレフが迎えなければ彼女を探してこの部屋へ来ることを予測していた。革パンツの中に仕込んだ探知機は、振動も感知する。シアーズの来訪の足音をずっと感じ取っていたのだ。
そばにあるベッドへ戻って疲れ果てた彼女に優しくキスをした。数度キスしても起き上がらないので肩をゆすると、慌てて彼女は飛び起きる。
「とっ・・・トーマっ・・・!」
「明かりをつけてくれないか、タァヘレフ。」
「は、はい・・・!」
脱がされたアバヤを身体にくっつけてベッドを降りた彼女は、リビングとの出入り口のそばにある明かりを灯す。すると飛び上がって驚いた。壁際に、気絶させられたシアーズがあお向けて寝転んでいたからだった。
「どっ・・・!どうなって!?トーマ、何が起こったんですか!?」
「あ、ちょっと待って。眼鏡を今調整するから。」
「眼鏡?」
「暗闇でも見えるように調整してあったんだ。明かりの中だと逆に見えにくいんでね。・・・おし。」
眼鏡をはずさないで行為を続行していたのは、そのためだったのか。
タァヘレフの服は脱がせたくせに、彼自身はシャツも革パンツも脱がないままだったのは。
説明を求める彼女に、刀麻はにやっと笑ってみせる。
「あんたの見張りの兵士はどこにいるんだ?ドアの前か?」
「え?ええ。いつもそうですけど。」
「金をやって、シアーズを基地に送り届けさせろ。大事な雇い主だろうから、ちゃんと最後まで面倒みろってね。」
「は、はい・・・。え?ええ?」
「それからあんたは荷物をまとめて、とりあえず俺の滞在しているホテルへ来ること。ホテルは部屋が空いてると思うから大丈夫だろう。」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください、トーマ。」
情事の後とは思えないさばさばした口調で指示を与える彼に、戸惑いを隠せない。
ようやく衣服を身につけた彼女を抱き寄せて、またその頬に軽くキスをする。
「一緒に行こう、タァヘレフ。プリンセスに会いたいだろう?」
下手くそなウィンクをして見せて、口角を上げた。
「・・・会いたいです。でも。」
「だったら黙って俺のいう事を聞くんだよ。子供はちょっと見ないうちに成長する。大人びたあの子を早くみたいだろ?さ、早いとこ動いた動いた。」
なんとも腑に落ちないような顔をしていたタァへレフだったが、言われるまま玄関の外にいる見張りの兵士を呼びに行った。
その間は、刀麻がバスルームに隠れる。見張りにまで発見されると厄介だ。
寝室で倒れているシアーズを見つけた兵士が泡食って飛びつく。彼女が機転を利かせて、急病だとかなんとか言いくるめたのだろう。背中に背負って、男の荷物を両手に、部屋を出ていった。タァへレフを一人部屋に置いていくことに一瞬気付いたようだが、しっかりと部屋に鍵をかける事で、彼女は逃げ出さないと思ったらしい。愛人は大抵、他に生計の道がないから愛人になるから、逃げ出さないものだ。
彼が気絶したシアーズを抱えて帰って行くところを見送ると、刀麻は彼女の耳元で優しく囁いた。
「さっきの続きは、ホテルでいっぱいしてやるからな。」
タァヘレフはまとめた荷物を抱えながら、真っ赤になった顔を隠した。
「なあ、あの兵士をなんて言いくるめたのか、教えてくれよ。」
「お年の割に頑張りすぎたせいで、倒れましたって言いました。急いで病院に連れて行かないと命も危ういかもって脅してもおきました。こんなところに出入りしていることを知られるわけに行かないので、救急車も呼べないでしょう。」
ひゅう、と口笛を拭いてみせる刀麻。
「そいつは傑作だな。」
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