第7話 関係する
豊満な体が目の前で揺れる。息継ぎをするたびに震えるように揺れた。
陽に焼けてはいるが元は白い肌なのだろう。胸元や足の間の肌の色が異様に白いことでそれがわかる。恐らくは混血。
「ぐっ・・・」
刀麻は堪えきれずに呻いた。
見上げたタァヘレフの唇から光るものが糸を引く。その顔の色っぽいことと言ったら、言葉に尽くせない。長い髪が背中や鎖骨に張り付いて、それをうっとおしそうに払う彼女の仕草が綺麗だった。
少女がやって着た時刻よりも陽が傾き、薄暗くなった外の様子が気になったが、もうそんなことは言ってられない。
日没後めっきり冷え込む砂漠の気候だが、二人は少しもそれを感じていなかった。大きなベッドの上で淫らに動くタァヘレフと、それを追う刀麻はまるでハードな運動でもしているかのように汗だくになっている。二人とも素っ裸なのにも関わらず、だ。
自分よりも大柄な女性を抱くのは初めてだ。しかしそれと悟られるのが嫌だった。出来るだけ余裕がある振りをするのがせめてもの刀麻の意地だ。
日頃メスばかりを振るってきた指先を彼女の肌に這わせる。久しぶりに触れた女性の肌は思ったよりも滑らかだった。
彼女の様子を見ながら愛撫を繰り返す。頃合を見て、そっと膝の裏や太腿を優しく撫で、キスをした。これでよかったんだよな、などと思い返しながら、時折彼女の様子を窺う。
「優しいんですのね・・・。ドクター・・・。」
「そうか・・・?」
荒い息をついている彼女は、本当に嬉しそうだった。
「こんなに丁寧に扱ってくださる方、初めてですわ・・・。」
何度も彼女の様子を確かめようとする刀麻の視線が嬉しいらしい。
「普通だよ。」
短く答えて、再び行為に没頭する。
この女性だって好きで自分に身を任せているわけではないだろう。刀麻もそうだった。望んで彼女と関係したわけではない。
だが少しでも自分に気に入られようとしているのがわかるし、それがわかるといじらしく思えて優しくしてやりたくなる。乱暴を働くのは嫌だった。
「あんた、子供がいるそうだが、とてもそうは思えないな。綺麗だし、若い身体だ。」
「・・・娘が、一人。」
「その娘の、ためか?」
彼女は答えない。答えられないのかもしれない。
「そんなことより、早く、して下さいまし・・・。」
丁寧なおねだりに応じるように、刀麻がゆるゆると動く。
すると、先程までの大胆な様子は何処へやら、タァへレフは急にその身を縮めた。
「大丈夫か?」
「・・・大丈夫です。」
「強がるなよ?嫌ならそう言っていいんだぞ。俺は怒ったりしない。」
誘ってきたのは彼女の方なのに、娘の話をしたせいか急に恥ずかしくなったらしい。低く笑って、年上の女性が緊張していることを見抜いた刀麻は、すぐに気遣う言葉を述べる。
「ごめんなさい、平気ですから。ドクター、そんなに気を使ってくださらなくても大丈夫ですわ。どうぞ、このまま」
行為を続けろと促す。
眼の前の年若い青年医師が、自分のような女にとても優しくすることが不思議でならないようだった。言葉を掛け、優しく丁寧に触れてくる、相手の感覚を尊重し悦ばせる。そんな行為を、彼女は知らないのかも知れない。
「嫌じゃないなら、俺の好きなようにやらせてくれ。俺はエロいんだよって言っただろ。」
「い、いやだなんて、そんなことは・・・。」
「どうせスるんならお互い楽しくやるほうがいい。俺も、あんたも愉しめなくちゃ駄目なんだよ。・・・な?」
「ドクター・・・。」
「タァヘレフ、で、合ってる?俺の発音正しい?」
「は、はい。お上手です。」
「俺は刀麻。安西刀麻だ。・・・刃物を磨き上げるもの、という意味がある。呼べるか?」
「トーマ。ドクター、トーマ。はい、呼ばせて頂きます。・・・わたくしの名前は、清い、という意味でございます。」
「そうか。綺麗な響きだ。タァヘレフ、一緒に愉しもう。これも、何かの縁だろうから。」
「はい、トーマ。」
嬉しそうに彼女が刀麻の名前を呼ぶと、彼も満足そうに笑った。
タァヘレフへの愛撫を再開して、時折優しく彼女の名前を囁く。嬉しそうに答える彼女は両手でそっと刀麻のドレッドヘアーをまさぐった。
「あんた、避妊薬は飲んでるのか?」
「はい。飲んでますから、ご安心下さい。」
「そうか、本当はゴム使ったほうがいいんだが、あいにく持ち合わせが全くないんだ。かんべんな。」
「・・・やっぱり、トーマは優しい人ですわ。そんなことまで気にしてくれるなんて。」
「当たり前じゃないか。ヤる以上は責任持って全力でやらないと。」
「嬉しい、ですわ。」
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