第13話 マリスプルーフ防衛戦 2
「ちょっと!いつまで続くのよこれっ!!」
恐魔大陸から押し寄せる魔獣や魔物の軍勢は、沿岸部にいる自警騎士団魔道部と応援に行った冒険者だけで抑えが効く数では無くなった。
「手ぇ動かせぇ!ケッディ!」
俺達が応援に行ったのは商業地区。
沿岸部に近いのはアグリカ地区だが、商業地区は隣接してる為安全とは言い難い。
「......ぃかせなぃ」
「マネミルバスの数おかしくない!?討伐隊の時より多いんですけど!?!?」
マネミルバス。大きな羽根を持つ鳥の魔獣だ。群れで行動するが連携は取らない。
「っと!あっぷねぇな。クチック!建物を背にしろっ!!」
「......ん」
奴等は下手に突っ込んで来ない。滞空を基本とし、獲物の隙を狙い滑空する。
この滑空が厄介だ。奴が体勢を変えたと思えば次には目の前にマネミルバスの爪が来る。
「アスラン!そろそろ!無理っ!!!」
「了解っ!タイミング合わせろ!」
注意を惹きつけていたケッディが降参の声を上げる。
そろそろか。
マネミルバスは群れで行動するが連携は取らない。奴等の獲物である俺等が隙を晒すと滑空による特攻をかましてくる。
今、必要なのは滑空する直前の体勢を変える隙だ。
「3っ!2っ!、1っ!。ルプトゥーラ!!!!!」
「っ!」
「......」
至る所から飛んで来るマネミルバスを一撃で処理し続けていたケッディがフリッサを正面に構え、そのまま後ろに倒れ込む。
そして発動の終えた俺の火魔術がケッディに特攻するべく体勢を変えたマネミルバスを、破裂した火炎で焼き尽くす。
後ろに倒れ込むケッディはクチックの水魔術で回収。
ケッディが前方にフリッサを構えたのは、万が一の取り逃がしに備え魔術を撃てる様にする為だ。
一瞬でも俺の魔術がズレればケッディはマネミルバスの特攻を一身に受け確実に命を落とす。仮に揃ってもクチックの回収が間に合わなかったら大きな隙を晒し、結末は同じ。
こんな狂った戦法を笑ってこなす奴はそういない。
「さっすが、アスラン。頼りになる〜」
「って。叩くな叩くな」
クチックが水魔術を解き、俺の横に立ったケッディが肩を叩く。
「怪我は無いか?ここらは一旦終わりって感じだな」
「クチックの魔術を頭から被ったから問題無し。他もそろそろ終わる頃かな」
「......(頷く)」
「なら、建物の陰で体を休めるか」
「やっとだよ〜。ね」
「......ぅん」
俺たちが狩った魔獣はマネミルバスを含めおよそ250。他も似たような感じだと全体で3,000〜4,000って所か?
海から来る魔獣、魔物は沿岸部で魔道部が抑え込んでいると聞いた。
だが空を飛び回る魔獣の全てを撃ち落とす事は出来ない。
今も俺等は散会して注意を引く事で一人当たりの負担を減らしているが、一向に終わりが見えない。
手数がたんねぇ。
いっその事、首謀者を探し回るか?
駄目だ。今でも許容範囲を超えつつある。ここで抜けたら近くの冒険者達が数で殴殺される。
だが一先ずは順調に事が進んでいる。
まだ嫌な感じは消えてない。何か見落としが。
「アスラン?」
「......?」
「いや。それより早く休もうぜ」
この地は恐魔大陸はあれど漁業に酪農を行える豊かな土地だ。俺等が拠点にしてる首都ほどでは無いにせよ、他の街より随分と盛況な姿を見せている。
それ等を支える商業地区は魔獣や魔物。俺等が使う魔術や剣術に脅かされ、見るも無惨な姿と成り果てた。
数が数だ。建物の損害を気にして命おとしてりゃ世話ねぇわな。
終わりが見えない戦闘ほど堪えるものは無い。武器の損耗、体力の限界、魔力の枯渇。こっから更に持久戦を考えて戦わねぇとな。
おそらくまだ敵は来る。これだけの規模だ。統率を取れる個体が何処かにいる。
ー ウェリング 視点 ー
魔獣共の進行が始まり1日と半日が経過した。
未だ衰えぬ敵の数を前に此方の指揮も下がりつつある。
「レガートからの返事はどうなっている!」
「はっ!、「解決出来る者を向かわせた」との返事が来ております!」
「......騎士団や魔道士団では無さそうだな」
「王女は何を考えておられる」
「此方の状況をわかっておいでなのか」
マリスプルーフに住む者は精強だ。自惚れではない。度々起こる魔獣、魔物共の襲撃を退け
「鎮まれぇっ!!!忘れるなお前達。我らが敵は魔獣であり魔物であると。このフルーク聖王国には魔王を倒した勇者が居る事を思い出せ」
存亡が掛かったこの戦。
だが時期が悪いか。レガートの書簡を信じるならば
それに性別も......
「目下の問題は自警騎士団や冒険者の疲弊です。もって半日、長くて1日が限度かと。......そこで一つ提案が」
「言ってみろ」
「はい。私は退却の進言を行います。我々が我々たるはこの地あってこそ。なれどそれは人が有り歴史が有り、生きる糧が有るからに他なりません。我々にはマリスプルーフを築き上げて来た知見と技術があります」
大きく息を吸い男は言う。
「故に後方の地へ退却いたしましょう」
「......ならん。我等は奴等と人とを隔てる最初で最後の壁だ。ここが落ちれば奴等は物量を持ってこの国をはては大陸を喰い潰すぞ。二つ。この規模だ。首謀した奴がおる。意図は十中八九人を喰らう事だろうが誰かが判明しておらん。少なくともそいつは特定せねばならんよ」
「ですが、」
マリスプルーフ当主の屋敷内では方針の討論は平行線の一途を辿っていた。
それも無理もない事。彼等には慢心は無かっのだ。
数多くの襲撃を元に培った知識は彼等の主張の地盤を固め、過去の傾向から予測の算出を終え話し合っている。
故にこれまでの対策が通用してしまっている。
ただ今回は違う。数が多い。普段の数倍数十倍の数を相手にしている。
一回の戦闘はさして変わらないだろう。だがそれが時間と共に重しになる。
終わりの見えない戦は精強を自負する騎士団や冒険者とて抗えない焦燥となり、不安へと変わる。
扉が勢いよく開く。
「っ!伝令!!!商業地区にて首謀者とおぼしき者を発見!」
⭐︎⭐︎⭐︎
https://kakuyomu.jp/works/16818093086358720536
外伝!
あと少しで時系列が戻ります。
応援やコメント、誤字脱字、わかりずらい等の指摘があれば私が泣いて喜びます。
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