第11話 落ちた火蓋

 起床の合図には些か苛烈な爆発音が腹に響く。


「っ!何があっ」


 キャビンの扉を突き破る勢いで開け、目に入り絶句した。

 寝ぼけた頭を覚醒させるには十分すぎる。


 気づけば場所は止まっており、御者は何かしらの魔道具を使用していた。口が動いてる。魔道具を使用した連絡だろうか。


「!カレンちゃん!何が......え?」




 俺達が目にしたのは、火と煙が立ち込める港町マリスプルーフの光景だった。




 ー ウェリング 視点 ー




 ここは港町マリスプルーフ。討伐隊の内、首都から来た者等は凱旋を行っていった。


 魔王討伐の衝撃は国内を騒がせるだろう。

 まさか、わしががおる内に為されるとはな。


 冒険者からなる討伐隊の負傷者はこちらが持つ手筈になっておる。在中しておる自警騎士団だけでは有事の際に領民を逃す事しかできまいて。

 まだ残党が残っておる。何かしら理由付けで残ってもらわねば。


「失礼します!」

「どうした」

「レガート様より文が届きました」

「持ってこい」


 お祖父様、並びにお祖母様へ。

 この度、魔王討伐へお力添えをいただき深謝申し上げます。〜略〜。

 後ほど正式なふみを送らせますが、先んじて港町マリスプルーフへの補填を記載させて頂きます。〜略〜。

 魔王討伐が果たされた現在、かの者を超える脅威は目下のところございません。ですが残党、それに魔人が恐魔大陸とここガーダス大陸で生きているのもまた事実。〜略〜。

 過渡期かと存じますがくれぐれもお大事になさってください。


孫娘、レガート・フルーク・ラ・ロア より



 相変わらず簡素な文面だ。息子から退位は近いと聞いておったが、国内のまつりごとの幾許かは既に引き継いだか。


「これはいつ届いた。陸路か?」

「はっ!今朝方であります。陸路でしょう。転移陣の使用は確認されておりません。」


 なら恐魔大陸で決着が着く前にはこの書簡は送られていたか。


 レガートは幼少の頃より物足りなさを感じていた子だとわしは思っていた。だがここ数年はどうだ。積極的に活動し、聖女を取り込みあまつさえ想い人が魔王討伐ときた。

 何がそこまで変えたのか。誰かを想うだけではあそこまで変わる事ないだろう。良い友と巡り会えたか。


「さて、我々の仕事はここからだ。噂を嗅ぎつける者どもは手も足も早い。者共。脇を締めろ」

「「「「はっ!」」」」




⚪︎⚪︎⚪︎




 さらに数日後。場所は書斎。


「それで貴方。レガートから何と?」

「書いたるもんはこの間と変わらんよ。ただまぁ一つ、面白い話があった」

「......あら?。まぁまぁ」


 勇者と呼ばれるカリア。ここを出立した時はそうでも無かったが遅効性か。将又、魔力で押さえ込んでいたのか。

 まぁ何にせよ、厄介事である事に変わりは無い。


「濁されているけど、聖女の失踪。貴方は気づいて?」

「そうだろ。何せからな」

「聖女よ?わたくしは文献の知識しか無いけれど、結界を張るのはその場に居ないといけないのかしら?」

「結界を構築する際にはそうだが、封印後は術者が死ぬまで解ける事は無い。死に瀕する事も含まれるか」


 魔王の心臓は破壊、消滅で出来ない。そこにあると言うだけで魔物を引き寄せる強大な魔力塊。それを聖女の力で封印を施す。

 封印後に残り続ける理由は無い。


「あの場は捜索の声を。あれからこちらでも恐魔大陸に探りを入れてみたがそれらしき反応は無い。まぁ上陸はできんがな」


 魔王が居ないとはいえそれだけだ。いから殲滅しようとも魔獣や魔物が蔓延っておる。


「街の方はどうだ?」

「えぇ、問題ないわ。目敏い商人や旅客の多さは想定内よ。いつから周辺の村々に居たのやら」

「カリアはそれだけの知名度だ。勝利に便乗する者等が大勢あるのもさもありなんよ」




⚪︎⚪︎⚪︎




「伝令!沿岸部より魔物の大群を感知、数500」

「自警騎士団の魔道部を向かわせろ。上陸を許すな。騎士部の隊長達を呼べ」

「はっ!」


 魔物共に敵討など殊勝な考えを持つ奴はいない。わしの経験からして過去の文献からして、魔獣や魔物はお互いに喰らい合わない。ただそれだけの関係だ。

 魔王という魔物の統率者が消えた今、奴等は何を目的にやってきた?。魔力か?いや、それなら普段通りだ。伝令が飛んでくる数では無い。

 ならば誘導か。奴等は人や動物を主食として魔力を糧に生きながらえる。その性質を利用すれば不可能では無い。

 だが、沿岸つまりからの誘導となると、出来る国や組織は途端に候補から消える。


「伝令っ!上空より魔獣が確認されました!数100!」

「雷管式投具の使用を許可する。......数が多いな。隊長は揃ったな?。冒険者協会へ人を向かわせろ。特別報酬だ。住民の避難は騎士部が担う」


 双方間共音機そうほうかんきょうおんきで受け取った伝令がわしの元まですぐに伝わる。

 ここまで来れば敵の狙いは確実か。




 人を狙い衝動では無く計画で動く。魔物を誘導できる者とくれば残る選択肢は一つ。

 敵の総称は、




ー     視点 ー


「さてさてぇ!!」

「あははっ、ははっ!脆弱な人ではどこまで耐えれますかねぇ!」


 恐魔大陸沿岸。

 呼び寄せた魔物見送り、その者は振り返る


「さぁ!さぁ!さぁ!!1万の軍勢っ!!!魔獣に魔物っ!魔力を喰い千切りなさいっ!」

「魔王の時代は終わったっ!」


 次々に海を空を超える魔獣に魔物。

 飢えを凌ぐ為、人間に有る魔力を求める。




「この私からの贈り物は気に入ってもらえるかしら。あっはは!!」





⭐︎⭐︎⭐︎


https://kakuyomu.jp/works/16818093086358720536

外伝もあります!

過去一短い主人公パート


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