第4話 ソーンとの出会い
※二つ目の視点が少し生々しいかもです。
苦手な方はカリア(カレン)視点だけにしてください。飛ばしても内容的には補足ですので問題ありません。
⭐︎⭐︎⭐︎
「待って!」
「?えっと、って、うぇ!?」
人気の少ない武具屋に響いた少し高めの声。
そこに居たのは先程話に出ていたソーンだった。
「久しぶりじゃあねぇか。ソーン。アイツが城に行っていらいかぁ?なぁ」
「お久しぶりです!そんな事はいいんです!おっちゃん!それより!」
律儀におっちゃんに礼をした後、勢い良く俺を指差したソーンはまたも大きな声で叫んだ
「誰なんですか貴女っ!ふと通りすがったらっ!店外からでもわかりましたよその髪色!目の色まで同じじゃ無いですか!!リー、ダーとっどういった、関係なんですっ!?!?!?」
今でも泣きそうな顔をして叫んでおり、俺に刺した指が下がっていく。
え?こんな子だっけか。もっと口数少なくなかったか?
「くははっ!傑作だなぁ!おぃ。なんとか言ってやったらどうなんだぁ。なぁ。カレンちゃんよぉ」
「初めまして、カレンです。冒険者志望です」
「っ!うぅ、ひっぐ、カ"レ"ンぢゃん?」
「とりあえず、泣き止んでください」
「っくしゅん!......はぁ。ごめんなさいカレンちゃん?リーダーっとカリアさんとはどう言う関係なの?」
「カリアさんは私の師匠なんです。人を探す為に力が必要で」
「師匠?いつから?そんな人いたっけ。学校を卒業した後って冒険者してたよね。居ない時あったけど。でもあれってレガート様と会う為......」
パーティメンバーにいきなり「実はリーダーの弟子なんです」は流石に無理があったか?
「はっ!弟子っ!?リーダーの弟子は私だけだったのでは!?ソーンも結構断られた上に渋々って感じだったんですけども......」
上がった感情が急に下がるじゃん。
元気だなこの子。ともかく俺が居なくても元気そうで何よりだな。
「おっちゃん、話が進みそうに無いから進めてくれないか?」
「指南は受けてぇんだろぅなぁ?まぁあ、アイツの関係者で尚且つ動く理由があるってんならぁ、合う武器くらいは見繕ってやらぁなぁ」
「助かる。っと、助かります」
「それじゃぁあ、裏口に来な。店番はぁ、まぁ工房から誰かしら来させるかぁ?」
膝を抱え地面に指で丸を書き出したソーンをその場に置き、俺達は店の裏手に回った。
⚪︎⚪︎⚪︎
「いや、何でいるんだよ。ですか」
「カリアさんの弟子ならソーンが姉弟子ですから!先輩ですから!!」
「おぉう。そうか」
本人なんだけどな。こんな
さて。剣に触れるのも大体2週間ぶりくらいか。最後がカリアの時だったからな。この身体でどこまで力が出せるか。
「それじゃあ、まずは短剣からだぁな。つかったことはあんだろ。振ってみろよなぁ」
渡された武器はサクスとカットラス。
今の体格ではやや大きいがブロードソードを渡されるより扱いやすいだろう。流石おっちゃん。
カットラスは一旦地面に置き、サクスを回し軽く振る。
「ふっ!」
サクスは調理用刃物より少し長い程度。ただ振るのではなく、踏み込みと併用してその差を埋める。
「はっ!」
一方で手狭な空間で使う武器である為、足を動かさず上半身で創った勢いを剣先に乗せて最小限の動きで裂く様に振る。
「おぉ、結構様になってんじゃねぇか」
「流石カリアさんですね。基礎を徹底してます!」
「ありがとう。なら次やるか」
カットラス。刀身がやや湾曲している。頑丈で取り回しが良い。
主に使用されるのはサーベルだが、今の私にはやはり此方のが扱いやすいか。
「せいっ!」
刀身がブレなければ力を込めて振ってもそれなりの成果が出る武器。
サクスで使用しなかった訓練用木材が2つに斬られる。
「まだ行けそうかぁ?」
「ですね。もう少し大きくても大丈夫です」
「とは言え、てめぇが目指すのは冒険者てっぇこった。持ち運びも考えろ」
「
「?」
「冒険者ですよね?私も冒険者なんですけど、リーダーが城から戻って来なくて活動が滞ってるんですよ」
そりゃ、性転換してここに居るからな。
「ですから、同じ師を持つカレンちゃんがある程度強ければソーンが引き取ろうかと」
「え?引き取られるの?迷子の猫?」
「いやちげぇよ。誰か探してるよぉだがなぁ。まず実績のねぇ奴は、周辺から出る事は出来ねぇんだわ」
「ですです。ソーンが入ってるパーティならその辺は大丈夫ですし。冒険者になる際にも私から推薦」出来ます」
「なるほど。おっちゃんの忠告はありがたいけど、なんでソーンは親身になってくれるんだって、です?」
会った時はだいぶ棘がある子だったが、ラッテと世話していく内にソーンが優しい子であるという事を徐々に知っていった。
ソーンから見たら俺はカリア繋がりではある様に見えるだろうが、ソーンは他人を生活圏に入れるほど、人を信用していないはずだ。
「......まぁ、そうですね。気になった。っていうのが1番大きな理由でしょうか。付け足すなら同じ師匠を持っていたり、冒険者を目指していたり、女の子だったり。色々ありますけどやっぱりカレンちゃんの事が気になったんですよ」
あれからソーンも変わったのだろうか。
「わかった。少し待っててくれ、です」
「えぇ」
ー ソーン 視点 ー
私は聖王国首都の南部に付近の村で産まれた。
父は田畑を耕し、母は収支管理や家内を守っていた。兄妹はおらず3人暮らし。今思っても結構幸せに暮らしていた。
最悪の転機が訪れたのはいつだっただろうか。
村に現れたのは人攫いの犯罪集団。それも結構な人数がいたと思う。あの日は男手の過半数が村周辺の安全を確かめる日だった。
今でもたまに思い出す。隣人の子供が見せしめに殺され、怒りに任せた男性が襲いかかる。当時、私は母に押し入れに閉じ込められ音しか聞こえなかった。
泣き叫ぶ声、下卑た笑い声、怒り狂った奇声、嘲笑うかの様な破壊音。村の外側から内側へ屋外から屋内へ。
大きくなる音や不安に心臓が耐えられず、幸いにも私は気絶した。
最後に見た光景なんて私はもう忘れている。
目が覚めた時には、服を剥がされ汚い布を身体に巻いていた。
私は3番目と言うらしい。奴隷商は確か商店街より更に外側。首都を囲う外壁の近くだった気がする。
そこで過ごした期間はおよそ1年。教養や実務を叩き込まれ、私に買い手が付き全てを諦めていたその日。奇跡が起こった。
とても綺麗な金髪を靡かせた天使と淡い水色の髪をした背丈の高い少年。
この光景をよく覚えている。金髪の天使が持っている本で、次々と奴隷商人や人攫いの頭を致命的にまでに殴りつけていく。
その後ろから背の高い少年が私達を解放していった。
ありえない光景だった。絶対であるはずの者たちが
あぁ、やめて。こんな汚い私を見ないで。ごめんなさい、おねがい。ゆるして。
込み上げて来たのは安堵では無く、罪悪感と後悔だった。
怖さで動けなかった。言う事を聞けば殴られなかった。
そんな思いを否定するかの様に壊された現実に耐えられなかった。
だって、だって。
「ごめんなさい。私は君を救えなかった」
泣きじゃくる私を抱きしめながら、そう溢したのは金髪の天使だった。
「ごめんね。怖かったよね。辛かったね」
わかる訳がない。こんな綺麗な天使に私の事なんて。
「でも、君が泣いてる事はわかるよ」
抱きしめる手が強くなる
「私に任せて。大丈夫」
「泣いて良いんだよ」
「君は1人じゃない」
「私達がいるから」
「大丈夫」
私の涙は啜り泣きに変わり、忘れていた懐かしい温かさに身を任せる様に、暗い暗い底にあった私が抱えた闇は溶ける様に消えていった。
⭐︎⭐︎⭐︎
https://kakuyomu.jp/works/16818093086358720536
お口直しの外伝です。
応援やコメント、誤字脱字の指摘があれば私が泣いて喜びます。
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