よん
どこまでも無限に続いてるような真っ青な晴れの日に妻は旅立った。
病気で苦しかったはずなのにまるで痛みを感じさせないような晴れ晴れとした顔をして旅立っていった。
私は悲しい気持ちと寂しい気持ちがあったが不思議と満ち足りたような気持ちもあった。
妻は次に生きたい世界を選びに入っているのだろうかそれとも私がそこに行くまで待っていてくれてるんだろうか。そんなことを考えながら少年と三人で話した場所に向かって歩いていた。
あれから妻は散歩に出られる日と出られない日があり少年とは会えずじまいだった。少年の方も話をしてからあの場所で見かけることはなく妻は「きっと見つかったのかもね」と言っていた。もしかしたらいないかもしれないが何故か今日は会えそうな気がした。
少年は前と同じ場所に座っていた。私は少年に話しかけた。
「こんにちは。久しぶりだね私のことを覚えているかい?」
少年は私の方を見て笑顔で答えた。
「こんにちはおじさん。ちゃんと覚えてるよ。今日、ここに来たらおじさんに会える気がしたんだ。会えてよかった」
「私も今日は君に会えると思っていたんだ。会えて嬉しいよ」
少年は私を見ながらふと不思議そうな顔をした。
「おばさんは今日は一緒じゃないの?」
私は少し答えに詰まった。しかし伝えなければいけないと思い少年に言った。
「おばさんはね。旅立ったんだよ」
少年はその言葉を聞いて驚いた顔を浮かべた。
「どこまでもつづいくような真っ青な空の日に旅立ったんだよ。今日はそれを君に伝えようと思ってここに来たんだ」
少年は私の顔をじっと見つめながら泣き笑いのような顔になった。
「おじさん…ありがとう。そっか…おばさんは旅立ったんだね」
「僕もね。今日、おじさん達に会えたら伝えたいことがあったんだよ。僕ね、自分の空見つけたよ」
少年の言葉に私は嬉しい気持ちになった。
「それは良かった」
「でもね。空に生きたいって言ったのも諦めてはないんだよ。だから絶対できると思ってこれから生きていくね」
ふと私は疑問に思っていたことを少年に聞いてみた。
「君に聞こうと思っていたんだが『空に生きたい』とはどういう意味なのかな?妻に聞いても教えてもらえなかったんだ」
少年はいたずらっぽい笑顔を浮かべながら私に言った。
「じゃあ、今度はおじさんがその答えを探してみてね。いろんな答えがあると思うけどおじさんなら僕とおばさんの言っていた意味がわかるよ絶対」
そんな少年の顔を見ていて私はあの時よりもいい顔になっていることに気がついた。
「そうだね。私もこれから考えてみるよ『空に生きる』という意味を…」
「うん、考えてみて。おじさん今日はありがとう。また会えたら話そうね。バイバイ」
颯爽と去っていく少年の後ろ姿を見ながら私は心のなかで妻に問いかけた。
『これから君とあの子からの宿題の答えを私なりに見つけてみるよ。ありがとう。私に宿題を出してくれて…君がいなくなっても楽しく考えることができそうだ』
私は茜色に染まってきた空を見上げながら家路につく。
きっと私なりの答えを見つけることができると信じて…。
空に生きたい 高野真 @spessartitegarnet153
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