さん
ふと妻が聞いた。
「なんで君は空に行きたいと思ったの。答えられる?」
少年は真剣な顔をして私と妻を見た。
私はそんな少年の様子から答えたくないのかなと思い少年にこう言った。
「答えたくないなら答えなくていい。無理に答えを聞こうとはしていないから」
すると少年はこういった。
「おじさんありがとう。僕のことを気遣ってくれたんだね。おじさんとおばさんはとっても優しい人だね」
そう言って少年は私と妻に笑顔を見せた。
そして少年は話し始めた。
「僕は小さい頃からお父さんとお母さんにとって『できない子』だったみたい。勉強もできないスポーツもできないって。僕のお兄ちゃんやお姉ちゃんは勉強だってスポーツだって何だってできるのにってよく言われた。だからここでは何もできないしやらせてももらえないんだって。だったら空に生きたほうがいいなって思ったんだ」
それを聞いて妻は応えた。
「そう…。何もできないからやらせてもらえないのは辛いね。でも君は今まで頑張ってきたじゃない。大丈夫よ必ず君だけの空があるから」
私は少年の話を聞きながらふと自分の小学生時代の事を思い出した。そういえば私には寂しいような悲しいようなそんな思い出があったのだ。つい私は妻と少年に話してしまった。
「私が小学生の頃空を見上げるのが好きだったときがある。その時の私は雲が私についてきてくれていると思っていたんだ。そのことを友達に言うと友達は『当たり前じゃないかだって地球は動いてるだからお前変だぞ』と言われたんだ。私はその瞬間すごく悲しかったのを覚えている。なんで悲しかったんだろうな今考えるとよくわからないんだ」
私の言葉に少年はこう言った。
「おじさん。それは本当に悲しかったんだよ。友達にわかってもらえなくて。僕はおじさんの気持ちすごく良くわかるよ」
妻も私に
「私もわかるはその時のあなたは本当に悲しかったのよ。ただ友達に感動を伝えたかっただけなのに友達には理解できなかったのね」
二人にそう言ってもらえた私はなんだか嬉しいような照れくさい気持ちになった。でも心のなかに暖かいものが広がってくるような気がした。心の引っ掛かりがなくなったのだ。
「おじさんとおばさんに話を聞いてもらってよかった。それにステキな話を聞かせてくれてありがとう。今日は暖かい気持ちになれた」
少年は立ち上がって頭を下げて言った。
「僕、自分の空を見つける。そしていつか空に生きるんだ胸を張って。おじさん、おばさん本当にありがとう」
少年は手を振りながら去っていった。
ちょうど5時の鐘な音が聞こえる。
私は妻に
「私達もそろそろ帰ろうか」と言った。
妻は
「そうねそろそろ帰りましょうか。今日はとってもいい日だったわ。あなた私わ外に連れて行ってくれてありがとう。私もあの子に胸を張ってこの世界で最後まで生きていけるように」
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