035 さらばウェルフル

「世話になったな。俺たちは行くぜ」


「ああ、また直ぐ会う事になるだろうがな」


「それまでにもっと強くなってろよ?」



クランはこの1ヶ月ほどで急激な成長を遂げた。


そしてこれから更なる速度で強くなるだろう。



「ハンキーのお陰さ、ありがとう」


2人は固い握手を交わした。



「男同士でイチャイチャしてるんじゃないわよ」


とは言いつつも、アイダはふたりの友情を見ているとなんだか嬉しくなった。



〈ポッポーーーーーーーー〉


まるでタイミングを読んでいたかのように汽笛が鳴り響いた。



「おっと、出発の時間だねえ」


「アーティファクトの件は後ほど使者を向かわせる。運搬型だが強いぞ」


「ほう、それは楽しみだな」




「さ、発車するわよ、クランも仕事を抜け出してきてるんだろ?」


「アイダ・・・・ハンキーをよろしく頼むよ」


「任せときなよ。次に会うときはアタシも強くなってるわよ!」



汽車が走り出し、クランの姿が小さくなってゆく・・・・。


アイダは故郷ウェルフルの地に分かれを告げた。




「色々あったわねえ・・・・」


僅か2ヶ月程の間に、様々な出来事と出会いがあった。


2人の旅は、ようやくひとつの通過点を迎える。



「・・・・アイダ・・・・君に会えて良かったよ」


「なんだい急に?」


「・・・・いや、なんでもないさ。何故かそう思っただけだよ」


「あっはっは!アタシこそハンキーに会えて良かったよ!」



アイダはやはり、どんな時でも太陽だった。


彼女がいなければ、ハンキーは闇を抱え込んだままだっただろう。



「・・・・疲れているだろう?眠っておけよ」


「ん、そうするかねえ」



アイダはハンキーの肩にもたれ掛かると、すぐに寝息を立て始めた。




「・・・・君と一緒なら、あるいは・・・・」


ハンキーはある決意を固めていた。

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